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第54話 優雅な朝食
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注文した料理が到着した。
ごく普通の朝食セットである。
殺人鬼が作ったものとなると、材料に死体を使っている可能性も視野に入れていたが、それはそれは考えすぎだったらしい。
偏見が混ざっていたようだ。
ストレングスは伝票を置いて嬉しそうに一礼した。
追加オーダーもお気軽にどうぞ、と言い残して厨房に戻っていく。
スキップする後ろ姿は無邪気で微笑ましい。
ただし、背中には古くなった血痕がべったりと付着していた。
裂けた衣服を乱暴に縫ってある。
どこかで誰かに切り裂かれたのか。
現在は完治しているようだ。
鬼系統の回復力はよく知っているが、ストレングスのそれは別格だろう。
致命傷で死なないのは当然として、一時的に行動不能にすることすら困難な気がする。
殺し合いに躊躇や恐怖はない。
それでも勝てる見込みのないまま突貫するのは愚かだろう。
――どうすれば、殺人鬼ストレングスを、殺せるのか。
本格的に考える前に、ドリンクバーから烏龍茶を持ってきて食事を開始する。
厨房からストレングスがこちらを凝視していたのだ。
不安と不満を抱えた目をしていた。
彼女は店員としての振る舞いを徹底している。
一方で来訪する者に良い客であることを求めているのかもしれない。
不誠実な行動は死に繋がりかねなかった。
そう考えて朝食セットを食べ進める。
味は普通だ。
むしろ美味い。
毒も入っていないようだった。
もし仕込まれていたとしても、たぶん死なないとは思うが。
ひとまず安心すると同時に、望んでいた朝食に満足する。
それから改めてストレングスの殺害方法を考える。
真っ先に思い付いたのは、頭部の破壊や斬首であった。
やはり急所を狙うのが無難だ。
ネットでも殺人鬼の倒し方がレクチャーされていた。
今の二つに加えて、焼き殺すのも有効だと提唱されていた。
とにかく殺人鬼の再生力では間に合わないダメージを与えるのだ。
ただし、変容の傾向によっては特定の攻撃が極端に効きにくい場合があるらしい。
炎の能力を持つ者を焼き殺そうとするようなケースだろう。
そのため情報を鵜呑みにできないところも否めない。
ストレングスの情報は断片的だった。
ネットで調べても弱点らしい弱点は見つからなかった。
ここで仕掛けるのはリクスが高すぎる。
そもそも因縁があるわけでもないのだから、殺す必要すら存在しない。
ふと顔をあげるとストレングスと目が合った。
彼女は自然な笑みを浮かべていた。
ぎらついた眼差しも、心なしか優しく見えてくる。
とりあえず箸を置いて会釈し、飲み終えたスープのおかわりを頼んだ。
ごく普通の朝食セットである。
殺人鬼が作ったものとなると、材料に死体を使っている可能性も視野に入れていたが、それはそれは考えすぎだったらしい。
偏見が混ざっていたようだ。
ストレングスは伝票を置いて嬉しそうに一礼した。
追加オーダーもお気軽にどうぞ、と言い残して厨房に戻っていく。
スキップする後ろ姿は無邪気で微笑ましい。
ただし、背中には古くなった血痕がべったりと付着していた。
裂けた衣服を乱暴に縫ってある。
どこかで誰かに切り裂かれたのか。
現在は完治しているようだ。
鬼系統の回復力はよく知っているが、ストレングスのそれは別格だろう。
致命傷で死なないのは当然として、一時的に行動不能にすることすら困難な気がする。
殺し合いに躊躇や恐怖はない。
それでも勝てる見込みのないまま突貫するのは愚かだろう。
――どうすれば、殺人鬼ストレングスを、殺せるのか。
本格的に考える前に、ドリンクバーから烏龍茶を持ってきて食事を開始する。
厨房からストレングスがこちらを凝視していたのだ。
不安と不満を抱えた目をしていた。
彼女は店員としての振る舞いを徹底している。
一方で来訪する者に良い客であることを求めているのかもしれない。
不誠実な行動は死に繋がりかねなかった。
そう考えて朝食セットを食べ進める。
味は普通だ。
むしろ美味い。
毒も入っていないようだった。
もし仕込まれていたとしても、たぶん死なないとは思うが。
ひとまず安心すると同時に、望んでいた朝食に満足する。
それから改めてストレングスの殺害方法を考える。
真っ先に思い付いたのは、頭部の破壊や斬首であった。
やはり急所を狙うのが無難だ。
ネットでも殺人鬼の倒し方がレクチャーされていた。
今の二つに加えて、焼き殺すのも有効だと提唱されていた。
とにかく殺人鬼の再生力では間に合わないダメージを与えるのだ。
ただし、変容の傾向によっては特定の攻撃が極端に効きにくい場合があるらしい。
炎の能力を持つ者を焼き殺そうとするようなケースだろう。
そのため情報を鵜呑みにできないところも否めない。
ストレングスの情報は断片的だった。
ネットで調べても弱点らしい弱点は見つからなかった。
ここで仕掛けるのはリクスが高すぎる。
そもそも因縁があるわけでもないのだから、殺す必要すら存在しない。
ふと顔をあげるとストレングスと目が合った。
彼女は自然な笑みを浮かべていた。
ぎらついた眼差しも、心なしか優しく見えてくる。
とりあえず箸を置いて会釈し、飲み終えたスープのおかわりを頼んだ。
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