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金貨のチカラ

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 見た目小娘、中身はアラフォーおばちゃんのエレノアです。

 ホテルの経営が大成功したので、また違ったタイプの高級ホテルを計画中。ホテルにリフォーム出来そうな中古物件を探すのに忙しい日々を送っています。

 それとは別に、近々、王宮近くにビジネスホテルをオープン予定です。地方から王都に仕事で出て来る人向けのホテルで、立地がいいから集客が期待できるはず!
 旦那様に裏切られたけど、趣味・特技が金儲けの私は逞しく生きています。



 そんな私は、アブス子爵令嬢が引っ越してくる前日、使用人達を広間に集合させていた。

「奥様、旦那様の側近以外の使用人が広間に揃いました。」

「メイド長、いつもありがとう。」


 広間にいる使用人達は事情を知っているのか、何となく複雑そうな表情をして私を見ている。

 やめてー!そんな目で見ないで!
 私は元気なの!…と叫びたいくらいだ。

 ハァー。この人達にまで、色々と心配を掛けてしまっているわね…。

「皆さん、お仕事中に呼び出してしまってごめんなさいね。
 もう皆さんは知っていると思いますが、明日、伯爵様の第二夫人が嫁がれて来ます。
 皆様はずっとこの伯爵家で働かれているので、色々な思いや考えがあるとは思いますが、第二夫人になるアブス子爵令嬢にしっかり仕えてあげて下さい。
 アブス子爵令嬢が何かに困っているような姿を見たり、聞いたりしたら、必ずメイド長に知らせるようにして下さいね。
 どんな些細なことでも構いません。いつもと様子が違うとか、具合が悪そうだとか、何かに気付くことがあれば必ず知らせて下さい。
 嫁がれて来たばかりの時は、私もそうであったように、不安や寂しさを感じてしまうかもしれません。皆んなで優しく見守ってあげましょうね。」

 簡単な話、みんなであの女を見張ってちょうだいねってこと。
 あの女、追い込み過ぎたせいかヤバい目をしていたからね…。メンヘラとかヤンデレとか…。そっち系の目。


「お、奥様…。なんてお優しい…。」

「私は奥様についていきます!」

「私も奥様のために、これからも精一杯頑張ります。」

「皆さん、ありがとう!皆さんがいつもこの伯爵家のために頑張ってくれているから、私も元気に生活が出来ているの。本当に皆さんには感謝しているのよ!
 そんな皆さんに、またボーナスを渡しますね。」

 お母様から貰ってきた金貨が沢山余っているから、1人3枚ずつ渡した。

「奥様、ありがとうございます。」

「いつも感謝しております。」

「大切に使わせて頂きます。」

 ふふ!これであの女が引っ越して来ても、この使用人達はいいスパイになってくれることだろう。

「チャーリーとエリーもいらっしゃい。」

 2人には銀貨3枚ずつ渡す。

「「ありがとうございます!」」

 今日も素直に喜ぶ2人に癒されるおばちゃん。

「奥様!俺は奥様に一生ついて行きたいです!奥様の護衛騎士になれるようにこれからも頑張ります!」

 チャーリー、何て可愛いの!

「奥様、私は奥様の専属メイドになりたいの。」

 エリーまで!

「2人とも可愛いから、抱きしめちゃうわ!」

 おばちゃん根性で、つい可愛い2人を抱きしめちゃった。
 チャーリーは恥ずかしそうにしていたけど、エリーは普通に嬉しそうにしていた。
 ハァー、子供はかわいいわ。

 メイド長には、あの女が来ることで色々と苦労をかけそうだから、奮発して金貨10枚を渡しておいた。



 そして次の日。

 アブスがロジャース伯爵家に引っ越して来たらしい。
 あの女に直接関わるとストレスだから、放置することに決めた。私に関わってこないなら、伯爵様と何をしようが関係ない。2人で仲良くやればいいと思っている。

 ただ、あの女は媚薬を盛るヤバい女だから、同じ邸で生活するのに注意は必要だ。私のメイドや従者、護衛騎士達にもそのことはよく話をしておいた。



「奥様、連れて参りました。中に入れてもよろしいでしょうか?」

「ええ。中に入って貰って。メイド長も一緒にいてくれる?」

「畏まりました。」

 メイド長は、アブス子爵令嬢が子爵家から連れてきた、専属メイドを私の執務室に連れてきた。

「…失礼いたします。」

 何となく怯えているメイド。

 そうだよね…。いきなりこんな風に連れて来られたら、ビビるよね。

「貴女、名前は?」

「……エマと申します。」

「そう…。
 私はエレノア・ロジャースよ。よろしくね。」

「よろしくお願い致します。」

「エマ。これは挨拶代わりに貴女にあげるわ。」

 伯爵家のボスである鬼嫁は、挨拶代わりに金貨3枚を渡した。



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