380 / 396
新人魔女が見た憧れの後ろ姿(4)
しおりを挟む
「洞窟というよりは、洞窟へ行くまでの道のりに用があるんです」
フェンの言葉にリッカは首を傾げる。
「道中に何かあるの?」
問いかけるとフェンは小さく首を振る。
「何かあるかもしれないとは少しだけ期待しているのですが」
「どういうこと?」
「僕はたくさん魔法の特訓をしているけれど、実践経験が少ないと思うのです。だから、洞窟までの道のりで、実践に出くわさないかと……」
フェンの言葉にリッカは「なるほどね」と頷く。確かに、フェンはこれまで魔法の特訓をしてきた。訓練の様子を見るに、魔法の扱いは格段に上手くなっている。この辺りで実力を試したいのだろう。
「そういうことなら、いつもとは違う道を行きましょうか。たまには冒険も楽しいかもしれないわね」
リッカがそう言うと、フェンは表情をパッと明るくして尻尾を振った。そんな使い魔の様子を微笑ましく思いながら、リッカはフェンを腕から下ろすと再び歩みを進めたのだった。いつもの道を外れ、フェンを先頭に草の生い茂る道なき道を進んでいく。
しばらく獣道を進んだところで、不意に周囲に何かの気配を感じた。フェンもその気配を感じ取ったのかしきりに鼻をひくつかせている。リッカが警戒しながら周囲を見回していると、ガサゴソと草むらから何かが飛び出してきた。フェンは素早く飛び退き、リッカの足下からその何かに向けて威嚇の唸り声を出す。
飛び出してきたものは、鼠のようだった。しかし、通常の鼠よりも一回りか二回りほど大きく、その前歯は大きく発達し、眼は赤くギラついている。明らかに普通の鼠とは異なる。魔鼠だ。魔鼠は、リッカたちに気が付くと、全身の毛を逆立てて威嚇の声を上げた。しかし、こちらへ飛び掛かってくる様子はなく、魔鼠はジリジリと後退していき、やがて茂みの中へ消えていった。
しかし、周囲からはこちらを警戒する気配がヒシヒシと伝わってくる。リッカはフェンと視線を合わせて頷き合う。二人は周囲に注意を向けつつ、慎重に先へと進む。
暫く歩けば、再び草むらがガサゴソと音を立てて揺れた。程なくして茂みの奥から黒い塊がいくつも飛び出してきた。フェンはすかさず尻尾を揺らし風魔法を発動させる。自身とリッカの周りに竜巻の防御壁を張り、その攻撃を防いだ。風の塊に弾かれた数匹の魔鼠が悲鳴を上げる。
リッカは周囲を見回す。茂みの中には赤くギラついた眼が無数に蠢き、こちらを窺っているようだった。
「フェン。気をつけて」
フェンの言葉にリッカは首を傾げる。
「道中に何かあるの?」
問いかけるとフェンは小さく首を振る。
「何かあるかもしれないとは少しだけ期待しているのですが」
「どういうこと?」
「僕はたくさん魔法の特訓をしているけれど、実践経験が少ないと思うのです。だから、洞窟までの道のりで、実践に出くわさないかと……」
フェンの言葉にリッカは「なるほどね」と頷く。確かに、フェンはこれまで魔法の特訓をしてきた。訓練の様子を見るに、魔法の扱いは格段に上手くなっている。この辺りで実力を試したいのだろう。
「そういうことなら、いつもとは違う道を行きましょうか。たまには冒険も楽しいかもしれないわね」
リッカがそう言うと、フェンは表情をパッと明るくして尻尾を振った。そんな使い魔の様子を微笑ましく思いながら、リッカはフェンを腕から下ろすと再び歩みを進めたのだった。いつもの道を外れ、フェンを先頭に草の生い茂る道なき道を進んでいく。
しばらく獣道を進んだところで、不意に周囲に何かの気配を感じた。フェンもその気配を感じ取ったのかしきりに鼻をひくつかせている。リッカが警戒しながら周囲を見回していると、ガサゴソと草むらから何かが飛び出してきた。フェンは素早く飛び退き、リッカの足下からその何かに向けて威嚇の唸り声を出す。
飛び出してきたものは、鼠のようだった。しかし、通常の鼠よりも一回りか二回りほど大きく、その前歯は大きく発達し、眼は赤くギラついている。明らかに普通の鼠とは異なる。魔鼠だ。魔鼠は、リッカたちに気が付くと、全身の毛を逆立てて威嚇の声を上げた。しかし、こちらへ飛び掛かってくる様子はなく、魔鼠はジリジリと後退していき、やがて茂みの中へ消えていった。
しかし、周囲からはこちらを警戒する気配がヒシヒシと伝わってくる。リッカはフェンと視線を合わせて頷き合う。二人は周囲に注意を向けつつ、慎重に先へと進む。
暫く歩けば、再び草むらがガサゴソと音を立てて揺れた。程なくして茂みの奥から黒い塊がいくつも飛び出してきた。フェンはすかさず尻尾を揺らし風魔法を発動させる。自身とリッカの周りに竜巻の防御壁を張り、その攻撃を防いだ。風の塊に弾かれた数匹の魔鼠が悲鳴を上げる。
リッカは周囲を見回す。茂みの中には赤くギラついた眼が無数に蠢き、こちらを窺っているようだった。
「フェン。気をつけて」
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる