君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした

せいめ

文字の大きさ
上 下
80 / 125

ボディチェックします

しおりを挟む
 アブス子爵家には伯爵家に戻って来てもいい日と、当日は必ず両親が付き添って欲しいことを手紙に書いて連絡した。


 そして、アブスが伯爵家に来る日を迎える。

 ギルも仕事で忙しい中、わざわざ同席してくれることになった。あの生々しい不貞の画像を見せるのに、機械に慣れている自分が同席すると言ってくれたのだ。
 結局、今回もギルに頼りっぱなしだ。


 
 アブスより先に到着したギルは、画像を見せるための準備をするために、先に応接室に入って待っている。
 アブスが逆上して暴れたりする可能性もあるから護衛騎士を多く配置することにした。
 
 やり過ぎかもしれないけれど、ああいう人に限って、窮地に立たされたら何をするか分からないから怖いのだ。




「奥様、アブス子爵家が到着致しました。玄関ホールで待って頂いております。」

 執務をしながら待っていると、到着したとの報告を受ける。

「すぐに行くわよ!」

「はい!」


 

 玄関ホールに出て行くと、すでに伯爵様がそこで待っていた。
 アブス…。里帰りでうちのシェフのコッテリなご馳走を食べていなかったからなのか、少しスッキリしたような気がする。



「エレノア、悪いな。」

「いえ。では始めましょうか?」

「ああ。頼む。」

 私と伯爵様の会話を不思議そうに見ている子爵と夫人。
 普通なら応接室にすぐに案内すべきなのに、玄関ホールで待たされたことが不思議なのだと思う。

「アブス子爵・夫人、お待たせ致しました。応接室に案内する前に、御令嬢のボディチェックをさせて頂きたいのです。」

「なっ…!私がどうしてそんなことをしなければならないのですか?」

 アブスが早速吠えている。でも、ナイフとか毒とか隠し持ってるかもしれないから念のためにやっておきたいの。
 そのために実家から女性騎士まで連れて来ちゃったんだから。

「前にも言いましたわよね?あなた達は信用できないと。
 毒でも持ち込まれたら困りますから。」

 毒という言葉にアブスの表情がピクリと反応するのが分かった。

「ロジャース夫人!娘は実家に戻った時にきちんと反省させて来ましたわ。こんな仕打ちはあんまりです。」

 今日もアブス母は煩いババアだった。

 反省して不貞してきたわけね。なるほど…

「相変わらず、いい歳して無礼な方ね。
 嫌なら中には入れませんわ。どうします?このまま帰られますか?」

「い、いい歳して…ですって?」

「いい加減にしないか!静かにしろ!
 夫人がそう言っているんだ。ララは黙って言うことを聞くんだ!」

 やはり、この中でまともなのは子爵だけなのね。

「では第二夫人…、よろしいかしら?」

「ど、どうして私ばかり…。酷いですわ。」

 始まったわ…。いつもの被害妄想が。

「まだ自分の立場を弁えていないようだな。本当に反省してきたのか?
 エレノアの言うことが聞けないなら、今すぐ子爵家に戻れ!」

 すでにキレ気味の伯爵様の一言でアブスは黙ってしまった。
 好きな人にここまで嫌われているのに、めげずに戻ってくるなんて、すごい根性だわ…。
 私なら心が折れちゃうし、こんな顔だけの貧乏男なんてもういらない!ふん!ってなるな。
 アブスは伯爵様に執着している…?

 アブスに玄関ホールの壁際まで移動してもらい、ボディチェックされているところを男性陣から見えないように、メイド達にカーテンを持って立ってもらい、パーテーション代わりになってもらった。
 ボディチェックといっても服の上から触ってチェックするだけだけど、ナイフとか刃物系ならすぐにわかるかなぁと思って。

 結果的に刃物は持っていなかった。
 ふぅー。これで刺されたりはしないか。良かったー!


「問題ありませんでした。皆様、応接室にどうぞお入り下さい。」

「夫人!いくら夫人の方が身分が上だとしても、今のはアブス子爵家への侮辱行為ですわ!私達や娘に謝罪して下さいませ!」

 本当に煩いババアだわ。

「今日もギャンギャンと賑やかですこと。静かに出来ないのなら、外でお待ちになりますか?
 今の行為が侮辱になるのか、正当な防衛によるものなのかはこの後ハッキリしますわ。」

「な、何を言って?」

「子爵様。いくら注意しても夫人は変わりませんのねぇ?この後、夫人も同席させたいと思うなら、少し黙らせて頂けませんか?」

「…申し訳ない。
 おい!黙れ。それが出来ないなら、馬車で待て!」

「あなたまで…。私はララが不憫だと思っただけなのに。」

「煩いと言っている!外で待て。」

 子爵がギロっと夫人を睨みつけた!
 静かそうな子爵だけど、怒る時もあるのね。

「……し、静かにします。」

 ハァー。ババアが黙ったところで、やっと断罪が始められるわね。
 





 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

処理中です...