上 下
114 / 133

驚くお母様

しおりを挟む
 王宮から帰った私は、すぐに両親に話をしたいと思ったのだが、お父様はまだ帰ってないらしい。
 なら、お母様に先に話してみようか。こういうことはお母様に1番に話をした方が良さそうだよね。

 お母様に大切な話がしたいと言うと、すぐに私の部屋に来てくれた。

「ソフィー。お帰りなさい。陛下との話し合いは大丈夫だったのかしら?大切な話とやらも聞かせてちょうだい。」

 よし!

「はい。陛下とは普通に話が出来ました。
 お母様、私と大公様との縁談は断って欲しいのです。私は遠い異国に行きたくないですし、大公妃になりたくありません。」

「そうね。断りましょうか。」

 あっさり過ぎなんだけど…

「いいのですか?」

「元々、体調に不安がある娘を遠くに嫁がせることには抵抗があったのよ。何かあっても、他国だとうちの力が及ばないから動きにくいでしょ?大公様には、体の弱い娘を異国には嫁がせられないと言ってみましょうか。…妊娠もしてないでしょうから。」

 妊娠の心配もされていたのか。恥ずかしいし、悪かったよね…。

「お母様、あのハーブティーが助かりました。ありがとうございます。」

 恥を忍んで、お礼を伝えてみた。

「自分より身分が高い人に求められたら、逃げることは難しいのは理解しているわ。妊娠の可能性があるからと求婚されたら、尚更逃げられなくなることもね。
 昔ほど令嬢の純潔は求められてないから、気にしなくていいわよ。みんなこっそり飲んでいるみたいよ。」

 お母様はすごい!

「本当に助かりました。それでその他にも大切な話がありまして…。」

 反対されるだろうけど、話してみよう。

「あら!何かしら?」

「突然で申し訳ないのですが、結婚したい方を見つけました。私にとって最高の条件を提案してくれた方なのです。」

「………結婚?」

 お母様の綺麗な目が、点になってしまった。

「私にとって最高の結婚生活の条件を、契約書を作成して約束してくれると言ってくれたのです。
 結婚したら自由に過ごしていいし、住む場所も私が過ごしやすい場所を考えてくれるらしいです。
 離縁したくなったらすぐに応じてくれるらしいし、社交も国王陛下主催の行事以外は、無理しないでいいと言ってくれました。子供もできなくてもいいし、愛人は作らないとまで言ってくれたのです!」

「ソフィー。ちょっと待ってね…。あまりに急な話すぎて、理解が追いつかないの。」

 お母様はお茶を飲んで、一呼吸する。

「で…、ソフィアにそこまでの条件を出してまで、結婚したいと言ってくれている方は誰なのかしら?」

 言いにくい人だけど、仕方がない。

「それが…、マーティン将軍閣下なのです。」

「………マーティン将軍?…ゴホッ、ゴホッ…。」

 お母様がむせってしまった。やっぱり驚いたか。

「お母様、大丈夫ですか?申し訳ありません!驚かせてしまって…。」

「ソフィー、お母様は賛成出来ないわよ。あの男のことはまだ許せないわ。」

 そうだよね…。

「お母様の気持ちは分かります。でも、将軍閣下は自分を利用して、縁談避けにしていいとまで言ってくれました。償いがしたいとも言ってくれたのです。
 子供ができなくても、煩く言う親兄弟もいないし、何かあれば盾になってくれると。
 こんな条件の結婚はもうないかと思います。」

「ハァー。条件がいいのは認めるわ。でも、あの男が嫌なのよ。ソフィーはあの男の邸で命を狙われたのよ。そんな所にまた嫁ぐなんて…。」

 親ならそう思うのは当然だよね。でも、こんなにいい条件の契約結婚を諦めたくないの。

「では、マーティン侯爵家の邸ではなく、このクラーク侯爵家の近くに住むのはダメですか?メイドや護衛もクラーク侯爵家から派遣してもらって、お父様やお母様はいつでも自由に出入りしてよいという条件をつけてもらうとか。」

「………旦那様と話し合ってみるわ。」

 もしかして…。これはいけるかも!


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」 大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが…… ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。 「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」 エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。 エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話) 全44話で完結になります。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨ 〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。

屋月 トム伽
恋愛
ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。(リディアとオズワルド以外はなかった事になっているのでifとしてます。) 私は、リディア・ウォード侯爵令嬢19歳だ。 婚約者のレオンハルト・グラディオ様はこの国の第2王子だ。 レオン様の誕生日パーティーで、私はエスコートなしで行くと、婚約者のレオン様はアリシア男爵令嬢と仲睦まじい姿を見せつけられた。 一人壁の花になっていると、レオン様の兄のアレク様のご友人オズワルド様と知り合う。 話が弾み、つい地がでそうになるが…。 そして、パーティーの控室で私は襲われ、倒れてしまった。 朦朧とする意識の中、最後に見えたのはオズワルド様が私の名前を叫びながら控室に飛び込んでくる姿だった…。 そして、目が覚めると、オズワルド様と半年前に時間が戻っていた。 レオン様との婚約を避ける為に、オズワルド様と婚約することになり、二人の日常が始まる。 ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。 第14回恋愛小説大賞にて奨励賞受賞

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

処理中です...