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結局はお金

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「アブス子爵と夫人。令嬢を告訴されたくないですよね?」

「許して下さるのですか?」

 私の言葉に、アブス子爵夫人の目が輝いている。
 食いついて来たわね…

「修道院にも行かせたくないし、第二夫人にしてくれたら嬉しいと…?」

「はい!お願いします!」

「そうですよね…。伯爵様が結婚してあげなければ、媚薬を使用してまで、既婚者の男性と関係を持つような尻軽の令嬢となんて、他に誰も結婚したがらないでしょうからね。」

「……。」

「では、誠意を見せてくださいますか?」

「え?それは…?」

「分からないのですか?私達夫婦は、アブス子爵令嬢から精神的苦痛を受けましたわ。慰謝料をお願いします。第二夫人になりたいのなら、それとは別に持参金もですわよ。
 まさか、ただ謝って許されるだなんて思っていませんわよね?」

「……いくら支払えば?」

「少なくても1億ユールはお願いしますわ。持参金も前にも言いましたが、1億ユールで。」

「そんな金額は無理ですわ!」

「おいくらなら払えるのです?私は別に告訴してもいいのです。証拠はこんなに揃っているのですから。
 令嬢が妊娠していようが、離縁する私は関係のない話ですし。」

「エレノア!私は離縁はしないと言っている。」

「伯爵様!貴方は離縁うんぬんを語る前に、この女狐をどうすべきなのか、はっきり決めて下さいませ!
 この女狐達は、妊娠の可能性をチラつかせて、伯爵様を脅しているようなものですわよ!」

「第二夫人のことはすぐに決められない。少し考える時間をくれ。」

「伯爵様も可哀想な被害者ですものね…。仕方がありませんわ。
 しかし、アブス子爵家は慰謝料は必ず払って下さい!1億ユールですわ。それが無理なら私は告訴します。
 たとえ令嬢に兄弟がいたとして、犯罪者の兄弟だからと婚約破棄されようが、学園でイジメに遭おうが…、アブス子爵家が犯罪者の家族だからと取引先を失うことになろうが…、私には全く関係ありませんから!」

「…そんな金額、うちみたいな子爵家は無理ですわ。」

「用意出来ないのなら結構!
 返事は1週間待ちましょう。もし、どこかに逃亡するならどうぞご勝手に…。証拠は揃っていますから、騎士団に提出して、指名手配させて頂くだけですので。どうしても逃げ切りたいなら、国外逃亡がおすすめですわね。
 第二夫人の件は、伯爵様も真面目に考えておいて下さい。
 難しい問題ですから、伯爵様の親友の方々に相談されてもよいかと思いますわ。今回のことで、伯爵様のご友人方は、伯爵様を援護する証言を沢山して下さったようですし。信頼できる方々のようですから…。
 では、1週間後にまたお会い出来る事を楽しみにしておりますわ。
 今日はこれにて解散!!ご機嫌よう…。」




 




 話し合いをした日から5日…。

「奥様、伯爵様がどうしても奥様と会ってお話がしたいといらしております。」

 第二夫人の件かな?バカ伯爵も、可哀想な被害者だったからね。たまには話を聞いてやるか!

「中に入れて。人払いもしてくれる?」

「畏まりました。」

 メイドや秘書官達は執務室を退出し、伯爵様が中に入ってきた。
 目の下にクマが…。見た目だけは良かった、顔だけの伯爵様が残念なことになっている。相当悩んだのね…。あの見た目地味な女狐にやられたことは、相当なショックだったかな。

「伯爵様。顔色が悪いですが、きちんと眠れているのですか?」

「エレノア…、こんな時にそんな優しい言葉を掛けてくれるのか…。
 私はそんなエレノアを裏切ってばかりだな…。本当に申し訳ない。」

 優しい言葉じゃなくて、普通に顔色が悪すぎて気になっただけだから。

「いえ。ところで、伯爵様の考えは決まりましたか?」

「あの後、友人達に相談した。
 エレノアと同じことを言われた…。私の子供を孕んでいるかもしれない令嬢をそのままには出来ないだろうと。あの日のことは噂になっているから、第二夫人として迎えないと、無責任な伯爵だとレッテルを貼られて、私の信用問題に関わるだろうと…。
 不本意だが、あの女を第二夫人として迎えることにする。」

 ふふっ。馬鹿正直に友人達に相談したのね…。
 友人達とその奥様方、いい仕事をして下さるのを期待しておりますわよ。

「…分かりました。」

「エレノア…。あの女を第二夫人に迎えたとしても、私の妻は君だけだ。あの女は妻じゃない。この先も私の妻はエレノアだけだ。
 今回のことは、本当にすまなかった。」

「…もういいのです。謝罪は結構ですわ。
 では、明後日の話し合いの時に、そのことをアブス子爵家にお伝え下さいませ。」


 バカ伯爵は第二夫人を迎えることに決めたようだ。


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