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閑話 マーティン侯爵 19
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「騎士達が噂していたぞ。将軍の部下の令嬢がクラーク嬢に嫌がらせをして、それを知ったイーサンが怒って、将軍の執務室に乗り込んで来て修羅場になったってな!将軍がフラれるかもしれないって、みんな心配していたぞ。」
人の噂話を楽しそうに話す悪魔は、今日も元気そうだ。
「陛下!笑い事ではないのです。私は、彼女に捨てられるのではないかと、不安で死にそうになったのですから。
あの女がソフィア嬢に誤解されそうな話をして、第二夫人になって出産を引き受けるなんて言ったらしく…。アレが男だったら、その場で斬りつけていたかもしれませんね。」
「イーサンはなぜそのことを知っていたのだ?」
「あの女がソフィア嬢に酷いことを言っていたところを、公爵閣下の側近が目撃したとか…。」
「側近?イーサンの影だろう?」
「…でしょうね。公爵閣下はソフィア嬢を守ろうとしていたのでしょう。
公爵閣下はソフィア嬢を優しい目で見ていましたし、そんな公爵閣下を見るソフィア嬢も、信頼をしているような目で見ていました…。」
「…くっ。くっ。…苦しむがいい。それを承知でクラーク嬢に契約結婚を申し出たのは、お前なのだからな。」
「分かっています。傍にいることを許されただけ、私は幸せだと思っていますから。」
ソフィア嬢に謝る機会を与えてもらえた私は、彼女から許してもらうことができた。
その時に気付いたことは、彼女は私のことなど、全くどうでもいい存在で、興味もないということだった。
そんなことは分かっているつもりだったが、せっかく謝罪をする機会を得ることができたのだ。今までの話も沢山したいと思っていたのだが、彼女は謝罪を受け入れると言って、早々と会話を切り上げようとしていた。彼女は私に対して、とにかく無関心だったのだ。
しかも、全て終わったことだと言われてしまった。次に結婚する時は、妻となる者に愛を伝えて大切にしてあげるようにと突き放すように言われてしまい、私は涙が止まらなくなってしまった。
ソフィア嬢は、そんな情けない私に怒りを感じたのか、今までの辛かった出来事を話して、感情をぶつけてきた。
その話の中で、システィーナ国の大公殿下との縁談に悩んでいたことを知った私は、縁談避けとして私を利用するように伝えて、ソフィア嬢が有利な内容の契約結婚を持ちかけていた。
そして、ソフィア嬢が契約結婚に同意してくれたことで今に至る。
自分でも信じられないと思う。自分があんな提案をして、彼女もそれを受け入れてくれるとは…。
婚約が決まると、陛下や仲間の騎士達はプレゼントをしろだとか、あの店がオススメだとか、沢山会いに行って来いだとか、とにかく色々と助言してくれる。恥ずかしいが、今まで女性とそのような経験のない私は、知らないことばかりだったので、本当に有り難かった。
あの日、エドワーズ公爵閣下が私の執務室に来た時。ソフィア嬢に「大丈夫か?」と声を掛けた時の、公爵閣下を見つめるソフィア嬢のあの目…。
私には見せたことのない目をしていた。あの目を見たら、胸の中がドス黒く染まっていくような気がしたのだが、それは私の胸の中だけに留めておこう。私はそんな感情を持っていい立場ではないのだ。
公爵閣下があの後に私を一瞬睨みつけてきたが、ソフィア嬢を守れないのならいつでも奪いに行くという私への警告だと理解した。
彼女は私を、契約の結婚相手としか思ってないだろう。余計な欲は持たぬようにしなければならない。
近くにいて彼女を守り、償いができればいい。ただ、いつかは信頼してもらえる存在くらいにはなりたいと思う。
たとえ愛されなくても、惨めになろうとも、許されるのであれば、ずっと傍にいたい。
明日はずっと待ち望んだ彼女との結婚式…
人の噂話を楽しそうに話す悪魔は、今日も元気そうだ。
「陛下!笑い事ではないのです。私は、彼女に捨てられるのではないかと、不安で死にそうになったのですから。
あの女がソフィア嬢に誤解されそうな話をして、第二夫人になって出産を引き受けるなんて言ったらしく…。アレが男だったら、その場で斬りつけていたかもしれませんね。」
「イーサンはなぜそのことを知っていたのだ?」
「あの女がソフィア嬢に酷いことを言っていたところを、公爵閣下の側近が目撃したとか…。」
「側近?イーサンの影だろう?」
「…でしょうね。公爵閣下はソフィア嬢を守ろうとしていたのでしょう。
公爵閣下はソフィア嬢を優しい目で見ていましたし、そんな公爵閣下を見るソフィア嬢も、信頼をしているような目で見ていました…。」
「…くっ。くっ。…苦しむがいい。それを承知でクラーク嬢に契約結婚を申し出たのは、お前なのだからな。」
「分かっています。傍にいることを許されただけ、私は幸せだと思っていますから。」
ソフィア嬢に謝る機会を与えてもらえた私は、彼女から許してもらうことができた。
その時に気付いたことは、彼女は私のことなど、全くどうでもいい存在で、興味もないということだった。
そんなことは分かっているつもりだったが、せっかく謝罪をする機会を得ることができたのだ。今までの話も沢山したいと思っていたのだが、彼女は謝罪を受け入れると言って、早々と会話を切り上げようとしていた。彼女は私に対して、とにかく無関心だったのだ。
しかも、全て終わったことだと言われてしまった。次に結婚する時は、妻となる者に愛を伝えて大切にしてあげるようにと突き放すように言われてしまい、私は涙が止まらなくなってしまった。
ソフィア嬢は、そんな情けない私に怒りを感じたのか、今までの辛かった出来事を話して、感情をぶつけてきた。
その話の中で、システィーナ国の大公殿下との縁談に悩んでいたことを知った私は、縁談避けとして私を利用するように伝えて、ソフィア嬢が有利な内容の契約結婚を持ちかけていた。
そして、ソフィア嬢が契約結婚に同意してくれたことで今に至る。
自分でも信じられないと思う。自分があんな提案をして、彼女もそれを受け入れてくれるとは…。
婚約が決まると、陛下や仲間の騎士達はプレゼントをしろだとか、あの店がオススメだとか、沢山会いに行って来いだとか、とにかく色々と助言してくれる。恥ずかしいが、今まで女性とそのような経験のない私は、知らないことばかりだったので、本当に有り難かった。
あの日、エドワーズ公爵閣下が私の執務室に来た時。ソフィア嬢に「大丈夫か?」と声を掛けた時の、公爵閣下を見つめるソフィア嬢のあの目…。
私には見せたことのない目をしていた。あの目を見たら、胸の中がドス黒く染まっていくような気がしたのだが、それは私の胸の中だけに留めておこう。私はそんな感情を持っていい立場ではないのだ。
公爵閣下があの後に私を一瞬睨みつけてきたが、ソフィア嬢を守れないのならいつでも奪いに行くという私への警告だと理解した。
彼女は私を、契約の結婚相手としか思ってないだろう。余計な欲は持たぬようにしなければならない。
近くにいて彼女を守り、償いができればいい。ただ、いつかは信頼してもらえる存在くらいにはなりたいと思う。
たとえ愛されなくても、惨めになろうとも、許されるのであれば、ずっと傍にいたい。
明日はずっと待ち望んだ彼女との結婚式…
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