上 下
41 / 133

閑話 エドワーズ公爵 4

しおりを挟む
 ダイアナの命を狙った、エマ・ヒューズを鉱山送りにしたということをレイモンドに事後報告する。

 レイモンドは、エマ・ヒューズを消してくれて嬉しいと言いつつ、そこまでする程ダイアナが好きなら、早く囲った方がいいだろうと言う。今回は大したことのない子爵家だから良かったけど、高位の貴族令息や令嬢と何かあったら、今回のように簡単には片付けられないだろうと。
 ダイアナの事が騎士達の間でかなり有名になりつつあり、またエマ・ヒューズみたいな令嬢が絡んでくる可能性もあるからとも言われる。

 その事は私も考えていた。しかし、ただ囲っただけだと愛人と思われてしまう。大切なダイアナを愛人だなんて言われたくない。
 そう思った私は、領地の両親に手紙を書くことにした。私の腕を治してくれたダイアナのことが好きで、結婚したいと思っていること。訳ありの元貴族令嬢で見た目だけでなく、所作やマナー、性格まで素晴らしい女性だということ。美しい彼女を狙う貴族が多く、危険なので、すぐに保護したいことを書いておく。

 両親からの返信の手紙は、早馬ですぐに届けられた。正直、早すぎて驚いたが…。
 手紙には、ダイアナをすぐに公爵家で保護するようにと書いてあった。私の腕を治せるくらい、凄い治癒魔法を使いこなせる女性なら、分家に養子に入ってもらってから婚約すればいいと。私の命を助けてくれた人なのだから歓迎したい。恋愛や結婚を諦めていた私から、こんな報告が聞けて嬉しいとまで書いてあった。

 両親が理解してくれたことを知った私は、すぐにダイアナと店の女将や店主に、ダイアナが店にいるのは危険だから後見人になって守りたいと伝える。店主も女将もすぐに頷いてくれたから良かった。ダイアナはあまり乗り気には見えなかったが、ダイアナの親代わりから了承を得ているから、強引に話を進める。
 公爵家で大切にして、甘やかして過ごせばダイアナもそのうち分かってくれる日が来るだろう。

 ダイアナを迎える準備を急いで行う。部屋はメイド長達に、令嬢が過ごしやすい部屋に模様替えをするように頼むと、みんな喜んでやってくれた。ドレスやアクセサリーは直ぐに邸に業者を呼び、ダイアナを思いながら一つ一つ私が選ぶ。さり気なく、私の目の色の物を選んだことは秘密だ。
 大切な人の為にプレゼントを選ぶのは、こんなに楽しいことなのだな…。

 ダイアナをお忍び用の馬車で迎えに行くと、ダイアナは公爵邸に住むとは思っていなかったようで驚いていた。これからはずっとここに住む予定なのだから、早く慣れて欲しいと思う。
 しかし、ダイアナは公爵邸で住み込みで働くつもりだったようだ。働き者のダイアナらしいとは思うが、使用人には絶対にしない。私に囲われて、だんだん私無しではいられなくしてやるつもりでいるのだから。

 メイド達に磨かれたダイアナは、とにかく美しかった。…ああ、早く自分の思いを伝えたい。でも、まだ新しい生活を始めるダイアナに負担には思われたくない。気持ちを伝えるのはもう少し待とう。
 この時の判断を後で後悔することになるとは…。

 家令とメイド長、ダイアナの専属メイドと、私の最側近にだけは事情を話しておいた。いずれは結婚したいことや、両親にも許可を取ってあることも。幼馴染や兄弟のような、付き合いの長い家令とメイド長はとにかく喜んでくれた。魔物の呪いで人生を悲観していた私をよく知る2人は、呪いを解いてくれたダイアナを好意的に受け止めてくれたようだった。
 また、物欲が無く、メイドや使用人にも親切に接するダイアナは、すぐに邸の使用人達から好かれるようになる。一部の者たちを除いては。

 公爵邸の使用人ともなると、実家が爵位持ちという者が多い。そんな者達の中には、身分がハッキリしないダイアナを下に見て、よく思わない者もいるのは知っていた。
 しかし、ダイアナの周りにはメイド長を筆頭に、ダイアナを好意的に見てくれる者だけを配置して様子を見ることにしていたのだ。邸の主人である私が大切にする人に対して、雇われた者達はどうすべきなのか。例えダイアナをよく思わなかったとしても、どうあるべきなのか、考えれば分かることだろうと。

 しかし、その考えが甘かったことに、後日気がつく事になる。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される

鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。 レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。 社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。 そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。 レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。 R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。 ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。

もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ

中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。 ※ 作品 「男装バレてイケメンに~」 「灼熱の砂丘」 「イケメンはずんどうぽっちゃり…」 こちらの作品を先にお読みください。 各、作品のファン様へ。 こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。 故に、本作品のイメージが崩れた!とか。 あのキャラにこんなことさせないで!とか。 その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)

【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!

Bu-cha
恋愛
ずっと好きだった初恋の相手、社長の弱みを握る為に頑張ります!!にゃんっ♥ 財閥の分家の家に代々遣える“秘書”という立場の“家”に生まれた加藤望。 ”秘書“としての適正がない”ダメ秘書“の望が12月25日の朝、愛している人から連れてこられた場所は初恋の男の人の家だった。 財閥の本家の長男からの指示、”星野青(じょう)の弱みを握ってくる“という仕事。 財閥が青さんの会社を吸収する為に私を任命した・・・!! 青さんの弱みを握る為、“ダメ秘書”は今日から頑張ります!! 関連物語 『お嬢様は“いけないコト”がしたい』 『“純”の純愛ではない“愛”の鍵』連載中 『雪の上に犬と猿。たまに男と女。』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高11位 『好き好き大好きの嘘』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高36位 『約束したでしょ?忘れちゃった?』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高30位 ※表紙イラスト Bu-cha作

【完結】婚約破棄されました。修道院に入ることにしました、何故か元婚約者が追いかけてきました?

みちこ
恋愛
ずっと好きだった、レオンに婚約破棄されてしまったリオナ、修道院に入るけどレオンが修道院まで追いかけてくる、その理由は?

【R18】両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が性魔法の自習をする話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 「両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が初めてのエッチをする話」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/575414884/episode/3378453 の続きです。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

【R18】飢えた国王は寵妃を手離さない

ニャン太郎
恋愛
ある王国に、一人の少女を愛して止まない国王がいた。 国王は、少女を片時も手離さず、ひたすらに寵愛する日々。 しかし、少女はこの国の住民ではなかった…

えっ、私生まれ変わりました?

☆n
恋愛
気づいたら、生まれ変わっていたみたいです。 生まれ変わった私は、前世と同じ名前でした。周りにも前世と同じ名前の人達が何人かいるようです。 今世の私は、あの人と幸せになれますか?私が生まれた国は前世と似てるのに、精霊に獣族・エルフ族って!? *感想やコメント、誤字の指摘などありがとうございます。

処理中です...