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第2話 新世界の洗礼
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ゴブリン。
ゲームでは有名なモンスターだろう。
雑魚敵の代表で、主に初心者が戦いに慣れるための相手として登場する。
或いは経験値稼ぎの獲物だろうか。
だが、実際に退治してみると迫力が違う。
かなり小柄で痩せ細った体躯だが、片手が握る木の槍には存在感がある。
あれは人間を殺せる武器だ。
刺されれば致命傷になりかねない。
それを意識すると呼吸が速まったので、精神力で落ち着ける。
これはRPGの延長線上にあるのだ。
ドット絵から少し進化しただけである。
たとえ死んだとしても構わない。
とっくに諦めた人生で、無抵抗に殺されるのが当たり前だった。
ここで生き残れば儲けものと捉える。
その程度でいい。
開き直ってみると気分も楽になった。
これからのことは部屋で決心したばかりなのだ。
初めての戦闘も含めて楽しまなくては。
最初の街から出られない勇者などゲームに必要ない。
こちらを睨むゴブリンを前に、まず胸を張って構えを取った。
右手に包丁。
左手にゴルフクラブ。
包丁は切っ先を前に向けて握り込む。
ゴルフクラブはやや短めに持って、緩く掲げた姿勢を保った。
天井に当たらず、素早く振り下ろせる位置だ。
その状態でじっとゴブリンを観察する。
ゴブリンは唸りながら木の槍を構えていた。
先端は大雑把に削られて尖っている。
下手に近付くと刺されるだろう。
ただしゴブリンのサイズに合わせてあるのでそこまで長くない。
リーチの面ではゴルフクラブが優っている。
間合いに気を付けることで負傷のリスクを下げられるだろう。
思考の途中、いきなりゴブリンが動き出した。
叫びながら突進を始める。
木の槍を構えて猛然と迫ってきた。
その瞬間、脳裏にあった作戦は吹き飛んだ。
余計なことを考えている暇はなかった。
閉じかけた自宅の扉を掴むと、力任せに押し開いた。
必然的に扉は、狭い外廊下を塞ぐ形になる。
扉の向こうで硬い何かがぶつかる音がした。
おそらく槍だ。
勢い余って当ててしまったのだろう。
ゴブリンは扉で塞がれていない隙間に割り込み、強引に通ろうとしてくる。
血走った目で喚きながら槍を振り回していた。
命を、奪おうと、している。
気が付くとゴブリンの脳天にゴルフクラブを打ち込んでいた。
頭蓋を砕く生々しい感触。
黄色く濁った眼球がせり出した。
間を置かずに包丁を突き込む。
刃はゴブリンの首筋に潜っていった。
引き抜くと鮮血が迸り、顔とスーツを濡らしていく。
一張羅が台無しになった。
頭が割れて首を刺されたゴブリンはそれでも死なない。
震える身体で扉を押し退けつつ、槍で反撃しようとしてきた。
刺されたくない。
その一心で槍を掴みながらタックルを敢行した。
さらに血でぬめるゴブリンの首を掴み、手すり壁の向こう側へ投げ落とす。
ゴブリンは頭から真っ逆さまに地上に落ちて、駐車場の軽自動車に激突した。
衝撃で防犯アラームがけたたましく鳴り響く。
アスファルトに転がって悶絶するゴブリンのもとに、二足歩行の大柄な豚が現れた。
俗に言うオークだ。
戦闘音を聞き付けて現れたのだろうか。
オークはどこかで調達したと思しき鉄パイプで瀕死のゴブリンを滅多打ちにして殺した。
そのまま死体を引きずってマンションの外へ歩いていく。
途中、こちらを一瞥したものの、何もせずに立ち去った。
決して友好的な気配ではなかった。
漁夫の利で獲物を奪った感じである。
おそらくゴブリンは食糧になるのだろう。
あまり美味そうではないが、モンスターの味覚は人間と違うのかもしれない。
壁に背を預けて息を吐く。
いつの間にか呼吸を止めていたことに気付いた。
震える両手は、血の付着した包丁とゴルフクラブを握っている。
これが弱肉強食。
生まれ変わった世界の真理を垣間見た気がした。
ゲームでは有名なモンスターだろう。
雑魚敵の代表で、主に初心者が戦いに慣れるための相手として登場する。
或いは経験値稼ぎの獲物だろうか。
だが、実際に退治してみると迫力が違う。
かなり小柄で痩せ細った体躯だが、片手が握る木の槍には存在感がある。
あれは人間を殺せる武器だ。
刺されれば致命傷になりかねない。
それを意識すると呼吸が速まったので、精神力で落ち着ける。
これはRPGの延長線上にあるのだ。
ドット絵から少し進化しただけである。
たとえ死んだとしても構わない。
とっくに諦めた人生で、無抵抗に殺されるのが当たり前だった。
ここで生き残れば儲けものと捉える。
その程度でいい。
開き直ってみると気分も楽になった。
これからのことは部屋で決心したばかりなのだ。
初めての戦闘も含めて楽しまなくては。
最初の街から出られない勇者などゲームに必要ない。
こちらを睨むゴブリンを前に、まず胸を張って構えを取った。
右手に包丁。
左手にゴルフクラブ。
包丁は切っ先を前に向けて握り込む。
ゴルフクラブはやや短めに持って、緩く掲げた姿勢を保った。
天井に当たらず、素早く振り下ろせる位置だ。
その状態でじっとゴブリンを観察する。
ゴブリンは唸りながら木の槍を構えていた。
先端は大雑把に削られて尖っている。
下手に近付くと刺されるだろう。
ただしゴブリンのサイズに合わせてあるのでそこまで長くない。
リーチの面ではゴルフクラブが優っている。
間合いに気を付けることで負傷のリスクを下げられるだろう。
思考の途中、いきなりゴブリンが動き出した。
叫びながら突進を始める。
木の槍を構えて猛然と迫ってきた。
その瞬間、脳裏にあった作戦は吹き飛んだ。
余計なことを考えている暇はなかった。
閉じかけた自宅の扉を掴むと、力任せに押し開いた。
必然的に扉は、狭い外廊下を塞ぐ形になる。
扉の向こうで硬い何かがぶつかる音がした。
おそらく槍だ。
勢い余って当ててしまったのだろう。
ゴブリンは扉で塞がれていない隙間に割り込み、強引に通ろうとしてくる。
血走った目で喚きながら槍を振り回していた。
命を、奪おうと、している。
気が付くとゴブリンの脳天にゴルフクラブを打ち込んでいた。
頭蓋を砕く生々しい感触。
黄色く濁った眼球がせり出した。
間を置かずに包丁を突き込む。
刃はゴブリンの首筋に潜っていった。
引き抜くと鮮血が迸り、顔とスーツを濡らしていく。
一張羅が台無しになった。
頭が割れて首を刺されたゴブリンはそれでも死なない。
震える身体で扉を押し退けつつ、槍で反撃しようとしてきた。
刺されたくない。
その一心で槍を掴みながらタックルを敢行した。
さらに血でぬめるゴブリンの首を掴み、手すり壁の向こう側へ投げ落とす。
ゴブリンは頭から真っ逆さまに地上に落ちて、駐車場の軽自動車に激突した。
衝撃で防犯アラームがけたたましく鳴り響く。
アスファルトに転がって悶絶するゴブリンのもとに、二足歩行の大柄な豚が現れた。
俗に言うオークだ。
戦闘音を聞き付けて現れたのだろうか。
オークはどこかで調達したと思しき鉄パイプで瀕死のゴブリンを滅多打ちにして殺した。
そのまま死体を引きずってマンションの外へ歩いていく。
途中、こちらを一瞥したものの、何もせずに立ち去った。
決して友好的な気配ではなかった。
漁夫の利で獲物を奪った感じである。
おそらくゴブリンは食糧になるのだろう。
あまり美味そうではないが、モンスターの味覚は人間と違うのかもしれない。
壁に背を預けて息を吐く。
いつの間にか呼吸を止めていたことに気付いた。
震える両手は、血の付着した包丁とゴルフクラブを握っている。
これが弱肉強食。
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