記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ

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悪役令嬢?

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 イーサン様とのダンスは、とにかく踊りやすかった。イーサン様がダンスが上手なんだろうね。私の方は、ソフィアさんの体がダンスを覚えているようで、何とかなったから安心した。イーサン様とは2曲続けて踊る。
 ふぅ。もう、ダンスはいいよね。イーサン様に手を引かれて行こうとした時だった。

「クラーク侯爵令嬢、私とも踊ってもらえないか?」

 この声は!えー、嫌なんだけど。

「断る!なんで私のソフィーが陛下と踊らなければならないのだ!」

「イーサン、怒るなよ!母上が誰かと必ずダンスしろって煩いのだ。ヘタに令嬢を誘ったら、何を勘違いされるか分からないだろう?クラーク侯爵令嬢なら、従兄弟の婚約者と交流しているだけだって言えるだろ。クラーク侯爵令嬢、頼む!」

「……はい。私でよければ。」

「ありがとう。助かる!イーサン、悪いな!」

「ソフィー。1曲だけ踊ったら、すぐに私の所に戻って来なさい。」

 うっ。イーサン様の笑顔が怖い。

「…はい。」

 曲が始まる。さすが我が国で1番高貴な陛下だ。このお方も、ダンスが上手で安定している。

「クラーク侯爵令嬢。キャンベル公爵令嬢に気を付けろ。きっと、君に接触してくるだろう。あの女は危険だ。」

 胡散くさい笑顔で、物騒なことを口にする陛下。キャンベル公爵家は、確かお母様の手紙にも書いてあったな。貴族派の筆頭だったよね?
 周りにヤバい話をしているとバレないように、笑顔で、あまり口を動かさないようにして話さないとね。

「母からも気をつけるように言われて来ましたわ。そのお方は、何が危険なのでしょうか?」

「アレは、私の亡くなった兄の婚約者だった。家の力で婚約者になったようなものだから、兄は全く愛してなかったようだがな。」

「陛下にはお兄様がいらっしゃったのですか?」

「ああ。割と仲のいい兄弟だった。私が戦地にいる間に、兄が急病で亡くなり、私が戦地から戻った後に、急遽、王位を継ぐことになったのだ。」

「そう言う事情があったのですね。」

「跡取りでなかった私には、婚約者はいなかったのだがな。まあ、第二王子だった私にあの女は、兄である王太子殿下の為に、死ぬつもりで戦って来いだとか、立場を弁えろとか、散々な態度を取ってくれたよ。兄が王位を継いだ後に、王弟になる私を牽制していたのだろうな。」

「知りませんでした…。陛下も色々と苦労されているのですね。」

「そう思うだろ?第二王子なんて、そんなものだ。兄が亡くなったことで、あの女やキャンベル公爵家の計画は全て水の泡になった。あんな態度をとり続けた私に、今更、擦り寄ることも出来ないし、他の貴族令息は格下なのを馬鹿にしていたし、戦争で亡くなった令息も沢山いる。…つまり、あの女が理想的に嫁ぐことが出来るような家門が非常に少ないので、未だに婚約者もいない状態なのだ。」

「売れ残りそうなのですね。」

「くっ、くっ。見た目によらず、中々面白いことを言うのだな。まぁ、そう言うことだ。身分で言えば、君の義兄のクラーク卿とか理想かもしれないが、派閥的にないだろうし、クラーク卿はあの女に見向きもしないだろう。多分、あの女はイーサンあたりを狙っていたのではないかと思う。派閥は違うが、王族で筆頭公爵家で、年齢も釣り合うからな。それなのに、自分よりも若くて、美しくて、強力な魔力を持つ令嬢が急に現れ、イーサンは彼女を溺愛したとしたら…?」

「面白くないですわね。」

「そう言うことだ。気を付けろ。イーサンも警戒はしているだろうがな。」

「なるほど。でしたら、他国の王族で引き取ってくれそうな国はないのでしょうか?」

「ますます面白いな!考えておこう。国同士の友好の為と言って、遠くの国に嫁いでくれたら有難いな。」

 どんだけ嫌われてんだ?悪役令嬢か?でも、陛下の話を聞けたのは良かったと思う。




「ソフィー、陛下と楽しそうに話をしていたな!」

「イーサン様。陛下には色々と社会情勢を教えて頂いたのですわ。とても勉強になりました。」

「もう、他の男とは踊らなくていいからな。」

 この人は激甘だわ。……ん?視線?ふっと振り返ると、もえるような真っ赤な赤髪に黒い目の、迫力のある美女がこっちを見ていた。

 もしかして……。



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