上 下
10 / 39
2度目

陛下の呪い

しおりを挟む
 陛下の背後に見える黒いモヤ。本当に気になる。今なら2人だし、割と話しやすい陛下だから、思い切って聞いてみようか。

「陛下。真面目な話なのですが、よろしいでしょうか?」

「どうした?」

「陛下を初めて見た時から、ずっと気になっていたのですが。……陛下の背後というか、背中のあたりに、黒いモヤが見えるのです。それは一体、何なのでしょうか?」

 陛下は少し驚いた顔をしていたが、何かに気付いたようだ。

「…もしかしたら、呪いの類かもしれない。」

 呪い?

「呪いですか?何か心当たりがあるのでしょうか?」

「心当たりがあると言えばあるが、証拠がないから、何とも言えないな。ただ、気付いたら身体が弱くなっていた。毒を疑ったが、毒ではないらしい。病でもないようだ。ハッキリしないが、体調を崩しやすくなった。原因が分からないから治療も出来ない。時々寝込むこともあるし、急に具合が悪くなることもある。隣国が攻めて来そうなのに、戦地で指揮をとることも出来ない。そんな私の代わりに、弟が戦地に行っているのが心苦しい。」

 何となく悲観した様な表情の陛下。イケメンのこんな表情は危険だわ。…じゃなくて、呪いに聖魔法が効くって、前の聖女教育で習ったような。しかも、私は魔力が強いみたいだし。
 …やってみる?

「陛下。効果があるかは分かりませんが、聖魔法で呪いが解けるか、試してみてもよろしいでしょうか?」

「本当か?しかし、君はまだ魔力を使える程、体力が回復してないのではないか?無理はしないで欲しい。」

 気になって仕方がないから、今すぐにやりたいの!

「陛下、私は大丈夫ですから。今、よろしいですか?」

「…ありがとう。ただ、辛い時は途中で止めるようにしてくれ。」

「はい。それではいきますね。」

 陛下に聖魔法をかけていく。私の手からは眩しい光が。
 おお!やっぱりこの世界に来ると、魔法が使えるのね。陛下の背中に付いている黒いモヤに向かって、それー!
 ……モヤが小さくなってきた。でも、まだ小さく付いていて離れない。更に強くかけていく私。あっ!やっと消えた。

「陛下、黒いモヤが消えました!……げほっ。」

 あっ。口が血の味がする。どうやら、まだ無理をしてはいけない時期だったようだ。

「…リーナ!口から血が。やはり、無理をさせてしまったようだ。顔色も悪い!…ちょっと我慢してくれ!」

 陛下は私をお姫様抱っこして、部屋まで運んでくれた。大丈夫と言っても、降ろしてくれなかった。
 運ばれている途中、色々な人に見られて、恥ずかし過ぎた…。

 まだ強い魔力に慣れない体で、強い聖魔法を使ったことで、吐血してしまったようだ。数日は安静にするように言われてしまった。

 陛下の呪いは解けたようで、体が楽になったと言っている。確かに顔色が良くなっていた。そして…、

「リーナ、見舞いに来た。気分はどうだ?」

 陛下は午前と午後と、時間があればお見舞いに来る、少し困った過保護な人になってしまった。

「陛下。私は寝ていれば治るようなので、大丈夫です。忙しい陛下が、ここまで来るのは申し訳なく思います。ですから……」

「リーナ!この部屋にやたら花が飾ってあるが、どうしたのだ?誰かからのプレゼントか?」

 人の話を聞け!

「それは確か…、バーナード公爵令息という方から、毎日届けられているようです。」

 陛下の顔が怖いような…。

「バーナード卿か!花が多すぎて、匂いがキツくて具合が悪くなるから、今後はいらないと私から言っておく!」

 断りにくいから放っておいたけど、陛下から断ってくれるなら、お願いしよう。

「リーナ、少しいいか?」

「はい?」

 陛下はベッドに座る私の隣に来ると、そのまま私を抱きしめる。

「リーナ、少しこのままでいさせてくれ。」

 ちょっとー!

 陛下はこの後から、私との距離を縮めてくるのであった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

短編まとめ

あるのーる
BL
大体10000字前後で完結する話のまとめです。こちらは比較的明るめな話をまとめています。 基本的には1タイトル(題名付き傾向~(完)の付いた話まで)で区切られていますが、同じ系統で別の話があったり続きがあったりもします。その為更新順と並び順が違う場合やあまりに話数が増えたら別作品にまとめなおす可能性があります。よろしくお願いします。

すれ違いのその先に

ごろごろみかん。
恋愛
転がり込んできた政略結婚ではあるが初恋の人と結婚することができたリーフェリアはとても幸せだった。 彼の、血を吐くような本音を聞くまでは。 ほかの女を愛しているーーーそれを聞いたリーフェリアは、彼のために身を引く決意をする。 *愛が重すぎるためそれを隠そうとする王太子と愛されていないと勘違いしてしまった王太子妃のお話

正妃に選ばれましたが、妊娠しないのでいらないようです。

ララ
恋愛
正妃として選ばれた私。 しかし一向に妊娠しない私を見て、側妃が選ばれる。 最低最悪な悪女が。

【完結】前世の記憶があっても役に立たないんですが!

kana
恋愛
前世を思い出したのは階段からの落下中。 絶体絶命のピンチも自力で乗り切ったアリシア。 ここはゲームの世界なのか、ただの転生なのかも分からない。 前世を思い出したことで変わったのは性格だけ。 チートともないけど前向きな性格で我が道を行くアリシア。 そんな時ヒロイン?登場でピンチに・・・ ユルい設定になっています。 作者の力不足はお許しください。

【完結】続・転生したら悪役令嬢になったようですが、肝心のストーリーが分かりません!! ~聖女がやって来た!~

Rohdea
恋愛
★転生したら悪役令嬢になったようですが、肝心のストーリーが分かりません!!★ の続編となります。 紆余曲折を経て、お互いの気持ちを確かめ合った悪役令嬢?のキャロラインと婚約者のシュナイダー殿下。 二人は変わらず仲睦まじく過ごしていた。 しかし、そんなある日…… 隣国で『真実の愛に目覚めた!』と、どこかで一度は聞いたようなセリフで、 自国の王子に婚約破棄され追放されてしまった“聖女”がやってくる事になり、キャロラインの心は揺れる。 相変わらず肝心のストーリーは分からないけれど、 この世界の本当のヒロインは“ピンク髪のあの女”ではなく……聖女だった!? やっぱり自分……キャロラインは“悪役令嬢”なのかもと再び思い込む──…… そして、そんなキャロラインの前に何故か聖女に婚約破棄したバカ王子まで現れ───!?

義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました

やみなべ
恋愛
<最終話まで執筆済。毎日1話更新。完結保障有>  フランクフルト王国の辺境伯令嬢アーデルは王家からほぼ選択肢のない一方的な命令でクズな王太子デルフリと婚約を結ばされた。  アーデル自身は様々な政治的背景を理解した上で政略結婚を受け入れるも、クズは可愛げのないアーデルではなく天真爛漫な義妹のクラーラを溺愛する。  貴族令嬢達も田舎娘が無理やり王太子妃の座を奪い取ったと勘違いし、事あるごとにアーデルを侮辱。いつしか社交界でアーデルは『悪役令嬢』と称され、義姉から虐げられるクラーラこそが王太子妃に相応しいっとささやかれ始める。  そんな四面楚歌な中でアーデルはパーティー会場内でクズから冤罪の後に婚約破棄宣言。義妹に全てを奪われるという、味方が誰一人居ない幸薄い悪役令嬢系ヒロインの悲劇っと思いきや……  蓋を開ければ、超人のようなつよつよヒロインがお義姉ちゃん大好きっ子な義妹を筆頭とした愉快な仲間達と共にクズ達をぺんぺん草一本生えないぐらい徹底的に叩き潰す蹂躙劇だった。  もっとも、現実は小説より奇とはよく言ったもの。 「アーデル!!貴様、クラーラをどこにやった!!」 「…………はぁ?」  断罪劇直前にアーデル陣営であったはずのクラーラが突如行方をくらますという、ヒロインの予想外な展開ばかりが続いたせいで結果論での蹂躙劇だったのである。  義妹はなぜ消えたのか……?  ヒロインは無事にクズ王太子達をざまぁできるのか……?  義妹の隠された真実を知ったクズが取った選択肢は……?  そして、不穏なタグだらけなざまぁの正体とは……?  そんなお話となる予定です。  残虐描写もそれなりにある上、クズの末路は『ざまぁ』なんて言葉では済まない『ざまぁを超えるざまぁ』というか……  これ以上のひどい目ってないのではと思うぐらいの『限界突破に挑戦したざまぁ』という『稀にみる酷いざまぁ』な展開となっているので、そういうのが苦手な方はご注意ください。  逆に三度の飯よりざまぁ劇が大好きなドS読者様なら……  多分、期待に添えれる……かも? ※ このお話は『いつか桜の木の下で』の約120年後の隣国が舞台です。向こうを読んでればにやりと察せられる程度の繋がりしか持たせてないので、これ単体でも十分楽しめる内容にしてます。

完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!

音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。 頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。 都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。 「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」 断末魔に涙した彼女は……

寵妃にすべてを奪われ下賜された先は毒薔薇の貴公子でしたが、何故か愛されてしまいました!

ユウ
恋愛
エリーゼは、王妃になる予定だった。 故郷を失い後ろ盾を失くし代わりに王妃として選ばれたのは後から妃候補となった侯爵令嬢だった。 聖女の資格を持ち国に貢献した暁に正妃となりエリーゼは側妃となったが夜の渡りもなく周りから冷遇される日々を送っていた。 日陰の日々を送る中、婚約者であり唯一の理解者にも忘れされる中。 長らく魔物の侵略を受けていた東の大陸を取り戻したことでとある騎士に妃を下賜することとなったのだが、選ばれたのはエリーゼだった。 下賜される相手は冷たく人をよせつけず、猛毒を持つ薔薇の貴公子と呼ばれる男だった。 用済みになったエリーゼは殺されるのかと思ったが… 「私は貴女以外に妻を持つ気はない」 愛されることはないと思っていたのに何故か甘い言葉に甘い笑顔を向けられてしまう。 その頃、すべてを手に入れた側妃から正妃となった聖女に不幸が訪れるのだった。

処理中です...