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第14話 交番の落とし物

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 間もなく交番を発見した。
 ただし付近は死体だらけで、辺りには濃密な血の臭いが漂っている。
 腐りかけているものも多かった。
 そのせいで余計に臭いが酷くなっている。

 しかし、もう慣れた状況だった。
 これくらいで驚いていては生きることはできない。

 マンションを出る前から、交番は探索の候補として考えていた。
 拳銃が欲しいからだ。
 言うまでもなく強力な武器である。

 猟銃はあるものの、咄嗟の時の取り回しが悪い。
 二発装填で弾切れが頻発するのも難点だった。
 日本の警察が使う拳銃はリボルバー式なので、装弾数は五発か六発だったと思う。
 連続で撃てる点を考えると、猟銃より優秀ではないか。

 死体を避けて交番に近付く途中、中から制服姿の警官が現れた。
 三十代くらいの長身の男だ。
 全身が血だらけで片手に黒い拳銃を持っている。
 目は驚いたように見開かれており、じっとこちらを見つめていた。

 直感的に危険を察知した。
 気が付けば真横に跳んでおり、ほぼ同時に銃声が轟いていた。

 警官だ。
 交番から出てきた警官が発砲してきたのである。
 どうやら錯乱しているらしい。
 そうでなければ異常な行動だろう。
 一般市民に銃を撃つなんて。
 だからこれは錯乱なのだ。

 当然だろう。
 狂った世界だ。
 人間だって狂っていく。

 ほとんど無意識に猟銃を構えて二連続で発砲した。
 散弾は警官の胸板と左太腿を引き裂いた。
 不安定な態勢での銃撃はなんとか命中したのだ。

 弾を受けた警官が転倒した。
 激しく吐血するも、起き上がろうとしている。
 まだ死ぬ気配はない。
 それどころか、殺意に満ちた目で拳銃を向けてきた。

 どうやら向こうも強くなっているらしい。
 新たな世界は殺害行為で力を得る。
 交番周辺に散らばる死体は、この警官のスコアなのだろう。

 ――きっと、この死体の、分だけ、強く、なっている。

 そこまで理解した瞬間、警官へと突進した。
 弾切れの猟銃では敵わない。
 とにかく距離を詰めて泥沼戦にもつれ込ませるしかないと思った。
 近距離ならばオーク由来の怪力を活かすことができる。

 接近を察した警官がすぐさま発砲してくる。
 腹を貫かれる痛みを覚えるも、足を止めることはない。
 即死しないことは分かっていた。
 そのまま組み付くと、地面を転がりながら握り込んだ拳を警官に叩き付けた。
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