上 下
58 / 107

第58話 拠点製作

しおりを挟む
 翌日は朝からマンションの各部屋を巡回して、住人やモンスターを追い出していった。
 今のところは大きな危険もないが、これからもそうだとは限らない。
 彼らの存在を黙認するのはリスキーだと考えたのだ。

 前回は見逃した住人も排除するつもりである。
 僅かにあった躊躇いは、いつの間にか消えていた。
 精神的にも狂った世界に適応しつつあるらしい。
 他人のことを考えている場合ではないと分かってきた。
 人間としては最低だが、実に合理的である。

 以前と同じ要領でベランダから侵入する。
 身体能力が上がっているので何の苦労もなかった。
 部屋によっては雨戸と家具で塞いている場所もあったが、容赦なく破壊して室内に踏み込む。

 住人の反応は様々だった。
 怯えて固まったり、逃げる場合がほとんどだが、中には攻撃を試みる者もいた。
 ここで戦うしかないと考えたのだろう。

 対するこちらの行動は限定されていた。
 攻撃してくる者は反撃で無力化し、ベランダから外に投げ飛ばす。
 それ以外は銃で脅してマンションから退去させた。
 懇願されても無視して強行する。

 残念ながら彼らに構うだけの時間も惜しい。
 いつ殺人鬼が現れるか分からないのだ。
 不確定要素は排するに限る。

 立て籠もる者達は変容がほとんど進んでいない。
 つまり常人の身体能力である。
 したがってこちらが負けるはずもなかった。

 問答無用で皆殺しにしなかったのは、僅かばかりの良心かもしれない。
 或いは殺人鬼と自分を差別化するためか。
 その辺りはよく分からない。

 モンスターとも遭遇したが、こちらも特に苦戦することはなかった。
 ゴブリンやオークなどもはや敵ではない。
 昨日の武器を試す良い機会なので、スレッジハンマーやワイヤーによって次々と殺害した。

 特に有用性が高かったのはワイヤーだ。
 巻き付けて切断することを想定していたが、束ねて伸ばせば変幻自在の盾になる。
 それなりの重量があるため、振り回して当てると傷付けることもできる。

 逆にスレッジハンマーや草刈り鎌といった武器は消耗が激しく、すぐに破損してしまった。
 人外の膂力で扱うための設計ではないのだ。
 武器についてはまだ色々と改善の余地がありそうだった。
 これらの反省点が見つけられただけでも収穫だろう。

 頑丈なモンスターの死骸を利用するのも手かもしれない。
 海外では竜の鱗や骨を用いたDIY動画が拡散されていた。
 近所に使えそうなモンスターがいれば、積極的に狩ってみようと思う。

 マンションを占拠した後は、敷地内の各地に罠を仕掛けていく。
 ネットで調べて出てきた物のうち、再現可能な類を選んだ。
 これらは侵入者対策だ。
 殺人鬼の到来も考えているので、凶悪な罠ばかり設置しておいた。

 誰であろうとこの建物に立ち入らせる気はない。
 モンスターが駆逐されつつある現在、人間狩りや殺人鬼を警戒しなければならなかった。
 彼らがいつマンションを襲撃してくるか分かったものではないのだ。
 防備は決して完璧ではないが、やらないよりはいい。

 夕方頃にはトラップ設置を完了させた。
 カップ麺を食べてからテレビを視聴する。
 労働続きで疲れていたのか、その日はゆっくりと熟睡することができた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

国家魔術師をリストラされた俺。かわいい少女と共同生活をする事になった件。寝るとき、毎日抱きついてくるわけだが 

静内燕
ファンタジー
かわいい少女が、寝るとき毎日抱きついてくる。寝……れない かわいい少女が、寝るとき毎日抱きついてくる。 居場所を追い出された二人の、不器用な恋物語── Aランクの国家魔術師であった男、ガルドは国の財政難を理由に国家魔術師を首になった。 その後も一人で冒険者として暮らしていると、とある雨の日にボロボロの奴隷少女を見つける。 一度家に泊めて、奴隷商人に突っ返そうとするも「こいつの居場所なんてない」と言われ、見捨てるわけにもいかず一緒に生活することとなる羽目に──。 17歳という年齢ながらスタイルだけは一人前に良い彼女は「お礼に私の身体、あげます」と尽くそうとするも、ガルドは理性を総動員し彼女の誘惑を断ち切り、共同生活を行う。 そんな二人が共に尽くしあい、理解し合って恋に落ちていく──。 街自体が衰退の兆しを見せる中での、居場所を失った二人の恋愛物語。

クラス転移した俺のスキルが【マスター◯―ション】だった件 (新版)

スイーツ阿修羅
ファンタジー
「オ◯ニーのフィニッシュ後、10分間のあいだ。ステータス上昇し、賢者となる」  こんな恥ずかしいスキルを持ってるだなんて、誰にも知られる訳にはいけない!  クラスメイトがボスと戦ってる最中に、オ○ニーなんて恥ずかしくてできない!    主人公ーー万波行宗は、羞恥心のあまり、クラスメイトに自分のスキルを隠そうとするが……  クラスメイトがピンチに陥り、彼はついに恥を捨て戦う決意をする。  恋愛✕ギャグ✕下ネタ✕異世界✕伏線✕バトル✕冒険✕衝撃展開✕シリアス展開 ★★★★★  カクヨム、ハーメルンにて旧版を配信中!  これはアルファポリスの小説賞用に書き直した(新版)です。

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

前世の記憶で異世界を発展させます!~のんびり開発で世界最強~

櫻木零
ファンタジー
20XX年。特にこれといった長所もない主人公『朝比奈陽翔』は二人の幼なじみと充実した毎日をおくっていた。しかしある日、朝起きてみるとそこは異世界だった!?異世界アリストタパスでは陽翔はグランと名付けられ、生活をおくっていた。陽翔として住んでいた日本より生活水準が低く、人々は充実した生活をおくっていたが元の日本の暮らしを知っている陽翔は耐えられなかった。「生活水準が低いなら前世の知識で発展させよう!」グランは異世界にはなかったものをチートともいえる能力をつかい世に送り出していく。そんなこの物語はまあまあ地頭のいい少年グランの異世界建国?冒険譚である。小説家になろう様、カクヨム様、ノベマ様、ツギクル様でも掲載させていただいております。そちらもよろしくお願いします。

「おっさんはいらない」とパーティーを追放された魔導師は若返り、最強の大賢者となる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~

平山和人
ファンタジー
かつては伝説の魔法使いと謳われたアークは中年となり、衰えた存在になった。 ある日、所属していたパーティーのリーダーから「老いさらばえたおっさんは必要ない」とパーティーを追い出される。 身も心も疲弊したアークは、辺境の地と拠点を移し、自給自足のスローライフを送っていた。 そんなある日、森の中で呪いをかけられた瀕死のフェニックスを発見し、これを助ける。 フェニックスはお礼に、アークを若返らせてくれるのだった。若返ったおかげで、全盛期以上の力を手に入れたアークは、史上最強の大賢者となる。 一方アークを追放したパーティーはアークを失ったことで、没落の道を辿ることになる。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

妹と歩く、異世界探訪記

東郷 珠
ファンタジー
ひょんなことから異世界を訪れた兄妹。 そんな兄妹を、数々の難題が襲う。 旅の中で増えていく仲間達。 戦い続ける兄妹は、世界を、仲間を守る事が出来るのか。 天才だけど何処か抜けてる、兄が大好きな妹ペスカ。 「お兄ちゃんを傷つけるやつは、私が絶対許さない!」 妹が大好きで、超過保護な兄冬也。 「兄ちゃんに任せろ。お前は絶対に俺が守るからな!」 どんなトラブルも、兄妹の力で乗り越えていく! 兄妹の愛溢れる冒険記がはじまる。

俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。 途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。 しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。 その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。

処理中です...