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記憶が戻った後の話
27 過保護な男
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今日は待ちに待った姉との面会の日。その前に、王妃殿下とのお茶会も入っているが、ボロを出さないように無難に終わらせるつもりでいる。
余計なことは喋らずに、アリシアのように静かにしてようっと。
「アリシア! 来てくれてありがとう。元気になって良かったわ。早く座ってちょうだい。
アンダーソン公爵、アリシアを座らせてあげて。あら、この子ったら緊張しているのかしら。あっ、記憶がまだ戻らないから、私のことも忘れてしまっていたわね」
ボロが出ないように、余計なことは喋らずにいようと決めてきたのに……
前世のアリスの記憶が戻ってから初めてお会いする王妃殿下は変わらず優しくて……
お姉様ー! ……と呼びたくてもそんなことができるはずもなく、私の目からは涙が溢れていた。
「アリー、どうしたんだ?
王妃殿下、やっぱりアリーの体調はまだ回復しないので今すぐ帰らせてもらいます。
アリーの涙を誰にも見せたくないから、私の上着を被ってくれ。私が君を抱き抱えて馬車まで連れて行く」
私の涙を見た公爵がなぜか取り乱し、突っ走りそうになる。その時に私はハッとした。
「申し訳ありません。王妃殿下のお優しい言葉が嬉しくて涙が出てしまいました。
ここ二、三年の記憶はありませんが、記憶を失くす前の私は、王妃殿下に敬愛の情を抱いていたのでしょうね。
公爵様、私は大丈夫ですわ。ご心配をおかけしました。少し落ち着いてくださいませ」
「アリーの涙を見て落ち着けるはずがない。
君があの女に階段から突き落とされた時、涙を流して倒れていた。君の涙を見るとそれを思い出して辛くなるんだ」
公爵はどうしてこんなに過保護な性格になってしまったのか……
「まあ! アリシアは嬉しいことを言ってくれるのね。
ところで、アンダーソン公爵はアリシアの父親みたいね。夫でいたいなら、もう少し落ち着いていないとダメよ」
確かに、今の公爵は夫というより保護者みたいだから、王妃殿下の話は理解できる。
「私達に年の差はありますが私は夫ですよ」
その後、和やかな雰囲気の中て三人でお茶をした。
王妃殿下は私の体調を心配してくださり、お茶会は短い時間で終了となる。
そしてお茶会が終わった後、私は地下牢にやって来た。
本当に地下にあるのね……
陽の光が入らないので暗いし、古い空気もこもっていてカビ臭い。予想通りよろしくない環境で、ここにいるだけで体調を崩す人がいそうだ。
「アリー、気分は悪くないか?
今からでも引き返してもいいんだ」
横を歩く公爵は、よほど私を姉に会わせたくないのか、行くのを中止にしてもいいとか引き返してもいいとか、何度も口にしている。
せっかくここまで来たんだから、絶対にあの女に会うんだから。
「私は大丈夫です。それより……公爵様、少し私に密着しすぎでは?」
私の体を支えてくれているようだけど、公爵の左手で私の左手を握り、公爵の右腕は私の腰をガッチリと抱いていて非常に歩きにくい。薄暗いけど足元はしっかり見えているから、手を引いてもらうだけで平気なのに。
私の知る昔の公爵は冷たい性格のクズで、こんな過保護で面倒なヤツではなかった。この男も、頭でも打って変わってしまったのではと思ってしまう。
「君の気分が悪くなるかもしれないから、体を支えていたい。それは許してくれ」
「分かりました……」
私達の前後には護衛騎士や牢番がいるのだから、ふらついても倒れる前に誰かしらは気付いてくれそうだけど……
公爵は、私が馬車に乗り降りする時に騎士が手を貸すことすら嫌がっていた。もしかして、オーロラはこの面倒な性格が嫌になって離れてしまったりして。
色々な令息を侍らせ、婚約者でもないのにベタベタしていたオーロラが、公爵一人だけのものになるとは思えない。
公爵と揉めて、先代の公爵様と夫人に消された可能性もある。
姉の件が落ち着いたら、本格的にオーロラ探しをしよう。
余計なことは喋らずに、アリシアのように静かにしてようっと。
「アリシア! 来てくれてありがとう。元気になって良かったわ。早く座ってちょうだい。
アンダーソン公爵、アリシアを座らせてあげて。あら、この子ったら緊張しているのかしら。あっ、記憶がまだ戻らないから、私のことも忘れてしまっていたわね」
ボロが出ないように、余計なことは喋らずにいようと決めてきたのに……
前世のアリスの記憶が戻ってから初めてお会いする王妃殿下は変わらず優しくて……
お姉様ー! ……と呼びたくてもそんなことができるはずもなく、私の目からは涙が溢れていた。
「アリー、どうしたんだ?
王妃殿下、やっぱりアリーの体調はまだ回復しないので今すぐ帰らせてもらいます。
アリーの涙を誰にも見せたくないから、私の上着を被ってくれ。私が君を抱き抱えて馬車まで連れて行く」
私の涙を見た公爵がなぜか取り乱し、突っ走りそうになる。その時に私はハッとした。
「申し訳ありません。王妃殿下のお優しい言葉が嬉しくて涙が出てしまいました。
ここ二、三年の記憶はありませんが、記憶を失くす前の私は、王妃殿下に敬愛の情を抱いていたのでしょうね。
公爵様、私は大丈夫ですわ。ご心配をおかけしました。少し落ち着いてくださいませ」
「アリーの涙を見て落ち着けるはずがない。
君があの女に階段から突き落とされた時、涙を流して倒れていた。君の涙を見るとそれを思い出して辛くなるんだ」
公爵はどうしてこんなに過保護な性格になってしまったのか……
「まあ! アリシアは嬉しいことを言ってくれるのね。
ところで、アンダーソン公爵はアリシアの父親みたいね。夫でいたいなら、もう少し落ち着いていないとダメよ」
確かに、今の公爵は夫というより保護者みたいだから、王妃殿下の話は理解できる。
「私達に年の差はありますが私は夫ですよ」
その後、和やかな雰囲気の中て三人でお茶をした。
王妃殿下は私の体調を心配してくださり、お茶会は短い時間で終了となる。
そしてお茶会が終わった後、私は地下牢にやって来た。
本当に地下にあるのね……
陽の光が入らないので暗いし、古い空気もこもっていてカビ臭い。予想通りよろしくない環境で、ここにいるだけで体調を崩す人がいそうだ。
「アリー、気分は悪くないか?
今からでも引き返してもいいんだ」
横を歩く公爵は、よほど私を姉に会わせたくないのか、行くのを中止にしてもいいとか引き返してもいいとか、何度も口にしている。
せっかくここまで来たんだから、絶対にあの女に会うんだから。
「私は大丈夫です。それより……公爵様、少し私に密着しすぎでは?」
私の体を支えてくれているようだけど、公爵の左手で私の左手を握り、公爵の右腕は私の腰をガッチリと抱いていて非常に歩きにくい。薄暗いけど足元はしっかり見えているから、手を引いてもらうだけで平気なのに。
私の知る昔の公爵は冷たい性格のクズで、こんな過保護で面倒なヤツではなかった。この男も、頭でも打って変わってしまったのではと思ってしまう。
「君の気分が悪くなるかもしれないから、体を支えていたい。それは許してくれ」
「分かりました……」
私達の前後には護衛騎士や牢番がいるのだから、ふらついても倒れる前に誰かしらは気付いてくれそうだけど……
公爵は、私が馬車に乗り降りする時に騎士が手を貸すことすら嫌がっていた。もしかして、オーロラはこの面倒な性格が嫌になって離れてしまったりして。
色々な令息を侍らせ、婚約者でもないのにベタベタしていたオーロラが、公爵一人だけのものになるとは思えない。
公爵と揉めて、先代の公爵様と夫人に消された可能性もある。
姉の件が落ち着いたら、本格的にオーロラ探しをしよう。
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