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ハズレのワイン

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 怒りを顔には出さないが、目が怖いキャンベル公爵令嬢。

「そう…。幸せで何よりですわ。いつまで続くか分かりませんが。」

 そのタイミングで、給仕が飲み物を運んでくる。

「喉が渇いたわね。」

 トレイの上にグラスワインが2つ。このワイン…なんか怪しくない?このタイミングで!
 公爵令嬢は、私がグラスワインを取るのを待ってるようだ。

「では、いただきますわ。」

 直感的に手前のグラスではなく、奥のワイングラスを手に取る。給仕の表情が…!
 やっぱり、手前のグラスに何か入れたのね。ムカつく。こっちは平気だよね?グイッとワインを飲む私。

「うっ……。ううっ……」

 パリンとグラスが割れる音。グラスを落としてしまったようだ。苦しい!こっちが毒入りだったの?

「…ソフィア嬢!おい!その給仕と、キャンベル公爵令嬢を捕らえろ!医師を呼んでくれ!」

 苦しくて倒れた私。意識が朦朧とする中で、駆けつけてくれた男性は……。







 フッと目覚めると、知らない部屋にいた。

「ソフィー。目覚めたのね…。うっ、うっ…。良かった…。」

 私の手を握って泣いているのは、お母様だった。

「お、お母様…?」

「ソフィー、喉が渇いてない?」

 喉がカラカラで喋りにくい私は、黙って頷く。お母様が私の体を起こして、レモン水を飲ませてくれた。

「お母様、ここはどこですか?」

「ソフィーの部屋よ。クラーク侯爵家といえば分かるかしら。」

「実家ですか。」

「ソフィーが毒で倒れて、しばらくは王宮の中で治療を受けていたのだけど、なかなか目覚めないから、無理を言って連れて帰って来たの。」

「毒ですか?」

「キャンベル公爵令嬢が自作自演で飲もうとした毒よ。ソフィーを犯人にしようと、給仕などを買収していたようだけど、ソフィーが飲んでしまって、計画が崩れちゃったみたい。」

 アタリと言うべきなのか、ハズレと言うべきなのか…。分からないなぁ。

「心配をおかけして、申し訳ありませんでした。」

「もう!ソフィーったら、お酒が好きだからって、一気に飲んでグラスを空にしちゃダメよ。」

 うっ。酒好きがバレたか。

「あの女は一口飲んで、倒れる計画だったらしいの。一口飲むくらいなら、大したことない毒だったらしいから。でも流石にグラス一杯分はねぇ。ソフィーは生死を彷徨ったのよー。でも、今のソフィーは魔力が強いから、何とか助かったみたいね。でも目覚めるのはいつになるか分からないって言われてね…。」

「お母様、本当にごめんなさい。」

「生きていてくれたからいいのよ。実はね、ロンもエドワーズ公爵も、あの女が毒を使ってソフィーを陥れようとしていることに、気付いていたみたいなの。それで、あの女がワインを飲む直前に拘束させようと計画をしていたみたいなんだけど、そのワインをソフィーが飲んじゃったでしょ?」

「…私は余計な動きをしてしまったようですね。皆様になんて詫びればよいのか。」

 なんて恥ずかしい!

「ソフィーは悪くないわ!悪いのはあの2人よ!始めから、そのことをソフィーに説明していれば良かったの。2人はあの女を泳がす為に、ソフィーの側をワザと離れたみたいだし。もっと別なやり方は沢山あったはずなのよ!」

 うっ、うっ。強くて優しいお母様が私は大好きです。

「でもね、陛下はソフィーに感謝していたわ。」

「えっ?陛下が何故ですか?」

「殺人未遂でキャンベル公爵令嬢は国外追放されたし、キャンベル公爵家は取り潰しになったの。陛下はキャンベル公爵家が大嫌いだったでしょ。」

 陛下、腹黒だわー!

「ふふっ。クラーク侯爵家の敵が消えたから、これからは平和に暮らせるわよ。」

「…陛下のお役に立てたのですね。」

「それでね、ソフィー。落ち着いて聞いて欲しいのだけど…。」

「はい。どうしましたか?」

「ソフィーは、いつ目覚めるのか分からないって言われて、1年近く眠っていたの…。妊娠もしてなかったし、今は貴族令嬢に純潔は求められないからね。だから、貴女とエドワーズ公爵の婚約は解消されたわ。」

 ええー!!



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