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初めての気持ち
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気付くと、大公様からも名前で呼ばれるようになっていた。
「ソフィア、今度の週末なんだが、遠乗りに出かけないか?」
有難いが…。
「大公様。私は馬術は出来ませんので、どなたか別の方を誘って差し上げて下さいませ。」
「私はソフィアと行きたいから、君を誘っているのだ。私の馬に乗せるから大丈夫だ。当日迎えに行くから待っていてくれ。」
最近、ハッキリ言うようになってきた大公様。友人として、慣れてきたってことかな。
しかし。2人で一緒に馬に乗るの?しかも、すでに行くって決定なのね。
「ソフィア。お父様とデートなんでしょ。楽しんで来てね。」
公女様、デートなんて誰に入れ知恵されたの?
週末。
私の気持ちとは関係なく、とてもいい天気だった。
馬に乗るので、動きやすい乗馬服をメイド達は用意してくれていた。髪は邪魔にならないように、ハーフアップにしてスッキリとまとめてくれる。
さすが、クラーク侯爵家のメイド達。
「お嬢様。帰りは少しくらい遅くなっても、大丈夫ですわ。」
「大公様と2人きりで楽しんで下さいませ。」
この子達は!
「私はいいから、貴女達こそ、いい人ができたらすぐに知らせなさいね。」
時間ピッタリに大公様は迎えに来てくれた。黒くて大きな、軍馬みたいな立派な馬に乗って来た大公様は、普通にカッコよかった。
護衛もいる。何となくホッとする私。
「ソフィア、行こうか!」
大公様に馬に乗せられる私。……恥ずかしいな。
20分くらい走ってやって来たのは、森と湖のある静かな場所だった。いつも海ばかり見ていたから、偶には静かな森も新鮮で良いのかもね。
護衛は気を遣って、少し離れた場所にいるようだ。
湖の畔にシートを敷き、お弁当を食べて、のんびりとおしゃべりをする。
「ソフィア。何だか雲行きが怪しいから、そろそろ帰ろうか。」
「そうですわね。」
確かに、少し雲で暗くなってきた気がする。
馬を走らせている途中、パラパラと雨が降り出した。遠くからはゴロゴロと雷の音もする。
「ソフィア!うちのホテルが近いから、雨宿りしよう!」
「はい。」
あの高級リゾートホテルに雨宿りにきた私達。すぐに、スイートルームに案内され、温かいお茶を出してもらう。
「ソフィア。濡れた髪の君も美しいな……。」
そんなことを言われても、何と返事してよいのか分からない。そこまでの恋愛経験はないからね。
「お恥ずかしいですわ。」
何となく気まずい私は、大公様の目を見ることが出来なかった。
「失礼致します。お着替えとタオルをお持ちしました。」
「…ああ。後は私がやるから、みんな下がってくれ。」
えっ?どう言うこと。メイドさん達があれ?って顔している。
「下がってくれと言っている。」
「「失礼しました!」」
もしかして、この広い部屋に2人きり?
「ソフィア、私が髪を拭いてやろう。」
そ、それは、ダメなんじゃ。
「大公様にそこまでして頂くのは、恐れ多いですわ。」
「気にするな。私はソフィアには何でもしてやりたいと思ってしまうのだ。」
「自分でやりますので、大丈夫ですわ。」
家族でも恋人でもない人に、そこまでやってもらうのは危険だ。
「私がやりたいのだ。…こんな気持ちは初めてだな。アンリの母である妻とは、物心つく前から決まっていた政略結婚だから、特別に何かを思うことはなかった。結婚なんてそんなものだと思ったし、付き合いは長かったから情はそれなりにあったが…。」
大公様の目が……。
やばい!私の心の非常ベルが鳴り出した。
「でも、ソフィアのことは何でも知りたいし、側に置いておきたい。誰にも取られたくないと思ってしまう。アンリばかり見てないで、私のことも見て欲しいとまで思ってしまうのだ。」
大公様が私の所に…。どうしよう!
「私はソフィアを愛している。」
その言葉を言われた直後、私は大公様の腕の中にいた。
「大公様、困ります…。」
「ソフィア、許せ。もう止められない…。」
強引に抱き抱えられた私は、そのままベッドルームに連れて行かれた。
「ソフィア、今度の週末なんだが、遠乗りに出かけないか?」
有難いが…。
「大公様。私は馬術は出来ませんので、どなたか別の方を誘って差し上げて下さいませ。」
「私はソフィアと行きたいから、君を誘っているのだ。私の馬に乗せるから大丈夫だ。当日迎えに行くから待っていてくれ。」
最近、ハッキリ言うようになってきた大公様。友人として、慣れてきたってことかな。
しかし。2人で一緒に馬に乗るの?しかも、すでに行くって決定なのね。
「ソフィア。お父様とデートなんでしょ。楽しんで来てね。」
公女様、デートなんて誰に入れ知恵されたの?
週末。
私の気持ちとは関係なく、とてもいい天気だった。
馬に乗るので、動きやすい乗馬服をメイド達は用意してくれていた。髪は邪魔にならないように、ハーフアップにしてスッキリとまとめてくれる。
さすが、クラーク侯爵家のメイド達。
「お嬢様。帰りは少しくらい遅くなっても、大丈夫ですわ。」
「大公様と2人きりで楽しんで下さいませ。」
この子達は!
「私はいいから、貴女達こそ、いい人ができたらすぐに知らせなさいね。」
時間ピッタリに大公様は迎えに来てくれた。黒くて大きな、軍馬みたいな立派な馬に乗って来た大公様は、普通にカッコよかった。
護衛もいる。何となくホッとする私。
「ソフィア、行こうか!」
大公様に馬に乗せられる私。……恥ずかしいな。
20分くらい走ってやって来たのは、森と湖のある静かな場所だった。いつも海ばかり見ていたから、偶には静かな森も新鮮で良いのかもね。
護衛は気を遣って、少し離れた場所にいるようだ。
湖の畔にシートを敷き、お弁当を食べて、のんびりとおしゃべりをする。
「ソフィア。何だか雲行きが怪しいから、そろそろ帰ろうか。」
「そうですわね。」
確かに、少し雲で暗くなってきた気がする。
馬を走らせている途中、パラパラと雨が降り出した。遠くからはゴロゴロと雷の音もする。
「ソフィア!うちのホテルが近いから、雨宿りしよう!」
「はい。」
あの高級リゾートホテルに雨宿りにきた私達。すぐに、スイートルームに案内され、温かいお茶を出してもらう。
「ソフィア。濡れた髪の君も美しいな……。」
そんなことを言われても、何と返事してよいのか分からない。そこまでの恋愛経験はないからね。
「お恥ずかしいですわ。」
何となく気まずい私は、大公様の目を見ることが出来なかった。
「失礼致します。お着替えとタオルをお持ちしました。」
「…ああ。後は私がやるから、みんな下がってくれ。」
えっ?どう言うこと。メイドさん達があれ?って顔している。
「下がってくれと言っている。」
「「失礼しました!」」
もしかして、この広い部屋に2人きり?
「ソフィア、私が髪を拭いてやろう。」
そ、それは、ダメなんじゃ。
「大公様にそこまでして頂くのは、恐れ多いですわ。」
「気にするな。私はソフィアには何でもしてやりたいと思ってしまうのだ。」
「自分でやりますので、大丈夫ですわ。」
家族でも恋人でもない人に、そこまでやってもらうのは危険だ。
「私がやりたいのだ。…こんな気持ちは初めてだな。アンリの母である妻とは、物心つく前から決まっていた政略結婚だから、特別に何かを思うことはなかった。結婚なんてそんなものだと思ったし、付き合いは長かったから情はそれなりにあったが…。」
大公様の目が……。
やばい!私の心の非常ベルが鳴り出した。
「でも、ソフィアのことは何でも知りたいし、側に置いておきたい。誰にも取られたくないと思ってしまう。アンリばかり見てないで、私のことも見て欲しいとまで思ってしまうのだ。」
大公様が私の所に…。どうしよう!
「私はソフィアを愛している。」
その言葉を言われた直後、私は大公様の腕の中にいた。
「大公様、困ります…。」
「ソフィア、許せ。もう止められない…。」
強引に抱き抱えられた私は、そのままベッドルームに連れて行かれた。
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