お祈りメール

田古みゆう

文字の大きさ
上 下
5 / 8

お祈りメール(5)

しおりを挟む
 こうして俺たちは二人三脚で新事業をスタートさせた。

 最初のうちは失敗ばかりだったが、次第に仕事にも慣れていき、少しずつ成果も出てきた。取引先も増えて事業は安定してきたが、まだまだ課題は多い。

 まずは、もっと多くの農家と取引ができるようにならないといけなかった。農家に訪問する機会をもっと増やしたいのだが、なにぶん人手が足らなかった。

 俺と大地は、社員になる人を雇うために奔走した。しかし、なかなか良い人材が見つからない。

 そんなある日、大地がある提案をした。それは、学生アルバイトを使ってみてはどうかということだった。

 俺は、正社員として長く働ける人手が必要だと思っていたので、最初は乗り気ではなかった。

 だが大地は、アルバイトの方が人手を集めやすいし、自分たちの会社にマッチした人材を探すよりも、学生のうちから、いずれは社員にするというつもりで一から育てた方が、長期的にみても会社の戦力になり得ると言った。

 確かにその意見には一理あると思ったので、とりあえずアルバイトで人手を補うことになった。そこで単価の安いタウン紙に求人を出し、アルバイト希望者を募った。すると、すぐに反応があった。応募者は三名だった。

 一人目は、佐藤雄介。二十歳。大学生。農業に興味があるものの、具体的に将来どのようなことをしたいのかは決まっておらず、農業業界のこともよく知らないという。

 二人目は、鈴木健太。十九歳。大学生。彼は農業に対する興味がとても強く、実家が農業をしているのでいずれは継ぐ意志があるようだ。

 そして、三人目は、高橋真由。十八歳。応募者唯一の女性だ。彼女は、高校卒業後に就職したものの半年ほどで仕事を辞めてしまったらしく、今はフリーターをしながら就職活動中だという。

 早速面接の日程を決める。

 面接当日。会社説明をした後、俺は応募者に尋ねた。

「今回アルバイトとして募集をしていますが、弊社としましては、長く働いてもらうことを前提とさせていただいています。そのため、もし働くならいずれ正社員として働きたいという方を希望します。その点については問題ありませんか? 」

 三人が答えた。まず、最初に口を開いたのは、佐藤雄介だ。

「私はまだ、将来について具体的な方向性が決まっていません。そのため、今ここで御社の正社員を目指したいとは言い切れません。でも、農業関係のことはまるで知らないので、将来の選択肢を広げるためにも御社で働いてみたいです」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...