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プロローグ

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 ある侯爵家のタウンハウスにて。

「料理は残飯。女主人である私の宝石は紛失。掃除はされない。メイドの態度は悪い。
 これは一体誰の責任かしら?執事、答えなさい!」

 私は邸の使用人を全員跪かせ、激怒していた。

「奥様、申し訳ありません。」

「謝罪じゃなくて、誰の責任かと聞いているのです。」

 私は目の前の椅子を思いっきり蹴飛ばす。その瞬間、使用人達はビクッと驚いていた。

「答えらない?執事はここの邸の仕事はどうでもよかったのかしら?もしかして、ここのお仕事、辞めたかったとか?」

「とんでもございません。私の管理不足でございます。」

「辞めたいならどうぞ!それとメイド長!メイド達は、仕事ではなく遊びに来ているように見えました。あなたは、メイドの教育も出来ないのかしら?」

「奥様、誤解ですわ!メイド達はしっかり仕事をしておりました。」

「アレが仕事?あなた、私が世間知らずだと思って言ってる?私の部屋を今すぐ見て来ましょうか?埃だらけで掃除のされない部屋をね。それとも、あなたも辞めたかった?ここの仕事。」

「とんでもない。奥様、お言葉ですが、この邸の者は皆んな旦那様に雇われております。奥様が勝手に決められることではありません。」

「あら!だったら今すぐにその旦那様とやらを呼んで来てちょうだい。この屋敷の中をすぐに見てもらいましょうか?メイド長、あなたが直接、王宮に呼びに行ってくれるかしら?」

「旦那様は忙しくて、来られません。」

「ふふっ!メイド長、旦那様が来られないなら、ここで1番偉いのは誰なの?貴女が今ここで仕えているのは誰なのかしら?」

「……。」

「答えられないのね。話にならないわ!使えないメイドは辞めていいのだけど。」

「執事!」

「はい!」

「今すぐに、警備隊を呼んでちょうだい!私の部屋の宝石が、全部なくなっているの。侯爵夫人の宝石が無くなるなんて、おかしいでしょ。調査してもらいましょう。」

「奥様、そんなことをしたら、侯爵家の名前が…。」

「恥をかくと言いたいのかしら。別に構わないわよ。こんな家が恥をかこうと、没落しようと。あら?何か困ることでもあるのかしら?貴方よりも、警備隊は侯爵夫人の私の話を聞いてくれると思うから、ぜひ呼んで欲しいけど。」

「しかし、旦那様が…」

「旦那様とやらは、この屋敷には来ないのを知っていて言ってるのかしら?そんなに警備隊を呼んで欲しくないなら、責任を持って執事が調べなさい。罪を犯した者がいれば、執事に正直に言えば、許してあげなくもないから。でも、執事が無理だったら、警備隊を呼びます。分かった?」

「はい!すぐに調べます。」

「料理長はいる?」

「はい、ここに。」

「へぇ!貴女が残飯料理が好きな料理長ね。あなたはクビ!」

「そんな!あんまりです。私は一生懸命やってきました。」

「あら。じゃあ、次からは貴女が私の所まで直接、料理を運んで来てくれる?それが出来るなら、しばらくは様子を見てあげるわ。それと、毎日の食費の予算と、実際の材料費と、仕入れた材料は毎日私が確認します。業者が来たら私も立ち会うから、必ず呼びなさい。出来ないのなら、今すぐクビ。あなたの残飯料理を食べるくらいなら、自分で作った方が美味しいからね。まずい料理しか作れない人間は料理人とは言えないの。分かった?」

「…はい。」


 その後、メイドや使用人は私への態度が変わるのであった。

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