33 / 124
夏の章
夏の章(6)
しおりを挟む
Noelであるフリューゲルが、他人に対して敵意を剥き出しにしている事に驚き、私は思わず、彼の顔を凝視した。
フリューゲルの肩越しにピカリと空が光る。まるで、空がフリューゲルの敵意を汲み取り、威嚇に加勢するかのように、遠くの方でゴロゴロと雷鳴が響いた。
「きゃっ」
小さな悲鳴が聞こえ、視線を戻すと、雷の音に驚いたのか、それとも恐怖を感じたのか、女子生徒が肩をビクつかせる。
雷鳴に臆し、オタオタとしている彼女の姿を見ていたら、なんだか無性に胸の辺りがムカムカとしてきた。
何が、「きゃっ」だ。先程までの威勢はどうしたのだ。
不遜な態度から一変、気弱な空気を纏った彼女の変わりように、私の胸の中では黒いモヤが渦を巻き、空の威嚇の音が、私の中でも鳴り響く。
一気に膨れ上がった黒いモヤを、そのまま彼女に向けて吐き出そうと、口を開きかけたちょうどその時、頭上から、私を呼ぶ声がした。
「白野?」
何事かと、顔を上げると、校舎の2階の窓辺から、顔を覗かせていた青島くんと目が合った。しかし、彼は、すぐさま校舎の中へ引っ込み、姿が見えなくなってしまう。
目の前の彼女も、青島くんの声に気がついたのか、傘を傾け、2階の窓越しに彼の姿を探しているようだ。
そんな姿に、またもや、胸の辺りにムカつきを覚えた私は、とうとう我慢ならず、尖った声を漏らした。
「あなたさ……」
そんな私の声を制すように、水溜りの水を跳ねさせながら、足音が勢い良く近づいてきた。
「白野。お前、傘もささずに何やってるんだ。風邪ひくぞ」
青島くんは、そう言って、私に駆け寄り、自分の傘を差し掛けてくれる。
狭い傘の中、覗き込むようにして私の顔を見てきた彼は、何かを言いたげに眉根を寄せた。
「何?」
思わず尖ったままの声を出すと、青島くんは、より一層眉間の皺を深めた。
「何か……」
困惑気味に、彼が口を開きかけたところへ、甘えたような甘ったるい声音が被さる。
「あれ~大海。部活は? あ、雨だから、もしかして終わり?」
声のした方へチラリと視線を向けた青島くんは、相手を確認すると、露骨に顔を歪ませた。
「木本。お前、こんな所で何を……?」
青島くんは、私と、木本という女子生徒の顔を交互に見比べ、やがて何かに気が付いたのか、声音を少し低く響かせる。
「まさか、お前、白野に何かしたんじゃないだろうな?」
青島くんは、明らかに木本という女子生徒に対して不快感を露わにしていた。
フリューゲルの肩越しにピカリと空が光る。まるで、空がフリューゲルの敵意を汲み取り、威嚇に加勢するかのように、遠くの方でゴロゴロと雷鳴が響いた。
「きゃっ」
小さな悲鳴が聞こえ、視線を戻すと、雷の音に驚いたのか、それとも恐怖を感じたのか、女子生徒が肩をビクつかせる。
雷鳴に臆し、オタオタとしている彼女の姿を見ていたら、なんだか無性に胸の辺りがムカムカとしてきた。
何が、「きゃっ」だ。先程までの威勢はどうしたのだ。
不遜な態度から一変、気弱な空気を纏った彼女の変わりように、私の胸の中では黒いモヤが渦を巻き、空の威嚇の音が、私の中でも鳴り響く。
一気に膨れ上がった黒いモヤを、そのまま彼女に向けて吐き出そうと、口を開きかけたちょうどその時、頭上から、私を呼ぶ声がした。
「白野?」
何事かと、顔を上げると、校舎の2階の窓辺から、顔を覗かせていた青島くんと目が合った。しかし、彼は、すぐさま校舎の中へ引っ込み、姿が見えなくなってしまう。
目の前の彼女も、青島くんの声に気がついたのか、傘を傾け、2階の窓越しに彼の姿を探しているようだ。
そんな姿に、またもや、胸の辺りにムカつきを覚えた私は、とうとう我慢ならず、尖った声を漏らした。
「あなたさ……」
そんな私の声を制すように、水溜りの水を跳ねさせながら、足音が勢い良く近づいてきた。
「白野。お前、傘もささずに何やってるんだ。風邪ひくぞ」
青島くんは、そう言って、私に駆け寄り、自分の傘を差し掛けてくれる。
狭い傘の中、覗き込むようにして私の顔を見てきた彼は、何かを言いたげに眉根を寄せた。
「何?」
思わず尖ったままの声を出すと、青島くんは、より一層眉間の皺を深めた。
「何か……」
困惑気味に、彼が口を開きかけたところへ、甘えたような甘ったるい声音が被さる。
「あれ~大海。部活は? あ、雨だから、もしかして終わり?」
声のした方へチラリと視線を向けた青島くんは、相手を確認すると、露骨に顔を歪ませた。
「木本。お前、こんな所で何を……?」
青島くんは、私と、木本という女子生徒の顔を交互に見比べ、やがて何かに気が付いたのか、声音を少し低く響かせる。
「まさか、お前、白野に何かしたんじゃないだろうな?」
青島くんは、明らかに木本という女子生徒に対して不快感を露わにしていた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
スマイリング・プリンス
上津英
ライト文芸
福岡県福岡市博多区。福岡空港近くの障害者支援施設で働く青年佐古川歩は、カレーとスマホゲー大好きのオタクだった。
ある夏、下半身不随の中途障害者の少年(鴻野尚也)に出会う。すっかり塞ぎ込んでいる尚也を笑顔にしたくて、歩は「スマイリング・プリンス」と作戦名を名付けて尚也に寄り添い始める。
Get rid of anger 〜怒り狩〜
田古みゆう
ライト文芸
あんまりイライラしちゃダメよ!
『Get rid of anger』という新作スマホゲームが、巷を賑わしている。
ゲームイベントで得られる最高報酬は、1000万AG!!
このゲームでは、日々変動するレートに従って所有ポイントを現金に還元が出来るシステムがあり、イベント開始時点でのレートは、1AG=1円。つまり、イベントをクリアすると、最高額で1000万円が手に入るのだ。
時刻は、深夜3時。そんな一攫千金を狙えるビッグイベントが今、始まろうとしていた。
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした
miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。
婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。
(ゲーム通りになるとは限らないのかも)
・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。
周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。
馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。
冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。
強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!?
※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる