101 / 125
あと少し
しおりを挟む
二度目の結婚記念日まで一週間を切り、マイホームに運び出せる荷物は全て運び終えてしまった鬼嫁。
後は執務室の家具などの大きな荷物ばかりだから、これは白い結婚が認められて、ここを出て行きますと伝えた後じゃないと無理よね。
あと一週間で鬼嫁も卒業よー!
独身に戻ったら、また社交の場で何を言われるかは分からないからなぁ。あのいけ好かないエイベル伯爵令嬢がいなくても、他にも嫌味ったらしい人は沢山いるし。
表向きは病気療養ということにして、長期で国外に旅行でも行こうかなー。
お父様とお母様が国外との取り引きのために出掛ける時に一緒について行くとか。
独身に戻った後のことをニヤニヤしながら考えていた私のところに、家令のトーマスとメイド長がやって来る。
「奥様。領地の方から連絡が入りまして、苺の苗の植え付けを開始するそうです。」
「仕事が早いわ!さすがパーカー様ね。
苺の加工場の建設も順調に進んでいると報告があったばかりなのよ。
予定よりも計画が早く進んでいるようで、安心したわ。」
「カイルは仕事が出来る男なので、心配はいらないと思います。」
トーマスも領主代行をしているパーカー様を呼び捨てにするくらいの仲なのね。
「……あの、奥様。」
「メイド長、どうかした?」
「旦那様のことです。
もうすぐ結婚記念日ですが、今年は旦那様と一緒に過ごされてはいかがでしょうか?
あの旦那様が、珍しく記念日をお祝いしたいと話されておりましたので。」
メイド長が非常に言いにくそうに話しているのが伝わって来た。
この話をするために2人で来たのね…。
「メイド長。貴女も知っているでしょう?
私がこの結婚の始まりの日に、あの人から何を言われたのかを。
そして、あの人やあの人の親族達からはぞんざいに扱われ、私は金蔓にしか見られてこなかったことを。
こんな扱いをするくらいなら、初めから私との縁談なんて断って欲しかったと何度思ったことか…。
そういう事だから、私にとっての結婚記念日はお祝いすべき日ではないの。教会に行って、過去の自分の行いを懺悔したいくらいの日なのよ。
メイド長なら同じ女性として分かってくれると思っているわ。」
頭の中がお花畑だったことをお許しくださいって、本気で教会に懺悔しにいこうかな…?
「……そうですわね。奥様は沢山傷付けられましたわ。
でも旦那様なりに反省していますし、後悔もしているようなのです。」
「私も(頭の中がお花畑だったことを)反省しているし、(顔だけ男の伯爵様と結婚したことを)後悔しているわ…。
だから、私達の記念日にお祝いは不要よ。」
「奥様。私からも正直に話をさせて頂きます。
確かに旦那様は奥様を沢山傷つけました。そして旦那様の親族は奥様に無礼を働きました。更に旦那様は、狂った女狐に陥れられて閨を共にし、奥様を裏切ることもしました。
しかし旦那様は変わろうとしていますし、心から奥様のことを大切に思っておられるのです。
今後の旦那様を見て頂けませんか?」
この2人は伯爵様のために、鬼嫁に必死に頼みに来ているのね。
私が出て行くつもりでいることもバレてるな…。
でも……
「2人が伯爵様を大切に思っているのは分かったわ。これからも伯爵様を支えてあげて。
ただ私は、もう無理なのよ。この短い間に私達には色々あり過ぎた。
伯爵様と私は夫婦にはなれなかったけど、今後は事業のパートナーとして上手くやっていきたいと思っているわ。
だから、これからもよろしくね。」
鬼嫁の笑顔を向けたら、2人は諦めたような表情をして部屋から出ていった。
あの2人がいるから、伯爵様は何とかなっているのだと思う。
私が出ていった後も、あの2人がいるなら大丈夫ね。
どれ、仕事しよ!
この執務室での仕事もあと数日だもの…。
後は執務室の家具などの大きな荷物ばかりだから、これは白い結婚が認められて、ここを出て行きますと伝えた後じゃないと無理よね。
あと一週間で鬼嫁も卒業よー!
独身に戻ったら、また社交の場で何を言われるかは分からないからなぁ。あのいけ好かないエイベル伯爵令嬢がいなくても、他にも嫌味ったらしい人は沢山いるし。
表向きは病気療養ということにして、長期で国外に旅行でも行こうかなー。
お父様とお母様が国外との取り引きのために出掛ける時に一緒について行くとか。
独身に戻った後のことをニヤニヤしながら考えていた私のところに、家令のトーマスとメイド長がやって来る。
「奥様。領地の方から連絡が入りまして、苺の苗の植え付けを開始するそうです。」
「仕事が早いわ!さすがパーカー様ね。
苺の加工場の建設も順調に進んでいると報告があったばかりなのよ。
予定よりも計画が早く進んでいるようで、安心したわ。」
「カイルは仕事が出来る男なので、心配はいらないと思います。」
トーマスも領主代行をしているパーカー様を呼び捨てにするくらいの仲なのね。
「……あの、奥様。」
「メイド長、どうかした?」
「旦那様のことです。
もうすぐ結婚記念日ですが、今年は旦那様と一緒に過ごされてはいかがでしょうか?
あの旦那様が、珍しく記念日をお祝いしたいと話されておりましたので。」
メイド長が非常に言いにくそうに話しているのが伝わって来た。
この話をするために2人で来たのね…。
「メイド長。貴女も知っているでしょう?
私がこの結婚の始まりの日に、あの人から何を言われたのかを。
そして、あの人やあの人の親族達からはぞんざいに扱われ、私は金蔓にしか見られてこなかったことを。
こんな扱いをするくらいなら、初めから私との縁談なんて断って欲しかったと何度思ったことか…。
そういう事だから、私にとっての結婚記念日はお祝いすべき日ではないの。教会に行って、過去の自分の行いを懺悔したいくらいの日なのよ。
メイド長なら同じ女性として分かってくれると思っているわ。」
頭の中がお花畑だったことをお許しくださいって、本気で教会に懺悔しにいこうかな…?
「……そうですわね。奥様は沢山傷付けられましたわ。
でも旦那様なりに反省していますし、後悔もしているようなのです。」
「私も(頭の中がお花畑だったことを)反省しているし、(顔だけ男の伯爵様と結婚したことを)後悔しているわ…。
だから、私達の記念日にお祝いは不要よ。」
「奥様。私からも正直に話をさせて頂きます。
確かに旦那様は奥様を沢山傷つけました。そして旦那様の親族は奥様に無礼を働きました。更に旦那様は、狂った女狐に陥れられて閨を共にし、奥様を裏切ることもしました。
しかし旦那様は変わろうとしていますし、心から奥様のことを大切に思っておられるのです。
今後の旦那様を見て頂けませんか?」
この2人は伯爵様のために、鬼嫁に必死に頼みに来ているのね。
私が出て行くつもりでいることもバレてるな…。
でも……
「2人が伯爵様を大切に思っているのは分かったわ。これからも伯爵様を支えてあげて。
ただ私は、もう無理なのよ。この短い間に私達には色々あり過ぎた。
伯爵様と私は夫婦にはなれなかったけど、今後は事業のパートナーとして上手くやっていきたいと思っているわ。
だから、これからもよろしくね。」
鬼嫁の笑顔を向けたら、2人は諦めたような表情をして部屋から出ていった。
あの2人がいるから、伯爵様は何とかなっているのだと思う。
私が出ていった後も、あの2人がいるなら大丈夫ね。
どれ、仕事しよ!
この執務室での仕事もあと数日だもの…。
107
お気に入りに追加
6,621
あなたにおすすめの小説
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。
2度目の人生は好きにやらせていただきます
みおな
恋愛
公爵令嬢アリスティアは、婚約者であるエリックに学園の卒業パーティーで冤罪で婚約破棄を言い渡され、そのまま処刑された。
そして目覚めた時、アリスティアは学園入学前に戻っていた。
今度こそは幸せになりたいと、アリスティアは婚約回避を目指すことにする。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる