上 下
43 / 124
夏の章

夏の章(16)

しおりを挟む
 緑は、自身の頬を両手で挟みながら、イヤイヤと首を振った。表情豊に気持ちを表現する緑を可愛いと感じながら、私は苦笑気味に笑う。

「違うの。緑ちゃんのことをそんな風に思ってないから。私があの子に言われたんだ」
「ああ。木本なら、言いそうね。実際、私も言われた事あるし」

 緑は、変に納得の声を出す。

 緑の話によると、木本徳香と言う女子生徒は、自分以外の女子が、青島くんと仲良くすると、まるで癇癪を起こしたかの様に、私にした様な嫌がらせを相手の女子が青島くんのそばから離れるまで毎日のようにつづけるのだとか。

 幼少の頃は、青島くんが他の子と遊んでいたことで、木本さんが癇癪を起こすことはしょっちゅうで、その度に、青島くんは木本さんの相手をしていたそうだ。

 しかし、小学生になり、自然と異性の友達と距離ができ始める頃になると、青島くんも木本さんの相手をしなくなった。それなのに、緑ちゃんとだけは、変わらず付かず離れずの距離を保ち、気安く言葉を交わしていた。その事が、木本さんには面白くなく、彼女は、緑ちゃんに対して執拗な嫌がらせをしたのだと言う。

 しかし、緑ちゃんのあっけらかんとした性格が功を奏し、また幼少の頃から木本さんの性格を知っていた事で、緑ちゃんは、木本さんから受ける嫌がらせを、面倒臭いと思いつつも、大ごとにせず、上手いこと受け流していたらしい。

 中学生になると、木本さんの面倒臭さを知っている子たちは、青島くんと関わることを自重し、時折、事情を知らない女の子だけが、青島くんと交流を持とうとしたという。しかし、すかさず、木本さんからの洗礼を受け、女の子たちは青島くんと関わる事を諦めていったらしい。だから、青島くんはモテないのだとか。

「まぁ、ヒロくん本人も、木本の事を面倒くさいと思ってはいるだろうけれど、モテない事については、あまり気にしてないみたいだけどね~。あいつ、サッカーバカだからさ」

 そう言って可笑しそうに笑った緑の話を聞いて、少し納得した。青島くんは、優しい割に、女の子に人気がない事が不思議だったのだ。

「そっか。青島くん、優しくて素敵なのに、どうして女の子に人気が無いのか不思議だったけど、木本さんのせいだったんだね」
「いや~。それはどうかな。まぁ、木本のせいってのはあるけど、そもそもヒロくんって、女子にそんなに優しくないよ。ってか、面倒臭いって言って、あんまり関わろうとしない人だよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

スマイリング・プリンス

上津英
ライト文芸
福岡県福岡市博多区。福岡空港近くの障害者支援施設で働く青年佐古川歩は、カレーとスマホゲー大好きのオタクだった。 ある夏、下半身不随の中途障害者の少年(鴻野尚也)に出会う。すっかり塞ぎ込んでいる尚也を笑顔にしたくて、歩は「スマイリング・プリンス」と作戦名を名付けて尚也に寄り添い始める。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

Get rid of anger 〜怒り狩〜

田古みゆう
ライト文芸
あんまりイライラしちゃダメよ!  『Get rid of anger』という新作スマホゲームが、巷を賑わしている。  ゲームイベントで得られる最高報酬は、1000万AG!!  このゲームでは、日々変動するレートに従って所有ポイントを現金に還元が出来るシステムがあり、イベント開始時点でのレートは、1AG=1円。つまり、イベントをクリアすると、最高額で1000万円が手に入るのだ。  時刻は、深夜3時。そんな一攫千金を狙えるビッグイベントが今、始まろうとしていた。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

車両故障は不可抗力

ぽやしみ仙人
ライト文芸
実籾身延は路線バス運転士である。 平々凡々な彼であるが、一つだけ欠点があった。 それは車両故障が異常に多いのだ。 故に意図的な故障を誘発しているとあらぬ疑いを掛けられ、彼は上司に詰め寄られてしまう。 果たして彼は疑いを晴らすことが出来るのか……

処理中です...