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閑話 王弟アレクシス

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「王弟殿下。先程、聖女様が出発されました。」

「…そうか。」

「病気や怪我の人を早く助けに行きたいと、聖女様自ら騎乗して、急いで旅立たれたようです。」

「聖女様が騎乗?」

「はい。聖女様の護衛達の話だと、ここに来るまでも、聖女様が自ら騎乗して来たようです。急ぎだからと飛ばしに飛ばしまくり、王都から3日で到着した、凄いだろうと、あの護衛達に自慢されました。」

「3日だって!普通なら、どんなに飛ばしても5日はかかるだろう。」

「聖女様が、騎士や馬に回復魔法をかけながら、急いで来てくれたようです。」

「そうだったのか…。私達の為にそこまで。感謝しないといけないな。」

 聖女は、そのまま結界を張る旅に出かけた。

 私の方は、戦後処理で忙しい日々を送ることになるが、敵の将軍を生きて捕らえる事が出来たことが良かった。恐らく、将軍は何かを知っている。


「あの将軍には拷問は必要ない。拷問しても、恐らく口を割らないから、無意味だ。時間をかけて、私が対話して話を聞き出すことにする。他の者には、絶対に手を出さないようにと伝えておけ。」

 部下達にそのように指示を出しておく。

 一目見て、すぐに気付いた。あの将軍はリーナの護衛騎士だったカーティス・ガルシアだ。見た目も声も、当時と全く変わってない。

 前世の記憶を取り戻した私は、かつての友人や知人の生まれ変わりの人物がいたら、当時と見た目が変わっていても、不思議とすぐに分かるのだ。

 将軍がガルシア卿だとすると、忠誠心の強い男だったから、多少の拷問なんて効果はないに決まっている。
 まあ、いい。あの男は王都に連れて行き、じっくりと話をしよう。

 あの時。リーナが1番信頼して、最後の最後まで、唯一側に置いていた、憎らしい男…。


 王都で忙しい毎日を過ごしていると、聖女がもうすぐ城に戻って来ると、先触れがある。

 何て早いんだ!本当に優秀な聖女らしい。
 彼女が来てから、魔物は驚くほど減ったし、貧しい平民にも優しい聖女だと聞く。戦争も彼女のおかげで、勝利出来た。

 国中からとても人気のある聖女が戻るということで、城勤めの貴族や使用人達が沢山出迎えに行くようだ。
 私も仕事の手を止め、まだ会ったことのない聖女の出迎えに行くことにした。

 少し離れた所にいる兄上は嬉しそうにしている。

 噂で聞いたが、呪いを解いてもらってからの兄上は、誰が見ても聖女に惚れているのが分かるような雰囲気をだしていたらしい。

 あの兄上が恋か…。

 父上が病で倒れ、若くして王位を引き継いだ兄上は、とにかく苦労ばかりだった。そんな兄上には幸せになってもらいたいと思う。兄上が、あの聖女に恋をしているなら、私は兄上の恋を応援したいと思う。噂で聞く限り、評判のいい女性らしいから、未来の王妃としても問題は無いだろう。

 
 しかし。

 到着して馬から降り、兄上に挨拶をしているのは…。
 兄上に抱きしめられて、恥ずかしそうにしているあの表情は…。


 どこからどう見ても、私があの時に愛したリーナだった。


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