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新人魔女と不器用な師匠(3)

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「私は、見習いではなく助手を雇ったのだ。だから、君にはしっかりと仕事をしてもらう。それとも、まだ寝ぼけているのか?」
「いえ! そういうわけではっ!」

 慌てて否定するが、リッカの頭の中は混乱していた。自分は見習いのつもりでいたのだが、いつのまに助手ということになっていたのだろうか。

 リゼは、しきりに首を捻るリッカのことなど気にも留めず、くるりと背を向ける。

「いいから早く始めろ。私が調合を終わらせるまでに作業を終わらせておけ」
「わ、分かりました」

 リッカは急いで言われた通り庭先へ出ると一人作業を始めた。

 まず、昨日干していたヒヤシンの根の部分を回収した。土を魔法で変化させて作った石臼でヒヤシンの根を粉末状にする。これは頭痛や腹痛などを抑える鎮痛薬だ。

 それから、水を張った鍋にヒヤシンの花弁を入れ、火にかける。花弁はどろどろになるまで煮込んだのち、冷やして固める。冷め切る前に飴のような球状に丸めれば解毒剤の完成だ。

 花弁をしばらく煮込んでいる間に、リッカは石臼を持って工房へ戻った。工房の扉を開け、リッカはそっと足を踏み入れる。工房の中は、薬草を煮詰めているのか甘い匂いが漂っていた。

 窓際に置かれた大きな鍋の中で緑色の液体がグツグツと音を立てている。鍋のそばにリゼの姿はなかった。どこへ行ったのだろうか。リッカはキョロキョロと辺りを見回す。

 壁際にはいくつもの棚があり、そこには大量の瓶が置かれていた。中には様々な色の薬品が入っている。そして、部屋の隅に置かれた机の上には書類が山のように積まれていた。

(すごい。リゼさんは研究熱心なんだ)

 感心しながら視線を戻すと、いつの間にかリゼが戻ってきていた。相変わらず、金色の髪に日の光を反射させている。その姿に見惚れていると、不意に声をかけられた。

「終わったのか?」

 その声を聞いて、リッカはようやく我に返った。

「す、すみません! 解毒剤はもう少しです。鎮痛剤は……ここに……」

 リッカはリゼに駆け寄ると、手に持っていた石臼を見せた。リゼはそれをじっと見つめると、無言で手を差し出した。どうやら石臼を貸せということらしい。

 リッカは恐る恐る石臼を渡す。リゼはそれをサッと受け取ると、懐から小指サイズの小さな匙を取り出した。それで粉末状の薬をひと匙掬い取り、ペロリと舐める。

「……ふむ」

 リゼはそう呟くと、今度は鍋に入っている薬を少量だけ取り出し、それも味見をした。

「……うーん」
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