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閑話 キャンベル公爵令嬢 2

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 その日公爵家に帰ると、すぐにお父様の執務室に呼び出される。
 執務室にいるお父様は、機嫌が悪いのがすぐに分かった。

「リサ!先程、王太子殿下から私宛に手紙が届いた。手紙には、王族に対するマナーが出来ていない、このまま態度を改めないようならば、婚約者であり続けるのは難しくなると書いてある。…何をしたのだ?」

「私の第二王子に対する態度が良くないということでしょう。お叱りを受けてきました。」

 お父様はいつもは私に優しいのだが、珍しく厳しい表情をしていた。

「リサ。この婚約の意味は解るな?うちだけの問題ではないのだよ。貴族派の総意でもある。よく考えて行動するように。」

「…はい。」



 しかし王太子殿下との関係改善は難しく、今更、第二王子殿下と仲良くも出来ないまま、月日が過ぎていったのだった。
 

 そんな時、隣国と戦争が始まる。戦争には第二王子殿下が行くらしい。剣の腕がたつ、第二王子本人が強く望んだと聞いた。
 そんなことは第二王子という立場からしたら、当然のことだと思っていた。兄である王太子殿下のことを支えるのが当然のことだと。

「王太子殿下の為に、戦地では命懸けで死ぬ気で戦ってきてくださいませ。ご武運をお祈りしておりますわ。」

 戦地に旅立つ日、私は第二王子にそのような言葉を掛けたと思う。

「………。」

 第二王子は私に無言だった。
 せっかく私が声を掛けてあげたのに。

「アル!気を付けて行ってこい。必ず生きて帰って来るんだ。待ってるからな!……アレが悪いな。」

 王太子殿下は私を一瞬睨みつけていた。

「兄上、国の為に命をかけて行ってきます!兄上もどうかお元気で!」

 2人が力強く抱擁した後、第二王子殿下は旅立って行った。

 戦争は、第二王子殿下と側近のマーティン侯爵の活躍で、優位な状況だと聞いた。
 もうすぐ戦争が終わるだろうと言われ始めた頃。


 夕日がきれいな日だった。

 鐘の音が聞こえる。この時間に珍しいわ。しかも、しばらく鳴り止まない。……これは!

 お父様が慌てて登城していく。帰って来たのは、夜中だった。帰って来てすぐに呼ばれる私。

「リサ、落ち着いて聞きなさい。…王太子殿下が亡くなられた。5日熱だそうだ。」

 5日熱とは、主に男子が罹る熱病だ。罹ると高熱が続き、5日後くらいに亡くなる人が多く、無事に治ったとしても、高熱の後遺症から不妊になる可能性のある病。
 嫌われていたとはいえ、私は殿下を愛していた。だから、その言葉を冷静に聞くなんて出来なかった。
 
 ガタン!

「リサ!大丈夫か?しっかりしなさい!」

 私は気を失ってしまったようだ。



 そして。

 私は王太子殿下の国葬に来ている。お母様や弟に体を支えられながら…。

 ヒソヒソ…

「王太子殿下は、亡くなる前にミュラー伯爵令嬢をお呼びになったとか。」

「あの2人は昔から仲が良かったわね。幼馴染だとかで。」

「ミュラー伯爵令嬢を守るために、望まない婚約までしてたって有名でしたわね。」

 何の話なの?今は悲し過ぎて、噂話を理解するのも辛いのに。


 
 気付いたら、公爵家の邸に帰って来ていた。



 しばらくして。

 戦争は我が国の勝利で終わった。
 王太子殿下の喪が明けた後に、戦勝パーティーが開かれることが決まる。婚約者の殿下が亡くなったことで、私も喪に服していたので、戦勝パーティーは久しぶりの社交の場であった。
 
 その戦勝パーティーで、自分の今置かれた立場を理解することになる。

 

 
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