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閑話 エドワーズ公爵 5
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ダイアナが公爵邸での生活にも慣れて来た頃。
私はダイアナへの気持ちを、態度で示すようにしていた。彼女との距離を縮めたくて、私を異性として意識して欲しくて行動するが、なかなかダイアナには伝わっていないようであった。
彼女はとにかく欲がなく、自分は平民だからと遠慮して生活しているようであった。そこが慎ましくて、彼女の魅力の一つであるのだが、私としてはもっと甘えて欲しいし、私にだけはワガママを言って欲しいとも思ってしまう。
更に、ある時からダイアナは私から離れようとしているのではと思えるような時があった。お茶や食事を一緒にすることを遠回しに断ってきたり、ここを出て外で働きたいと言ってみたり…。
そんなことは、絶対に許さない。私はダイアナを手放すつもりはないし、邪魔する者がいれば、消えてもらうくらいの気持ちでいる。結婚も恋愛も、この先の人生を全て諦めて、虚しい毎日を過ごしていた私にとって、ダイアナは希望であり、私の人生の全てなのだから。
まさか私に、ここまで愛する人ができるなんて。正直、自分で驚いている。しかし、この愛する人への強い執着こそ、エドワーズ公爵家の血筋なのだと思う。
仲の良い両親は、実は元々は別に婚約者がいたようだった。母は元王女だったので、幼い頃から隣国の王子に嫁ぐことが決まっていたらしい。その国と我が国とは、昔から衝突が絶えず、母は人質として嫁ぐつもりだったようだ。そして、筆頭公爵家の嫡男だった父には、その国の王女が嫁ぐ予定であったようだ。しかし、父は母のことをずっと好きで、諦められなかったようだった。
ある時、またその国と国境付近で衝突があったらしい。父は自分の父であった当時のエドワーズ公爵と、国王に取引きを持ちかけたようだった。私が隣国を滅ぼしてきますので、成功したら王女を下さいと。周りは何色を示したらしいが、説得に成功した父は、沢山の魔導師達を隣国の城に暗殺者として送り込んで、あっさりと隣国の王族や高位貴族を全て消して、国を滅亡させることに成功。そして、ずっと好きだった母を手に入れたようだった。
父も母も、エドワーズ公爵家の強い執着心を知っているからこそ、私がダイアナを欲しがっても反対しなかったのだろう。
両親も認めてくれているし、ダイアナは公爵邸での生活にも慣れたと思われるから、そろそろ私の気持ちを伝えて、正式に婚約したいと伝えようと考えていた時だった。従兄弟でもある国王陛下より、登城するようにと知らせが届く。
国王の印の押された、正式な手紙での登城の命令とは珍しいと思いながら、陛下の執務室へ向かうと、そこには陛下の他に、マーティン将軍とクラーク卿がいた。…珍しい組み合わせだ。
話を聞くと、ある令嬢を探していると言う。それを言われてピンときた。…ダイアナのことだな。
クラーク卿の義妹だという姿絵を見せられると、今よりは少し幼いが、ダイアナそっくりの少女であった。どこかの高位貴族の令嬢だとは思っていたが、まさか名門クラーク侯爵家だとは。でも、クラーク侯爵家なら派閥的にも、縁談には何の問題もない。
しかし、マーティン将軍と白い結婚とは。話を聞くと、随分と不幸な扱いをされていたようだ。命を狙われ、記憶を失くした後に、白い結婚を受理されて、姿を消していたとは…。
彼女は私が幸せにしたい。マーティン将軍はまだ彼女を諦めてないようだし、彼女の義兄も彼女を妹とは思ってないようだ。これは早く縁談を進めた方がいいな。陛下は、私が彼女を愛していると聞いて驚いていたが、別に関係ない。
ダイアナこと、ソフィア嬢に直接会って無事を確かめたいと言う2人に、翌日、エドワーズ公爵邸に来てもらう約束をし、私は城を後にして公爵邸に帰ることにした。
ソフィア嬢に、家族や将軍が会いたがっていると伝えなければいけないな。正直、あまり会わせたくない気持ちもあるが、これだけはしょうがない。特に彼女の実家のクラーク侯爵家には認めてもらわなければならないのだから。
ああ、早く邸に帰って彼女に会いたい。彼女に今日の疲れを癒やしてもらいたい。
そんな気持ちで、邸に帰った私であったが。私を待っていたのは、顔色を悪くした家令と、泣きそうなメイド長だった。
「旦那様、大変でございます!ダイアナ様が邸を出て行かれました!」
何を言っているんだ……?
私はダイアナへの気持ちを、態度で示すようにしていた。彼女との距離を縮めたくて、私を異性として意識して欲しくて行動するが、なかなかダイアナには伝わっていないようであった。
彼女はとにかく欲がなく、自分は平民だからと遠慮して生活しているようであった。そこが慎ましくて、彼女の魅力の一つであるのだが、私としてはもっと甘えて欲しいし、私にだけはワガママを言って欲しいとも思ってしまう。
更に、ある時からダイアナは私から離れようとしているのではと思えるような時があった。お茶や食事を一緒にすることを遠回しに断ってきたり、ここを出て外で働きたいと言ってみたり…。
そんなことは、絶対に許さない。私はダイアナを手放すつもりはないし、邪魔する者がいれば、消えてもらうくらいの気持ちでいる。結婚も恋愛も、この先の人生を全て諦めて、虚しい毎日を過ごしていた私にとって、ダイアナは希望であり、私の人生の全てなのだから。
まさか私に、ここまで愛する人ができるなんて。正直、自分で驚いている。しかし、この愛する人への強い執着こそ、エドワーズ公爵家の血筋なのだと思う。
仲の良い両親は、実は元々は別に婚約者がいたようだった。母は元王女だったので、幼い頃から隣国の王子に嫁ぐことが決まっていたらしい。その国と我が国とは、昔から衝突が絶えず、母は人質として嫁ぐつもりだったようだ。そして、筆頭公爵家の嫡男だった父には、その国の王女が嫁ぐ予定であったようだ。しかし、父は母のことをずっと好きで、諦められなかったようだった。
ある時、またその国と国境付近で衝突があったらしい。父は自分の父であった当時のエドワーズ公爵と、国王に取引きを持ちかけたようだった。私が隣国を滅ぼしてきますので、成功したら王女を下さいと。周りは何色を示したらしいが、説得に成功した父は、沢山の魔導師達を隣国の城に暗殺者として送り込んで、あっさりと隣国の王族や高位貴族を全て消して、国を滅亡させることに成功。そして、ずっと好きだった母を手に入れたようだった。
父も母も、エドワーズ公爵家の強い執着心を知っているからこそ、私がダイアナを欲しがっても反対しなかったのだろう。
両親も認めてくれているし、ダイアナは公爵邸での生活にも慣れたと思われるから、そろそろ私の気持ちを伝えて、正式に婚約したいと伝えようと考えていた時だった。従兄弟でもある国王陛下より、登城するようにと知らせが届く。
国王の印の押された、正式な手紙での登城の命令とは珍しいと思いながら、陛下の執務室へ向かうと、そこには陛下の他に、マーティン将軍とクラーク卿がいた。…珍しい組み合わせだ。
話を聞くと、ある令嬢を探していると言う。それを言われてピンときた。…ダイアナのことだな。
クラーク卿の義妹だという姿絵を見せられると、今よりは少し幼いが、ダイアナそっくりの少女であった。どこかの高位貴族の令嬢だとは思っていたが、まさか名門クラーク侯爵家だとは。でも、クラーク侯爵家なら派閥的にも、縁談には何の問題もない。
しかし、マーティン将軍と白い結婚とは。話を聞くと、随分と不幸な扱いをされていたようだ。命を狙われ、記憶を失くした後に、白い結婚を受理されて、姿を消していたとは…。
彼女は私が幸せにしたい。マーティン将軍はまだ彼女を諦めてないようだし、彼女の義兄も彼女を妹とは思ってないようだ。これは早く縁談を進めた方がいいな。陛下は、私が彼女を愛していると聞いて驚いていたが、別に関係ない。
ダイアナこと、ソフィア嬢に直接会って無事を確かめたいと言う2人に、翌日、エドワーズ公爵邸に来てもらう約束をし、私は城を後にして公爵邸に帰ることにした。
ソフィア嬢に、家族や将軍が会いたがっていると伝えなければいけないな。正直、あまり会わせたくない気持ちもあるが、これだけはしょうがない。特に彼女の実家のクラーク侯爵家には認めてもらわなければならないのだから。
ああ、早く邸に帰って彼女に会いたい。彼女に今日の疲れを癒やしてもらいたい。
そんな気持ちで、邸に帰った私であったが。私を待っていたのは、顔色を悪くした家令と、泣きそうなメイド長だった。
「旦那様、大変でございます!ダイアナ様が邸を出て行かれました!」
何を言っているんだ……?
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