30 / 133
転職
しおりを挟む
私は今、教会に来ている。
馬車で駅まで送ってもらったら、あのアンナさんを紹介してくれた教会の近くの駅だったのだ。ラッキー!困ったら訪ねて来てって、あのシスターが言ってたよね。遠慮なくお世話になろう。
図々しく生きることに決めた私。
シスターは、突然私が来たので驚いていたが、優しく迎えてくれた。
事情を話して公爵家を出てきたことを話すと、一瞬、殺気が漂ったように怖かった気がしたが、見なかったことにしよう。そして、治癒魔法が使えるならと、神殿所属の治療院を勧めてくれた。神殿所属なら、貴族でも下手なことは出来ないらしいし、治療師なら給与が高いから、生活するのにいいだろうと。
そして、このままここにいると、公爵様が探しに来るかもしれないからと、紹介状を書いてくれた後、裏口からすぐに馬車に乗せて出発させてくれた。本当はアンナさん家に顔を出したいけど、今日は危険かもしれないから、また今度にしよう。
馬車で隣町の教会に行き、一泊した後、隣町から列車に乗って神殿まで向かうことになる。一応、フード着きマントを着用した方がいいよね。
隣町の教会のシスターも親切にしてくれ、神殿の最寄り駅や、駅から神殿までの道を丁寧に教えてくれたので、スムーズに行く事が出来た。
シスター達には落ち着いたら、手紙や寄付金を送ろう。困った女性の駆け込み寺みたいな感じで、私みたいな家なき子に親切にしてくれるから、本当にありがたいよね。
神殿の最寄り駅はとても賑わっていて、大きな街のようだった。巡礼者が沢山来るらしいから、店も宿も沢山あって、活気のある街のようだ。休みの日は、楽しく街歩き出来そう。スリに気をつけないとね!
神殿では、シスターからの紹介状があったからか、すんなりと採用してくれることになる。やったー!
しばらくは見習い治療師として、先輩に指導してもらいながら働くらしい。
ここでの生活に慣れるまでは、寮に住まわせてもらうことになった。
そして、今日から治療師として働く私。この治療師の制服が今の私にピッタリだった。神殿所属らしく、頭にはベールをかぶるのだが、ベールは顔も覆っている。前が見えるように顔の方は薄い布だが。私の特徴的な髪と瞳を隠してくれる、素晴らしいベールだと思う。全身白の、いかにも神殿って感じの制服だった。
私を指導してくれるのは、アマリアさんというキツめ美人のお姉さんだった。綺麗なブロンドの髪に青い瞳で、パッと見て、この人も貴族出身に見える容姿だった。
「アマリアよ。よろしくね!貴女も訳あり令嬢かしら?慣れるまでは大変だろうけど、そこまで悪い人はいないから、何とかなると思うわ。」
この人も訳あり令嬢なのか?割とハッキリした性格なのかな?
「ダイアナと申します。訳あり元令嬢です。よろしくお願いします。」
「…正直でよろしいわ!じゃあ、仕事場に行くわよ。」
アマリアさんはそう言うと、手に持っていたベールをぐいっと頭にかぶせて歩き出す。男前な姉さんらしい。
「はい。ご指導よろしくお願いします!」
治療はそれぞれ個室で行うらしく、ドアの所には神殿所属の聖騎士が警備で立っていてくれる。患者さんから治療に文句をつけられたり、貴族が脅してきたりだとか、問題があるとすぐに駆けつけてくれるらしい。だから、割と安心して働けると言っていた。
個室に案内されて来た患者さんに、症状を聞いて治癒魔法をかけていく。アマリアさんは、さすが新人教育を任されるだけあって、早くて正確にこなしていた。しかも治癒魔法は高額なだけあって、患者さんは裕福そうな方ばかり。チップを置いていく、羽振りのいい人も珍しくなかった。
「チップは自分で頂いていいことになっているの。治癒魔法使いは貴重だから、待遇がいいのよ。ただ、お金の管理に気を付けなさい。治療師は小金を持っているのはみんな知っているからね。銀行に預けた方がいいわね。寮の部屋の鍵は、忘れずに閉めるのよ!」
銀行あるのか!列車といい、銀行といい、少し昔のヨーロッパみたいなところがある世界ね。
割と面倒見のよいお姉さんが先輩で良かったわ。
馬車で駅まで送ってもらったら、あのアンナさんを紹介してくれた教会の近くの駅だったのだ。ラッキー!困ったら訪ねて来てって、あのシスターが言ってたよね。遠慮なくお世話になろう。
図々しく生きることに決めた私。
シスターは、突然私が来たので驚いていたが、優しく迎えてくれた。
事情を話して公爵家を出てきたことを話すと、一瞬、殺気が漂ったように怖かった気がしたが、見なかったことにしよう。そして、治癒魔法が使えるならと、神殿所属の治療院を勧めてくれた。神殿所属なら、貴族でも下手なことは出来ないらしいし、治療師なら給与が高いから、生活するのにいいだろうと。
そして、このままここにいると、公爵様が探しに来るかもしれないからと、紹介状を書いてくれた後、裏口からすぐに馬車に乗せて出発させてくれた。本当はアンナさん家に顔を出したいけど、今日は危険かもしれないから、また今度にしよう。
馬車で隣町の教会に行き、一泊した後、隣町から列車に乗って神殿まで向かうことになる。一応、フード着きマントを着用した方がいいよね。
隣町の教会のシスターも親切にしてくれ、神殿の最寄り駅や、駅から神殿までの道を丁寧に教えてくれたので、スムーズに行く事が出来た。
シスター達には落ち着いたら、手紙や寄付金を送ろう。困った女性の駆け込み寺みたいな感じで、私みたいな家なき子に親切にしてくれるから、本当にありがたいよね。
神殿の最寄り駅はとても賑わっていて、大きな街のようだった。巡礼者が沢山来るらしいから、店も宿も沢山あって、活気のある街のようだ。休みの日は、楽しく街歩き出来そう。スリに気をつけないとね!
神殿では、シスターからの紹介状があったからか、すんなりと採用してくれることになる。やったー!
しばらくは見習い治療師として、先輩に指導してもらいながら働くらしい。
ここでの生活に慣れるまでは、寮に住まわせてもらうことになった。
そして、今日から治療師として働く私。この治療師の制服が今の私にピッタリだった。神殿所属らしく、頭にはベールをかぶるのだが、ベールは顔も覆っている。前が見えるように顔の方は薄い布だが。私の特徴的な髪と瞳を隠してくれる、素晴らしいベールだと思う。全身白の、いかにも神殿って感じの制服だった。
私を指導してくれるのは、アマリアさんというキツめ美人のお姉さんだった。綺麗なブロンドの髪に青い瞳で、パッと見て、この人も貴族出身に見える容姿だった。
「アマリアよ。よろしくね!貴女も訳あり令嬢かしら?慣れるまでは大変だろうけど、そこまで悪い人はいないから、何とかなると思うわ。」
この人も訳あり令嬢なのか?割とハッキリした性格なのかな?
「ダイアナと申します。訳あり元令嬢です。よろしくお願いします。」
「…正直でよろしいわ!じゃあ、仕事場に行くわよ。」
アマリアさんはそう言うと、手に持っていたベールをぐいっと頭にかぶせて歩き出す。男前な姉さんらしい。
「はい。ご指導よろしくお願いします!」
治療はそれぞれ個室で行うらしく、ドアの所には神殿所属の聖騎士が警備で立っていてくれる。患者さんから治療に文句をつけられたり、貴族が脅してきたりだとか、問題があるとすぐに駆けつけてくれるらしい。だから、割と安心して働けると言っていた。
個室に案内されて来た患者さんに、症状を聞いて治癒魔法をかけていく。アマリアさんは、さすが新人教育を任されるだけあって、早くて正確にこなしていた。しかも治癒魔法は高額なだけあって、患者さんは裕福そうな方ばかり。チップを置いていく、羽振りのいい人も珍しくなかった。
「チップは自分で頂いていいことになっているの。治癒魔法使いは貴重だから、待遇がいいのよ。ただ、お金の管理に気を付けなさい。治療師は小金を持っているのはみんな知っているからね。銀行に預けた方がいいわね。寮の部屋の鍵は、忘れずに閉めるのよ!」
銀行あるのか!列車といい、銀行といい、少し昔のヨーロッパみたいなところがある世界ね。
割と面倒見のよいお姉さんが先輩で良かったわ。
145
お気に入りに追加
5,896
あなたにおすすめの小説
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?
真理亜
恋愛
「アリン! 貴様! サーシャを階段から突き落としたと言うのは本当か!?」王太子である婚約者のカインからそう詰問された公爵令嬢のアリンは「えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?」とサラッと答えた。その答えにカインは呆然とするが、やがてカインの取り巻き連中の婚約者達も揃ってサーシャを糾弾し始めたことにより、サーシャの本性が暴かれるのだった。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
幼馴染みとの間に子どもをつくった夫に、離縁を言い渡されました。
ふまさ
恋愛
「シンディーのことは、恋愛対象としては見てないよ。それだけは信じてくれ」
夫のランドルは、そう言って笑った。けれどある日、ランドルの幼馴染みであるシンディーが、ランドルの子を妊娠したと知ってしまうセシリア。それを問うと、ランドルは急に激怒した。そして、離縁を言い渡されると同時に、屋敷を追い出されてしまう。
──数年後。
ランドルの一言にぷつんとキレてしまったセシリアは、殺意を宿した双眸で、ランドルにこう言いはなった。
「あなたの息の根は、わたしが止めます」
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
たとえ番でないとしても
豆狸
恋愛
「ディアナ王女、私が君を愛することはない。私の番は彼女、サギニなのだから」
「違います!」
私は叫ばずにはいられませんでした。
「その方ではありません! 竜王ニコラオス陛下の番は私です!」
──番だと叫ぶ言葉を聞いてもらえなかった花嫁の話です。
※1/4、短編→長編に変更しました。
【完結】皆様、答え合わせをいたしましょう
楽歩
恋愛
白磁のような肌にきらめく金髪、宝石のようなディープグリーンの瞳のシルヴィ・ウィレムス公爵令嬢。
きらびやかに彩られた学院の大広間で、別の女性をエスコートして現れたセドリック王太子殿下に婚約破棄を宣言された。
傍若無人なふるまい、大聖女だというのに仕事のほとんどを他の聖女に押し付け、王太子が心惹かれる男爵令嬢には嫌がらせをする。令嬢の有責で婚約破棄、国外追放、除籍…まさにその宣告が下されようとした瞬間。
「心当たりはありますが、本当にご理解いただけているか…答え合わせいたしません?」
令嬢との答え合わせに、青ざめ愕然としていく王太子、男爵令嬢、側近達など…
周りに搾取され続け、大事にされなかった令嬢の答え合わせにより、皆の終わりが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる