決戦前夜

田古みゆう

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決戦当日の小夜子

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 いよいよ決戦当日。

 小夜子のコンディションは、最悪だった。それもそうだろう。気持ちが昂りすぎて、前夜に夜更かしをしてしまったのだから。

 目の下にしっかりとしたクマができ、せっかくコンディションの良かったお肌は多少むくんでいる。寝不足のせいか、コンタクトもなかなか入らず、仕方なく装備した眼鏡で、残念な顔をなんとか隠し、学校へとやってきた。

 今日は、校外学習で、バスと船に乗り、巌流島へ行くことになっている。

 巌流島で、班ごとに昼食のバーベキューを楽しんだ後は、自由散策の時間。先日忍ばせた手紙には、時間の指定を書かなかったと後で悔やんだが、スケジュール的に、この時間に指定先である展望広場へ来てくれるだろうと思っている。

 呼び出した相手である、宮本武とは、これまで接点らしい接点はなかったが、ここ数日、なんとなく視線を向けられていたし、幾度かは確実に視線が交わったので、自身が思いの丈をぶつけても、色よい返事がもらえるのではなかろうかと、確証もないのに、何処か小夜子は強気でいる。

 しかし、やはり、これまでに接点がないというのは、多少心許ないので、ここは「お友達から始めましょう」と言うべきだろうかと、少なからず尻込みする気持ちもある。

 だが、成績優秀なうえにスポーツ万能。おまけに、爽やかさはピカイチという彼のことだ。いつ突然に、彼女という存在が現れてもおかしくない。そんなことになってしまっては、面倒なことこの上ない。やはりここは、宮本武との初の接触で必ず、自身の魅力を余すところなく伝えて、武の彼女の座にふさわしいということを思い知らせてやるのだと、小夜子は意気込んでいた。

 しかし、それは、バスに乗り込むまでだった。

 巌流島に着き、船から降り立った小夜子は、ふらふらとして、顔面蒼白の状態だった。

「大丈夫ですか? 副会長」
「……もう、だめかもしれないです」

 メガネを外し、苦しそうに顔を歪める小夜子の背中を、細川が心配そうにさする。

 少し離れた場所では、武と水野が同じような状態になっているのを、チラリと視界に映し、細川は、呆れたように声を掛ける。

「そんなんで、本当に大丈夫ですか? 今日が、宮本くんとの対決の日なんですよね?」
「うん。……えっ? 対決? 対決って、何? というか、何故、宮本くんと約束がある事を知っているの?」

 青い顔を訝しそうに顰めて、小夜子は細川と目を合わす。しかし細川は、明後日の方を見て、受け流した。
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