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義弟、断罪する 2

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 自分のサイン入りの同意書を見せられて、目を見開くアブス子爵令嬢。

「…そ、それは誰かが私になりすましたのではないでしょうか?」

「そんな風に言われる方もいるので、店にはカメラもあるのですよ。今、ご令嬢が買いに来られた時の画像をお見せしますね。」

 ギルはすぐに再生してくれた。
 画像には、慌ただしく店に来て、店員の説明を聞こうともせずに、急いで買って帰りたいといったように見えるアブス子爵令嬢の姿が映っていた。

 ここまで証拠を出されたら、自分ではないと言い逃れは出来ないだろう。

「ララ…。もしかして…、あなた…。」

 あの口煩いババアの子爵夫人が、絶句している。

「ち、違います!実は…、い、言いたくなかったのですが、友人に頼まれて買いに行ったのです。私は使っていませんわ。」

「アブス子爵令嬢、それは本当ですか?それは、犯罪行為と見なして告訴しなくてはいけませんが!」

「え?」

「貴女は、店員の説明を聞かずに店から飛び出して行ってしまったようなので、知らないのかもしれませんが…。貴女のサインした同意書にも、きちんと説明文を載せていましたので、読まなかった貴女の責任になりますね。」

「…え?どうして犯罪?」

「ハァー。本当に困ったお方だ。
 うちの媚薬は良く効くと評判でしてね。人気の商品なので、模造品を作って無許可で売る者や、媚薬を盛って犯罪行為をする者が沢山いるのですよ。
 私達は犯罪行為は許せませんが、本当に必要としている善良なお客様には商品をお届けしたいと考えております。
 商品を購入される方の身分証明書を確認して、身分のしっかりしているお方だけに商品をお売りしているのです。前科のあるお方にはお売り出来ないので。」

「……え?」

「同意書には、犯罪行為に利用されるのを防ぐために、必ず購入者が使用することと、第三者への譲渡を禁止すること、守れない場合は告訴することもあるとも書いてあったと思いますが。…読んでいないのですね?」

「……。」

「ですから、貴女以外の方が使用したとなると、犯罪行為と見なして、私達は貴女を告訴できるのですよ。
 しかも、貴女は店員に強い媚薬が欲しいと頼んだようですね?あの『野獣の愛』という媚薬は、壮年の男性向けの媚薬なので、若い男性に使用すると薬が強すぎて、副作用が出やすいのです。」

「そんな…!」

「壮年の男性向けの媚薬なんてあったの?」

 つい『野獣の愛』に食いついてしまったおばちゃん。

「義姉上。『野獣の愛』とは、元気がなくなってきた壮年男性が、また野獣に戻れるようにと、うちの優秀な薬師達が考えた最高傑作の媚薬なのですよ。強い薬なので、副作用もあるのです。」

 そ、それって…、もしかしてE○の人向けの媚薬?
 そんなの売ってたのかい!

「媚薬を買っているのを誰にも見られたくなくて、薬師の説明も碌に聞かずに店から早く去ったのでしょうけど…。店頭で購入するのが恥ずかしいのであれば、呼んでくだされば、うちの店は訪問販売もしていたのですがね。
 うちのお得意様の方々は、皆様、店頭で媚薬なんて購入しませんからね…。アブス子爵令嬢はかなり目立つお客様だったと、店員や薬師達は貴女をしっかりと覚えておりましたよ。」

「……っ!」

 アブスの肩が震えている。

「アブス子爵令嬢とロジャース伯爵の不貞のあった夜会も調べさせてもらいました。
 エイジャー伯爵やロジャース伯爵の友人方にお聞きしたところ、その日、ロジャース伯爵はワインを飲んですぐに気分が悪くなって、歩くのも困難な状態になり、友人に体を支えられて客室まで移動したと聞きましたが、…伯爵様、間違いありませんか?」

「…そうだ。ワインを飲んだ後に気分が悪くなって、私は悪酔いしたのかと思っていた。」

「自力で歩くのが難しい状態で、アブス子爵令嬢を部屋に連れ込むのは無理でしょうね。
 アブス子爵令嬢が意図的に部屋に忍び込んだと考えるのが自然かと…。」

 バカ伯爵様でも、ここまで来ると何があったのかを自覚し始めたようだ。鋭い眼光でアブスを睨みつけている。 
 おおー!最近は情けない表情しか見てなかったこど、こんな顔して怒るのね。

 
 ギルの断罪劇はまだ続く……



 
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