13 / 92
1.あんず色の世界で
p.13
しおりを挟む
「そうなの?」
「はい~。では、研修の説明をさせて頂きますね~。こちらをご覧ください~」
小鬼は本当に良かったと言わんばかりに満面の笑みで肯きながら、例の端末の画面を僕に指し示した。
そこには『ありがとう体感プログラム 概要説明』という文字が並んでいる。端末画面をスライドさせながら、小鬼は研修の概要説明を始めた。
研修の内容はものすごく大まかに言えば、「五日間、日常生活において感謝の気持ちが生まれる場面を体感する」ということのようだが、説明を聞いただけではどういう形で研修なるものが行われるのかさっぱり分からない。
「以上が概要説明になります~」
「あ、あの~、ちょっとイマイチ……」
「あら~、分からなかったですか~?」
僕の情けない声に、小鬼は困り顔でベッドの向かいに座る事務官へと視線を投げる。僕と小鬼のやり取りを見ていた事務官は、ハァとあからさまな溜息をついた。
「説明はした。内容は始めれば次第に理解するであろう」
なんとも無慈悲な物言いで事務官は話を終わらせると、膝をパンと打ちながら椅子から立ち上がった。
「私は一度役所へ戻る。時間がない。小鬼、急ぎ始めよ」
「はい~。承りました~」
小鬼に向けて指示を出すと、事務官はパチンと指を鳴らしながらその場でクルッとターンを一回し、姿を消した。
小鬼は、事務官の消えた空間に向かってベッドの上で深々と一礼をしてから、僕に向き直った。
「では~、始めましょうか~」
「う、うん。でも、何をどうすれば……」
「大丈夫です~。何も心配は要りません~。先ずは、リラックスですよ~。ベッドに寝てください~」
枕をポフポフと叩きながら間の抜けた指示をする小鬼に従い、ベッドに仰向けに寝る。しかし、不安で落ち着かない。僕は、仰向けになったまま忙しなく視線を彷徨わせる。
「こ、この後はどうすれば?」
「体感ルームへは、自動的に移動できます~。でも、まずはリラックスですよ~」
「そ、そうは言っても、これから何が起こるのか分からないのに、リラックスなんてできないよ!」
大人しくベッドに横になりながらも不安いっぱいの僕は、小鬼に必死で訴える。そんな僕を困り顔で見ていた小鬼は、暫くするとパッと顔を綻ばせた。
「では~、こうしましょう~」
小鬼は、僕の額に彼の小さな手をピトッと当てる。
「これで少しは安心できますよ~。コレ、僕が眠れない時に母上がしてくれるのです~。こうされると、安心して眠れるのですよ~」
「はい~。では、研修の説明をさせて頂きますね~。こちらをご覧ください~」
小鬼は本当に良かったと言わんばかりに満面の笑みで肯きながら、例の端末の画面を僕に指し示した。
そこには『ありがとう体感プログラム 概要説明』という文字が並んでいる。端末画面をスライドさせながら、小鬼は研修の概要説明を始めた。
研修の内容はものすごく大まかに言えば、「五日間、日常生活において感謝の気持ちが生まれる場面を体感する」ということのようだが、説明を聞いただけではどういう形で研修なるものが行われるのかさっぱり分からない。
「以上が概要説明になります~」
「あ、あの~、ちょっとイマイチ……」
「あら~、分からなかったですか~?」
僕の情けない声に、小鬼は困り顔でベッドの向かいに座る事務官へと視線を投げる。僕と小鬼のやり取りを見ていた事務官は、ハァとあからさまな溜息をついた。
「説明はした。内容は始めれば次第に理解するであろう」
なんとも無慈悲な物言いで事務官は話を終わらせると、膝をパンと打ちながら椅子から立ち上がった。
「私は一度役所へ戻る。時間がない。小鬼、急ぎ始めよ」
「はい~。承りました~」
小鬼に向けて指示を出すと、事務官はパチンと指を鳴らしながらその場でクルッとターンを一回し、姿を消した。
小鬼は、事務官の消えた空間に向かってベッドの上で深々と一礼をしてから、僕に向き直った。
「では~、始めましょうか~」
「う、うん。でも、何をどうすれば……」
「大丈夫です~。何も心配は要りません~。先ずは、リラックスですよ~。ベッドに寝てください~」
枕をポフポフと叩きながら間の抜けた指示をする小鬼に従い、ベッドに仰向けに寝る。しかし、不安で落ち着かない。僕は、仰向けになったまま忙しなく視線を彷徨わせる。
「こ、この後はどうすれば?」
「体感ルームへは、自動的に移動できます~。でも、まずはリラックスですよ~」
「そ、そうは言っても、これから何が起こるのか分からないのに、リラックスなんてできないよ!」
大人しくベッドに横になりながらも不安いっぱいの僕は、小鬼に必死で訴える。そんな僕を困り顔で見ていた小鬼は、暫くするとパッと顔を綻ばせた。
「では~、こうしましょう~」
小鬼は、僕の額に彼の小さな手をピトッと当てる。
「これで少しは安心できますよ~。コレ、僕が眠れない時に母上がしてくれるのです~。こうされると、安心して眠れるのですよ~」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる