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閑話 マーティン侯爵 17
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クラーク侯爵と夫人が茶会で不在だという日に、お忍びで、クラーク侯爵令嬢の見舞いに行くと言い出す国王陛下。その護衛騎士に混ざって、私も急遽一緒に行くことにした。
陛下は私に近衛騎士の制服と、髪色や瞳の色を変えられる魔法具を用意してくれていた。
クラーク侯爵家の使用人の中には私のことを知る者がいるだろうからと、陛下が配慮してくれたようだ。
国王陛下がクラーク侯爵家に突然来たことで、門番や家令がかなり驚いていたが、すんなりとソフィア嬢に会うことが出来た。
約1年ぶりに見たソフィア嬢は、かなり痩せたように見えた。そして相変わらず、儚げで守ってあげたくなるような美少女だった。
そんなソフィア嬢に、陛下はデリカシーのない言葉ばかり投げかける。
「クラーク嬢は、イーサンとは会ったのか?」
「いえ。婚約は解消されましたので、もう会わないと思います。」
「…はっきり言うのだな。」
「陛下が、真っ直ぐに聞いてきましたので、私もはっきりと答えただけですわ。」
「そうか。なら、今度は私と婚約するか?」
この悪魔!言葉を慎め!
後で他の護衛騎士に指摘されたのだが、その時の私は、殺気がダダ漏れだったようだ。陛下も気付いたらしい。
しかし、その後にソフィア嬢が放った言葉に、私はどうしようもない気持ちにさせられたのだった。
「私はこの先、結婚は出来ないのは理解していますから。」
何を言って…?
「あの毒の後遺症が気になるからですわ。この先、また体調を崩すかもしれませんし、子供も産めるか分かりませんから。」
「もう平気ですわ。大丈夫です。」
平気なはずないだろう?君は他の誰よりも、幸せにならなければならないのに…。
どうして君ばかりが…。
そんな悲しさを隠しきれてない、寂しげな笑顔を見せないでくれ…。
「…………。」
ふと、ソフィア嬢が私を見ていることに気付いた。
陛下もソフィア嬢の視線に気付き、背後を振り返る。
「…クラーク嬢、すまないな。この護衛騎士は涙脆いようで、何かあるといつもこうなんだ。剣の腕はいいのだが。」
私はまた涙を…。やってしまった。
「ふふっ。お優しいお方なのでしょうね。良かったらお使い下さいませ。」
そんな私に、優しく微笑んだソフィア嬢は、ハンカチを貸してくれたのだった。私は無言で頭を下げることしか出来なかった…。
「ディラン。私はキャンベル公爵家が潰れてくれて、本当に嬉しかったし、あの女が消えてくれて良かったと思っている。クラーク嬢も、毒に侵されたのは気の毒だと思ったが、意識が戻り、少しずつ元気になっていると聞き、また以前のように戻れるだろうと思っていた。しかしその考えは、浅はかだったようだ。」
「私もそう思っていました…。今度こそ彼女が幸せになれればと。」
「クラーク嬢はイーサンの将来の為に、身を引くことを選んだということか。」
「…恐らく。」
「もしクラーク嬢が、イーサンやディランの想い人でなかったのなら、私は彼女にプロポーズしていたかもしれん。あんな表情を見せられたら、大抵の男は庇護欲を掻き立てられるだろう。
子ができなくても、没落しそうな家門の令嬢を側室に迎えて、子を産ませて、王妃の養子にすればいいだろう?」
「陛下!そんな話は聞きたくないです!」
「…冗談だ。怒るなよ!ただ、イーサンは子供なんて生まれなくても、気にしないと思うがな。あの執着男も、今回はクラーク嬢を守れなかったという負い目があって、強引に出れないのだろう。」
「私だって、子供になんて拘りませんよ。親戚に子供なんていくらでもいるんですから、養子を迎えればいいだけです。」
「夫婦がそれで良いと思っていても、周りが煩いだろう?」
「そうですね…。」
彼女の為に、私は何が出来るのだろうか…。
私は彼女に何かをしてあげれる立場にはないのに。
彼女を想わずにはいられないのだ。
陛下は私に近衛騎士の制服と、髪色や瞳の色を変えられる魔法具を用意してくれていた。
クラーク侯爵家の使用人の中には私のことを知る者がいるだろうからと、陛下が配慮してくれたようだ。
国王陛下がクラーク侯爵家に突然来たことで、門番や家令がかなり驚いていたが、すんなりとソフィア嬢に会うことが出来た。
約1年ぶりに見たソフィア嬢は、かなり痩せたように見えた。そして相変わらず、儚げで守ってあげたくなるような美少女だった。
そんなソフィア嬢に、陛下はデリカシーのない言葉ばかり投げかける。
「クラーク嬢は、イーサンとは会ったのか?」
「いえ。婚約は解消されましたので、もう会わないと思います。」
「…はっきり言うのだな。」
「陛下が、真っ直ぐに聞いてきましたので、私もはっきりと答えただけですわ。」
「そうか。なら、今度は私と婚約するか?」
この悪魔!言葉を慎め!
後で他の護衛騎士に指摘されたのだが、その時の私は、殺気がダダ漏れだったようだ。陛下も気付いたらしい。
しかし、その後にソフィア嬢が放った言葉に、私はどうしようもない気持ちにさせられたのだった。
「私はこの先、結婚は出来ないのは理解していますから。」
何を言って…?
「あの毒の後遺症が気になるからですわ。この先、また体調を崩すかもしれませんし、子供も産めるか分かりませんから。」
「もう平気ですわ。大丈夫です。」
平気なはずないだろう?君は他の誰よりも、幸せにならなければならないのに…。
どうして君ばかりが…。
そんな悲しさを隠しきれてない、寂しげな笑顔を見せないでくれ…。
「…………。」
ふと、ソフィア嬢が私を見ていることに気付いた。
陛下もソフィア嬢の視線に気付き、背後を振り返る。
「…クラーク嬢、すまないな。この護衛騎士は涙脆いようで、何かあるといつもこうなんだ。剣の腕はいいのだが。」
私はまた涙を…。やってしまった。
「ふふっ。お優しいお方なのでしょうね。良かったらお使い下さいませ。」
そんな私に、優しく微笑んだソフィア嬢は、ハンカチを貸してくれたのだった。私は無言で頭を下げることしか出来なかった…。
「ディラン。私はキャンベル公爵家が潰れてくれて、本当に嬉しかったし、あの女が消えてくれて良かったと思っている。クラーク嬢も、毒に侵されたのは気の毒だと思ったが、意識が戻り、少しずつ元気になっていると聞き、また以前のように戻れるだろうと思っていた。しかしその考えは、浅はかだったようだ。」
「私もそう思っていました…。今度こそ彼女が幸せになれればと。」
「クラーク嬢はイーサンの将来の為に、身を引くことを選んだということか。」
「…恐らく。」
「もしクラーク嬢が、イーサンやディランの想い人でなかったのなら、私は彼女にプロポーズしていたかもしれん。あんな表情を見せられたら、大抵の男は庇護欲を掻き立てられるだろう。
子ができなくても、没落しそうな家門の令嬢を側室に迎えて、子を産ませて、王妃の養子にすればいいだろう?」
「陛下!そんな話は聞きたくないです!」
「…冗談だ。怒るなよ!ただ、イーサンは子供なんて生まれなくても、気にしないと思うがな。あの執着男も、今回はクラーク嬢を守れなかったという負い目があって、強引に出れないのだろう。」
「私だって、子供になんて拘りませんよ。親戚に子供なんていくらでもいるんですから、養子を迎えればいいだけです。」
「夫婦がそれで良いと思っていても、周りが煩いだろう?」
「そうですね…。」
彼女の為に、私は何が出来るのだろうか…。
私は彼女に何かをしてあげれる立場にはないのに。
彼女を想わずにはいられないのだ。
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