275 / 396
新人魔女と襲撃者(3)
しおりを挟む
新国王は国の跡継ぎとして、幼少のころから国全土に認知されていた。聡明で慈悲深いとその人気は高く、誰もが彼女を支持していた。だが、その後ろに控える人物の事はほとんど知られていない。
「我の即位にあたり、我は皇子リゼラルブの立太子をここに宣言する。彼の者は我の弟である。諸般の事情により長らくその存在を秘匿され、王位継承権を持たぬ身であったが、此度の我の即位により、後に続く王位継承者が不在となる。その穴を埋めるべく、我は彼の者の復権を認め、皇太子としてその任に当たらせることとする」
そう言い放った新国王の言葉に参列者は大きくどよめいた。その場にいた誰もが息を飲み、突然現れた皇太子候補に信じられないとばかりに不躾な視線を向ける中、新国王はニヤリと不敵に微笑むと続けた。
「我の弟の名はリゼラルブ・マグノリア。その存在を確認したことはなくともこの名を耳にしたことがある者はいるだろ。この国の大賢者その人である。彼の者が皇太子となることに異議ある者は今ここで声を上げよ! さもなくば沈黙をもって応えよ!」
しばらくの間、沈黙が辺りを包んだ。誰も彼もが口を閉じ息を潜めるように辺りに気を配る。その場を静寂が支配した。
「では、異議なしと判断する」
新国王はそう宣言すると、皇太子を自分の隣に立たせる。
「我、マリアンヌ・マグノリアは、皇太子リゼラルブと共にこの国に尽くしていくことをここに誓う」
新国王の凛とした宣言に一瞬の静寂の後、参列者たちは歓声をあげた。その声に答えるように新国王が右手を掲げると、より一層大きな歓声が沸き起こったのだった。
それと時を同じくして市街地からも歓声が聞こえてきた。その歓声は地鳴りのように長く響き渡り、その音は遠く離れた王宮にさえも届いたほどだった。
そんな情景を思いだしたリッカがほぅと息をつくと、エルナが心配そうに声をかけてきた。
「リッカさん? どうかなさいましたか?」
「いえ、なんでもありません。昨日の戴冠式のことを少し思い出していたのです。わたし、あのような盛大な式典には初めて参列いたしましたので、民のあの歓声の大きさには驚きました。皆が新しい為政者に喜びと期待を抱いていることがよくわかりました」
「確かにそうですね。私もあの地鳴りのような歓声にはとても驚きました」
エルナはそう言いながらも、どこか不安そうな表情を浮かべている。リッカはその表情を見逃さず、無理もないとその心中を慮る。
「我の即位にあたり、我は皇子リゼラルブの立太子をここに宣言する。彼の者は我の弟である。諸般の事情により長らくその存在を秘匿され、王位継承権を持たぬ身であったが、此度の我の即位により、後に続く王位継承者が不在となる。その穴を埋めるべく、我は彼の者の復権を認め、皇太子としてその任に当たらせることとする」
そう言い放った新国王の言葉に参列者は大きくどよめいた。その場にいた誰もが息を飲み、突然現れた皇太子候補に信じられないとばかりに不躾な視線を向ける中、新国王はニヤリと不敵に微笑むと続けた。
「我の弟の名はリゼラルブ・マグノリア。その存在を確認したことはなくともこの名を耳にしたことがある者はいるだろ。この国の大賢者その人である。彼の者が皇太子となることに異議ある者は今ここで声を上げよ! さもなくば沈黙をもって応えよ!」
しばらくの間、沈黙が辺りを包んだ。誰も彼もが口を閉じ息を潜めるように辺りに気を配る。その場を静寂が支配した。
「では、異議なしと判断する」
新国王はそう宣言すると、皇太子を自分の隣に立たせる。
「我、マリアンヌ・マグノリアは、皇太子リゼラルブと共にこの国に尽くしていくことをここに誓う」
新国王の凛とした宣言に一瞬の静寂の後、参列者たちは歓声をあげた。その声に答えるように新国王が右手を掲げると、より一層大きな歓声が沸き起こったのだった。
それと時を同じくして市街地からも歓声が聞こえてきた。その歓声は地鳴りのように長く響き渡り、その音は遠く離れた王宮にさえも届いたほどだった。
そんな情景を思いだしたリッカがほぅと息をつくと、エルナが心配そうに声をかけてきた。
「リッカさん? どうかなさいましたか?」
「いえ、なんでもありません。昨日の戴冠式のことを少し思い出していたのです。わたし、あのような盛大な式典には初めて参列いたしましたので、民のあの歓声の大きさには驚きました。皆が新しい為政者に喜びと期待を抱いていることがよくわかりました」
「確かにそうですね。私もあの地鳴りのような歓声にはとても驚きました」
エルナはそう言いながらも、どこか不安そうな表情を浮かべている。リッカはその表情を見逃さず、無理もないとその心中を慮る。
1
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
戦いから帰ってきた騎士なら、愛人を持ってもいいとでも?
新野乃花(大舟)
恋愛
健気に、一途に、戦いに向かった騎士であるトリガーの事を待ち続けていたフローラル。彼女はトリガーの婚約者として、この上ないほどの思いを抱きながらその帰りを願っていた。そしてそんなある日の事、戦いを終えたトリガーはフローラルのもとに帰還する。その時、その隣に親密そうな関係の一人の女性を伴って…。
公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。
私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる