116 / 125
寝落ち
しおりを挟む
独身に戻った私は、学生時代の友人達と出掛けたり、お茶会をしたりと、充実した休日を過ごしていた。
そして今日は、みんなで観劇に出掛ける約束をしている日。
席の予約は友人が手配済みだから、受付に名前を言えば、席に案内してくれると言われて会場入りした私。
しかし、会場の従業員が案内してくれたのは、明らかに普通の席ではなかった。
ステージ正面の2階のこの広過ぎるスペースは、王族の席じゃないの?
「あっ、エレノア!待ってたわよ。遅いわね!」
親友のエイミーが私に気づいて話しかけてきた。
ん?女同士かと思いきや、令息もいる。あ、同じクラスだった人達だわ。
「ナイトレイ公爵様が、王族用の広い席を手配してくれたのよ。
せっかくだから、クラスのメンバーに声をかけようってなったの。」
確かに令嬢が私とエイミーを入れて4人に令息が4人いるようだ。
「エレノア。席、そこが空いているわよ。」
「ありがとう。失礼します。」
すでにみんな座っていたので、空いている席に向かう私。
「エレノア、久しぶりだな。」
席を取ってくれた本人が私の隣に座っていたようだ。
「ナイトレイ公爵様、今日はこんなに素晴らしい席を手配してくださってありがとうございます。」
「偶然空いていただけだ。」
「ふふっ。その偶然に感謝致しますわ。」
「それは良かったよ。」
観劇は、長年の付き合いであった婚約者に、別に好きな人がいることを知ってしまった主人公が、婚約者のために身を引くべきかどうかで悩む内容だったと思うのだが…。
内容をはっきり覚えていないのは、私が後半、寝落ちしてしまったから。今日のために、昨日遅くまで仕事をしていた私は、若干の寝不足だったのだ。
パチっと目覚めた時には、すでに演目は終わっていて…、あれっ?私寝ちゃってた…。
えっ?私誰かの肩に寄りかかっていた…?
「エレノア…?起きたのか?」
声が、すごーく近くから聞こえてくる。
やってしまった!!
「…も、申し訳ありません!うっかり眠ってしまった上に、公爵様の肩まで借りてしまいました。」
どうやら私は、隣りに座るナイトレイ公爵様の肩に寄りかかって眠ってしまったようで、私と公爵様以外の姿はすでに消えていた。
みんな、起こしてよ!
拍手や喝采とか大きな音がしているはずなのに、それでも目覚めないくらい深く眠ってしまった自分に呆れる私。
「いや、気にするな。疲れて眠ってしまったのだろう?
エレノアは毎日忙しいのだろうからな。」
「本当に申し訳ありませんでした。
公爵様にご迷惑をお掛けしてしまいましたわ。
叩き起こしてしまって構いませんでしたのに…。」
「みんな、エレノアが疲れているようだから寝かせてやれと言っていたぞ。それにみんなが帰ってから、また数分くらいしか経ってないから気にするな。」
こんな場所でそんな配慮は要らないから!
「本当にお恥ずかしいですわ。
忙しい公爵様の時間を無駄にしてしまって申し訳ありませんでした。」
「私は今日は一日休みだから気にするな。
エレノアはこの後、何か予定でもあるのか?」
「いえ、私も今日は一日休みですので、この後は特に予定はありませんわ。」
友人達と食事でも行くのかと思っていたのに、私を見捨てて帰ってしまったようだからね。
「そうか…。じゃあ、私の食事に付き合ってくれないか?」
2人で行くってことだよね…?うーん、2人で食事に行って大丈夫かな?また噂話とかされるの嫌なんだけど。
「2人ででしょうか?」
「みんな帰ってしまったからな。
……駄目か?」
そんな捨てられた子犬のような目で見ないで欲しい。
肩に寄りかかって、迷惑までかけてしまった私には拒否権などあるはずもなく……。
「…お供させて頂きますわ。」
うっ…。そんな分かりやすく嬉しそうな顔をしないでよ。
「良かった!じゃあ、すぐに行こう。」
公爵様は私の手を取って歩きだす。
私達のその様子を、観劇会場にいた人達に見られまくり、私と公爵様は恋人同士だと噂になるまでに時間は掛からなかった……
そして今日は、みんなで観劇に出掛ける約束をしている日。
席の予約は友人が手配済みだから、受付に名前を言えば、席に案内してくれると言われて会場入りした私。
しかし、会場の従業員が案内してくれたのは、明らかに普通の席ではなかった。
ステージ正面の2階のこの広過ぎるスペースは、王族の席じゃないの?
「あっ、エレノア!待ってたわよ。遅いわね!」
親友のエイミーが私に気づいて話しかけてきた。
ん?女同士かと思いきや、令息もいる。あ、同じクラスだった人達だわ。
「ナイトレイ公爵様が、王族用の広い席を手配してくれたのよ。
せっかくだから、クラスのメンバーに声をかけようってなったの。」
確かに令嬢が私とエイミーを入れて4人に令息が4人いるようだ。
「エレノア。席、そこが空いているわよ。」
「ありがとう。失礼します。」
すでにみんな座っていたので、空いている席に向かう私。
「エレノア、久しぶりだな。」
席を取ってくれた本人が私の隣に座っていたようだ。
「ナイトレイ公爵様、今日はこんなに素晴らしい席を手配してくださってありがとうございます。」
「偶然空いていただけだ。」
「ふふっ。その偶然に感謝致しますわ。」
「それは良かったよ。」
観劇は、長年の付き合いであった婚約者に、別に好きな人がいることを知ってしまった主人公が、婚約者のために身を引くべきかどうかで悩む内容だったと思うのだが…。
内容をはっきり覚えていないのは、私が後半、寝落ちしてしまったから。今日のために、昨日遅くまで仕事をしていた私は、若干の寝不足だったのだ。
パチっと目覚めた時には、すでに演目は終わっていて…、あれっ?私寝ちゃってた…。
えっ?私誰かの肩に寄りかかっていた…?
「エレノア…?起きたのか?」
声が、すごーく近くから聞こえてくる。
やってしまった!!
「…も、申し訳ありません!うっかり眠ってしまった上に、公爵様の肩まで借りてしまいました。」
どうやら私は、隣りに座るナイトレイ公爵様の肩に寄りかかって眠ってしまったようで、私と公爵様以外の姿はすでに消えていた。
みんな、起こしてよ!
拍手や喝采とか大きな音がしているはずなのに、それでも目覚めないくらい深く眠ってしまった自分に呆れる私。
「いや、気にするな。疲れて眠ってしまったのだろう?
エレノアは毎日忙しいのだろうからな。」
「本当に申し訳ありませんでした。
公爵様にご迷惑をお掛けしてしまいましたわ。
叩き起こしてしまって構いませんでしたのに…。」
「みんな、エレノアが疲れているようだから寝かせてやれと言っていたぞ。それにみんなが帰ってから、また数分くらいしか経ってないから気にするな。」
こんな場所でそんな配慮は要らないから!
「本当にお恥ずかしいですわ。
忙しい公爵様の時間を無駄にしてしまって申し訳ありませんでした。」
「私は今日は一日休みだから気にするな。
エレノアはこの後、何か予定でもあるのか?」
「いえ、私も今日は一日休みですので、この後は特に予定はありませんわ。」
友人達と食事でも行くのかと思っていたのに、私を見捨てて帰ってしまったようだからね。
「そうか…。じゃあ、私の食事に付き合ってくれないか?」
2人で行くってことだよね…?うーん、2人で食事に行って大丈夫かな?また噂話とかされるの嫌なんだけど。
「2人ででしょうか?」
「みんな帰ってしまったからな。
……駄目か?」
そんな捨てられた子犬のような目で見ないで欲しい。
肩に寄りかかって、迷惑までかけてしまった私には拒否権などあるはずもなく……。
「…お供させて頂きますわ。」
うっ…。そんな分かりやすく嬉しそうな顔をしないでよ。
「良かった!じゃあ、すぐに行こう。」
公爵様は私の手を取って歩きだす。
私達のその様子を、観劇会場にいた人達に見られまくり、私と公爵様は恋人同士だと噂になるまでに時間は掛からなかった……
32
お気に入りに追加
6,564
あなたにおすすめの小説
(完結)私が貴方から卒業する時
青空一夏
恋愛
私はペシオ公爵家のソレンヌ。ランディ・ヴァレリアン第2王子は私の婚約者だ。彼に幼い頃慰めてもらった思い出がある私はずっと恋をしていたわ。
だから、ランディ様に相応しくなれるよう努力してきたの。でもね、彼は・・・・・・
※なんちゃって西洋風異世界。現代的な表現や機器、お料理などでてくる可能性あり。史実には全く基づいておりません。
今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます
愛される日は来ないので
豆狸
恋愛
だけど体調を崩して寝込んだ途端、女主人の部屋から物置部屋へ移され、満足に食事ももらえずに死んでいったとき、私は悟ったのです。
──なにをどんなに頑張ろうと、私がラミレス様に愛される日は来ないのだと。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
あなたの事は記憶に御座いません
cyaru
恋愛
この婚約に意味ってあるんだろうか。
ロペ公爵家のグラシアナはいつも考えていた。
婚約者の王太子クリスティアンは幼馴染のオルタ侯爵家の令嬢イメルダを側に侍らせどちらが婚約者なのかよく判らない状況。
そんなある日、グラシアナはイメルダのちょっとした悪戯で負傷してしまう。
グラシアナは「このチャンス!貰った!」と・・・記憶喪失を装い逃げ切りを図る事にした。
のだが…王太子クリスティアンの様子がおかしい。
目覚め、記憶がないグラシアナに「こうなったのも全て私の責任だ。君の生涯、どんな時も私が隣で君を支え、いかなる声にも盾になると誓う」なんて言い出す。
そりゃ、元をただせば貴方がちゃんとしないからですけどね??
記憶喪失を貫き、距離を取って逃げ切りを図ろうとするのだが何故かクリスティアンが今までに見せた事のない態度で纏わりついてくるのだった・・・。
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★ニャンの日present♡ 5月18日投稿開始、完結は5月22日22時22分
★今回久しぶりの5日間という長丁場の為、ご理解お願いします(なんの?)
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる