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閑話 大公アルバート・エヴァン 5

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 茶会の後、クラーク侯爵令嬢への気持ちに気付いた私は、アンリが彼女の別荘に行く時は、送り迎えに付き添うようにした。彼女に少しでも会いたいと思ったからだ。
 そんな私の気持ちに気付かない彼女は、相変わらずアンリだけを見ているのであった。




「殿下。クラーク侯爵令嬢の調査結果が届きました。さすが名門侯爵家だけあって、かなりの金額がかかり、調べるのに苦労したようです。」

「そうか。ご苦労だった。」

 そこに書いてあったことは驚く事ばかりであった。



〝クラーク侯爵家が、若きマーティン侯爵の後ろ盾になる為に令嬢と婚姻をさせたが、戦争で夫婦関係は全くないまま、白い結婚で婚姻は無効となる。

 マーティン侯爵家では、侯爵の叔父であるベイカー子爵から命を狙われ、子爵の息のかかった使用人達から酷い仕打ちを受けて記憶を失う。
 マーティン侯爵は多忙ゆえ、邸に帰ることがなかったようで、そのことに気付くことが出来なかったらしい。
 命の危険を感じた令嬢は、白い結婚を申請して、侯爵邸から姿を消した。

 その後、ベイカー子爵とその関係する者達は、クラーク侯爵家から報復を受けて消された。尚、マーティン侯爵家とクラーク侯爵家との関係も悪化した様子。

 マーティン侯爵は、国王陛下の最側近の将軍の地位を賜っている。白い結婚は望んでいなかったと思われ、一時行方不明になっていた令嬢の捜索活動をしていた。
 令嬢の方は教会に保護され、治療師として神殿で働いている時に、エドワーズ公爵に見初められ婚約。
 しかし、貴族派の筆頭のキャンベル公爵家から毒殺されそうになる。
 一年近く臥せっている間に、エドワーズ公爵との婚約は解消された。エドワーズ公爵は、婚約解消は拒否し続けていたようで、今も復縁を望んでいるらしい。

 毒殺未遂事件を起こした、キャンベル公爵家は取り潰しになり、その後、エドワーズ公爵家とクラーク侯爵家から報復を受け、一家は消されたと思われる。
 
 令嬢の現在は、療養の為に王都を離れ、港町の別荘に滞在中。
 療養生活を終えて王都に戻った後に、またエドワーズ公爵と婚約を結び直すという噂もあるが、毒による後遺症を心配して、令嬢が結婚に否定的なようだ。
 国王陛下が令嬢を心配し、王命で国王の側近と婚姻させるとか、国王の側室にするのではとの噂もある。 以上〟



 白い結婚に記憶喪失。そして毒殺されそうになり、婚約解消……
 あの儚げで、か弱そうな彼女が、そんな苦しい人生を歩んで来たとは。
 
 確かに、1年も臥せってしまうほどの毒は気になるが、別に関係ない。例え後遺症で具合が悪くなろうとも、彼女の側にいたいと私は思う。

 結婚に否定的なのは、子供を産めるかの心配をしているのだろうが、私にはアンリがいるし親族に子供も沢山いるのだから、子供が産めなくても気にしない。

 何の苦労もなく着飾ることが全ての、私の後妻を狙ってくる女狐と比べたら、彼女は優しくて、強くて、美しくて、とにかく素晴らしい令嬢だ。そして、私の宝物であるアンリを大切にしてくれる。

 そんな彼女に私は恋をしているのだ。


「殿下は決められた政略結婚をして、大公家のために必死で働いてきました。ですから、殿下自身の幸せの為に、心から愛する人を求めても良いと思います。
 もしクラーク侯爵令嬢が欲しいなら、そろそろ行動を起こすべきかと。」

 この側近は私の背中を押してくれているようだ。

「分かっている。…ありがとう。」


 彼女が療養生活を終えて王都に帰る前までだ。
 それまでに何とかしなければ。


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