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新人魔女と白紙の魔術書(3)
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「以上や!」
「え、それだけ……ですか?」
「そうや!」
自信満々に言い放つグリムとは対照的に、リッカは困惑の表情を浮かべていた。リッカのその様子に気付いたグリムは、不思議そうに声をかける。
「なんや、不満なんか?」
「いえ……そういうわけでは……」
「ほな、何が問題やねん」
「新しい魔術を覚えろと言われても、漠然としすぎていてどんなものを覚えたら良いのか……」
「ああ、なるほどな」
リッカの言葉に納得するようにうなずいたグリムは、前足でリッカの肩の辺りをポンと叩いた。
「そこでや、新人に渡すもんがある!」
「わたしに、ですか?」
「せやせや。ちょっと待ってぇな。確かあの辺に……」
グリムはリッカの腕の中からするりと抜け出し、机の上に置いてある小さな箱へと近寄っていった。そして器用に前足を使って蓋を開けると、中に入っている物を取り出す。それは、リッカの手に収まるくらいの小さな筆記帳だった。
「それを、わたしに?」
「せや。リゼラルブからの預かりもんや。ほれ、受け取らんかい」
差し出された小さな筆記帳を、リッカは両手でそっと受け取る。
「これは……一体?」
受け取ったはいいものの、どうすればいいのか分からずに戸惑っているリッカの様子を見て、グリムは得意げな顔をした。
「それは、リゼラルブの魔術書や。とりあえず、開けてみぃ」
リゼの、という言葉を聞いて、リッカは驚いたように目を見開いた。そして、恐る恐る筆記帳を開く。
しかし、そこには何も書かれていなかった。予想外のことに拍子抜けした表情を浮かべたリッカを見て、グリムは楽しげに笑う。
「まあ、そう簡単にはいかんわなぁ」
「どういうことなんでしょうか?」
「リゼラルブがあんたのために用意した魔術書や。そこに書かれているのは、リゼラルブの術式。つまり、それが読めるようになれば、リゼラルブと同じ力が使えるようになるわけや」
「読めるように? ここには文字なんて無いようですけれど……」
「そらそうや。リゼラルブの術式は、普通にしてたら読めへん」
「じゃあ、どうやって読むんですか?」
「簡単や。リゼラルブの魔力を感じるんや!」
「リゼさんの魔力を? そんなことができるんですか?」
半信半疑のリッカに、グリムは当然だと言わんばかりに大きくうなずく。そんなグリムに対して、リッカは少し不安そうな顔になった。
ただでさえ、他人の魔力を感じ取ることが苦手なのに、この場にいない相手の魔力を感じるなんて……。
「え、それだけ……ですか?」
「そうや!」
自信満々に言い放つグリムとは対照的に、リッカは困惑の表情を浮かべていた。リッカのその様子に気付いたグリムは、不思議そうに声をかける。
「なんや、不満なんか?」
「いえ……そういうわけでは……」
「ほな、何が問題やねん」
「新しい魔術を覚えろと言われても、漠然としすぎていてどんなものを覚えたら良いのか……」
「ああ、なるほどな」
リッカの言葉に納得するようにうなずいたグリムは、前足でリッカの肩の辺りをポンと叩いた。
「そこでや、新人に渡すもんがある!」
「わたしに、ですか?」
「せやせや。ちょっと待ってぇな。確かあの辺に……」
グリムはリッカの腕の中からするりと抜け出し、机の上に置いてある小さな箱へと近寄っていった。そして器用に前足を使って蓋を開けると、中に入っている物を取り出す。それは、リッカの手に収まるくらいの小さな筆記帳だった。
「それを、わたしに?」
「せや。リゼラルブからの預かりもんや。ほれ、受け取らんかい」
差し出された小さな筆記帳を、リッカは両手でそっと受け取る。
「これは……一体?」
受け取ったはいいものの、どうすればいいのか分からずに戸惑っているリッカの様子を見て、グリムは得意げな顔をした。
「それは、リゼラルブの魔術書や。とりあえず、開けてみぃ」
リゼの、という言葉を聞いて、リッカは驚いたように目を見開いた。そして、恐る恐る筆記帳を開く。
しかし、そこには何も書かれていなかった。予想外のことに拍子抜けした表情を浮かべたリッカを見て、グリムは楽しげに笑う。
「まあ、そう簡単にはいかんわなぁ」
「どういうことなんでしょうか?」
「リゼラルブがあんたのために用意した魔術書や。そこに書かれているのは、リゼラルブの術式。つまり、それが読めるようになれば、リゼラルブと同じ力が使えるようになるわけや」
「読めるように? ここには文字なんて無いようですけれど……」
「そらそうや。リゼラルブの術式は、普通にしてたら読めへん」
「じゃあ、どうやって読むんですか?」
「簡単や。リゼラルブの魔力を感じるんや!」
「リゼさんの魔力を? そんなことができるんですか?」
半信半疑のリッカに、グリムは当然だと言わんばかりに大きくうなずく。そんなグリムに対して、リッカは少し不安そうな顔になった。
ただでさえ、他人の魔力を感じ取ることが苦手なのに、この場にいない相手の魔力を感じるなんて……。
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