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ちょっと実家まで
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私は、無理をさせたくないと言うミサとリリーを何とか説得し、忘れ物をとりに実家に一度帰ることにした。
ちなみに、ミサとリリーには私の部屋の留守番をしてもらうため、伯爵家に残ってもらうことにした。私の部屋には、金持ちの実家から持ってきた宝石や現金が沢山あるが、伯爵家の人間は信用出来ないので、二人に監視してもらうことにしたのだ。
外出の準備が出来て馬車に乗り込もうとした時だった……
「エレノア! どこへ行く?」
この声は……、あの顔だけの詐欺男……
事後報告で黙って行こうとしたのに、あの男の執務室から私の馬車が見えて、金蔓のお飾り妻に逃げられると思い、慌てて出て来たとか?
どうせ自分に恋をしている世間知らずの小娘だから、何でも言うことを聞くだろうし、何を言ってもいいと考えて初夜であんな態度を取ったのだろうけど……、そのおかげで見た目小娘、中身はアラフォーのおばちゃんになったから、今まで通りにはならないわよ。
ふふっ……。どうせなら鬼嫁になってやるわ!
「ちょっと忘れ物を思い出しましたので、実家に行って来ますわ。では……」
「待て! 体は大丈夫なのか? 実家に急いで行く必要はないだろう」
伯爵様に手首をガシッと掴まれる。
「伯爵様、痛いのですが」
私の冷たい声と視線に驚いた伯爵様は、パッと手を離す。
鬼嫁たる者、旦那に何をされようとも、常に冷静にバッサバッサと切り捨てる強さが必要なのだ。
「す、すまない。しかし、無理して今から実家に行くことはしなくても……。まだ顔色が悪いぞ」
前のエレノアなら、『優しい旦那様が私を心配してくれてるわ。幸せ、大好き!』
……なーんて思うだろうけど、今の私は詐欺男がまた何か耳障りな話をしてるくらいにしか感じないのだ。
初夜にあんなことを言ったばかりだから、今私に実家に帰られるのは、何となく嫌なんでしょ?
「ご心配なく。伯爵様との結婚自体が無理をしていることに気付きましたので、それと比べましたら、病み上がりに実家に行くくらいのことは大したことありませんわ」
「結婚自体が無理をしている……?」
あらあら、自分に恋をして従順だったはずの小娘が、急に嫌味ったらしいことを口にしたから驚いちゃったかな?
「伯爵様、大丈夫ですわ。初夜の日に言われたことは理解しておりますから。
ところで、伯爵様の愛する人はいつ紹介してくださるのです?
形だけの妻でも、この伯爵家に多額の援助をしているのはこの私と私の実家です。
伯爵様の愛人もうちで養っているようなものになるのですから、正妻である私にきちんと挨拶にくるように伝えて下さいませ」
この家を牛耳るのは鬼嫁である私になるのだから、愛人がいるなら挨拶くらいはしてもらわないと。何事も初めが肝心だからね。
「何を言っている? 愛人などいない!」
ふーん。君を愛するつもりはないとか言っていたから、貧乏な下位の貴族令嬢か平民あたりの愛人がいるのかと思ってカマをかけたんだけど。
まぁ、後で人を使って調べれば分かるからいいか。
「そうでしたか。それは失礼致しました。
話すこともないので、そろそろ失礼させて頂きますわ」
何か言いたそうな顔の伯爵様を無視して馬車に乗り込むと、馬車は走り出す。最新の馬車は乗り心地が最高ね。
ちなみに、ミサとリリーには私の部屋の留守番をしてもらうため、伯爵家に残ってもらうことにした。私の部屋には、金持ちの実家から持ってきた宝石や現金が沢山あるが、伯爵家の人間は信用出来ないので、二人に監視してもらうことにしたのだ。
外出の準備が出来て馬車に乗り込もうとした時だった……
「エレノア! どこへ行く?」
この声は……、あの顔だけの詐欺男……
事後報告で黙って行こうとしたのに、あの男の執務室から私の馬車が見えて、金蔓のお飾り妻に逃げられると思い、慌てて出て来たとか?
どうせ自分に恋をしている世間知らずの小娘だから、何でも言うことを聞くだろうし、何を言ってもいいと考えて初夜であんな態度を取ったのだろうけど……、そのおかげで見た目小娘、中身はアラフォーのおばちゃんになったから、今まで通りにはならないわよ。
ふふっ……。どうせなら鬼嫁になってやるわ!
「ちょっと忘れ物を思い出しましたので、実家に行って来ますわ。では……」
「待て! 体は大丈夫なのか? 実家に急いで行く必要はないだろう」
伯爵様に手首をガシッと掴まれる。
「伯爵様、痛いのですが」
私の冷たい声と視線に驚いた伯爵様は、パッと手を離す。
鬼嫁たる者、旦那に何をされようとも、常に冷静にバッサバッサと切り捨てる強さが必要なのだ。
「す、すまない。しかし、無理して今から実家に行くことはしなくても……。まだ顔色が悪いぞ」
前のエレノアなら、『優しい旦那様が私を心配してくれてるわ。幸せ、大好き!』
……なーんて思うだろうけど、今の私は詐欺男がまた何か耳障りな話をしてるくらいにしか感じないのだ。
初夜にあんなことを言ったばかりだから、今私に実家に帰られるのは、何となく嫌なんでしょ?
「ご心配なく。伯爵様との結婚自体が無理をしていることに気付きましたので、それと比べましたら、病み上がりに実家に行くくらいのことは大したことありませんわ」
「結婚自体が無理をしている……?」
あらあら、自分に恋をして従順だったはずの小娘が、急に嫌味ったらしいことを口にしたから驚いちゃったかな?
「伯爵様、大丈夫ですわ。初夜の日に言われたことは理解しておりますから。
ところで、伯爵様の愛する人はいつ紹介してくださるのです?
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この家を牛耳るのは鬼嫁である私になるのだから、愛人がいるなら挨拶くらいはしてもらわないと。何事も初めが肝心だからね。
「何を言っている? 愛人などいない!」
ふーん。君を愛するつもりはないとか言っていたから、貧乏な下位の貴族令嬢か平民あたりの愛人がいるのかと思ってカマをかけたんだけど。
まぁ、後で人を使って調べれば分かるからいいか。
「そうでしたか。それは失礼致しました。
話すこともないので、そろそろ失礼させて頂きますわ」
何か言いたそうな顔の伯爵様を無視して馬車に乗り込むと、馬車は走り出す。最新の馬車は乗り心地が最高ね。
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