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久しぶり

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 お忍びで突然やって来た国王陛下を、追い返すことが出来る強者はこの国にはいないだろう。陛下は家令が応接室に通したらしい。
 そしてメイド5人が、スピーディーに私の準備をしてくれた。さすがクラーク侯爵家のメイド達は優秀だ。

「お嬢様!メイクとドレスは、儚げで、清楚で、殿方の庇護欲をそそるような雰囲気にしましたわ。今のお嬢様にピッタリです。頑張って来て下さいね!」

 何を頑張れというのか疑問もあるが、メイド達からの私へのエールらしい。クラーク侯爵家のメイド達は、何気に愛嬌があって面白い子が多いのだ。

「みんなありがとう!行ってくるわ。」

「「行ってらしゃいませ!」」

 家令が応接室のドアをノックする。

「どうぞ!」

「失礼致します。」

 応接室に入ると、陛下と護衛騎士が5人いた。圧があるわー!

「お待たせ致しました。ソフィア・クラーク、王国の太陽である国王陛下にご挨拶申し上げます。」

「ああ、そんなに畏まらなくてよいぞ。病み上がりだろうから、座って話そう。急に邪魔をして悪かったな。」

 本当に悪いよ!とは言えない。

「ご配慮、感謝いたします。」

「クラーク嬢、久しぶりだな。元気になったと聞いてな。偶々、時間があったから来てみた。」

 相変わらず、気さくに話してくれる。

「父も母も不在の日に、偶々いらして下さったのですね。色々とご心配をお掛けしてしまい、大変申し訳ありませんでした。」

「くっくっ。侯爵と夫人がいない日に偶々来てしまったようだ。クラーク嬢が、相変わらず面白い令嬢でいてくれて安心したぞ。」

「それは良かったですわ。」

「クラーク嬢は、イーサンとは会ったのか?」

 うわー!ストレートに聞くなぁ。

「いえ。婚約は解消されましたので、もう会わないと思います。」

「…はっきり言うのだな。」

「陛下が、真っ直ぐに聞いてきましたので、私もはっきりと答えただけですわ。」

「そうか。なら、今度は私と婚約するか?」

 何言ってんだ、この陛下は!

 あれ…?何だ?この殺気は?陛下じゃないよね。陛下の背後に立つ護衛騎士か?
 私が馴れ馴れしく話しているから、無礼だって怒っているとか?

「……!冗談だ。悪いな。久しぶりに会えたのが嬉しくてな。」

「ええ。分かっております。私はこの先、結婚は出来ないのは理解していますから。」

「なぜそう思う?」

「あの毒の後遺症が気になるからですわ。この先、また体調を崩すかもしれませんし、子供も産めるか分かりませんから。」

「そこまで考えていたのか。キャンベル公爵家が消え、クラーク嬢が目覚めて良かったということだけではなかったのだな。」

「もう平気ですわ。大丈夫です。」

「…………。」

「……。」

 あれっ?陛下の護衛騎士の1人が…
 
 私が陛下の背後を気にしていることに気付いた陛下も、背後を振り返る。

「…クラーク嬢、すまないな。この護衛騎士は涙脆いようで、何かあるといつもこうなんだ。剣の腕はいいのだが。」

 なるほど。よくおじさんとかで涙脆い人いるよね。この騎士様は、まだ20代くらいで若いのに涙脆いのかー。私の話を耳にして同情でもした?優しい人なのかな?

「ふふっ。お優しいお方なのでしょうね。良かったらお使い下さいませ。」

 心優しい?護衛騎士様にハンカチを渡す私。騎士様は無言で頭を下げて、ハンカチを受け取ってくれた。

 その後は楽しい世間話をして、陛下は帰って行った。

 急に来られたのは迷惑だが、陛下は普通に話しやすい人だから助かった。

 


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