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二度目の話

久しぶりの人

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 王太子殿下の婚約者に内定しているのではという、私にとっては迷惑でしかない噂話によって、他の家門から命を狙われる可能性が出てきた私。

 そんな私のために、お父様は今までよりも多い人数の護衛を付けてくれるようになり、その護衛騎士の中には、私が騎士にさせるために、孤児院から勧誘して連れて来たアーサーがいたのだ。

 あの後アーサーは努力して、見習い騎士から正騎士へとなることが出来たようだ。


「あ、アーサー…。立派になって…
 よ…良かった!
 頑張ったね…。グスン…」


 アーサーの方が私の一つ年上なのにも関わらず、一度目の人生から彼を見てきた私としては、アーサーの母親とか姉のような気持ちが勝手に芽生えていて、涙が溢れてしまった。
 だって一度目の人生の時は、アーサーは暗殺者になっていて、私の目の前で近衛騎士に斬られて死んだのだから。


「お嬢様…。私がここに居られるのはお嬢様のお陰です。
 私の命に変えましてもお嬢様をお守り致します。」


 久しぶりに聞いたアーサーの声は低くなっていて、男らしい魅力が加わっていた。
 
 そんなカッコいいことを言ってくれるなんて…
 でもダメよ!


「アーサー、命は大切にして!絶対に死んじゃダメよ!
 他の騎士達も死ぬことだけは絶対に許しません!
 あなた達に何かあったら、悲しむ人がいるということを絶対に忘れないように!
 あなた達は私の大切な家族なのだから。」

「「はい!」」


 私は、一度目の人生で辛い思いをした経験から騎士達にそのように声を掛けたのだが、その何気ない言葉で騎士達の士気が上がっていたことには気づかなかった。


 お父様から聞いた話によると、アーサーは才能に恵まれながらも、努力することを怠らずに頑張ってきたらしく、今では若手騎士で一番の実力で、将来の騎士団長候補とまで言われているそうだ。

 やはり、私の目に狂いはなかったようね…

 そんなアーサーは、私の護衛として常に側に付いていてくれることになった。
 と言っても、学園内には連れて行けないのだけどね。


 そしてそのような状況であっても、学園には通わなくてはならない。
 登下校する時も、必ずアーサーと他の騎士達が付き添ってくれることになった。


「お嬢様、行ってらっしゃいませ!
 帰りもここでお待ちしております。」

「ありがとう。行ってくるわね。」


 アーサーは侯爵家の騎士として洗練されて、すっかりかっこよくなってしまった。
 登校して来た他の令嬢達が、アーサーを見つめていたもの。やはりアーサーには、暗殺者より騎士様がお似合いってことよ。


 アーサーとの再会を喜んでいた私は、また違う人物とも再会することになる。


「アナ、聞いた?副担のマギー先生が実家の家門を継ぐことになったからと退職されたけど、今日から新しい副担の先生が来るらしいわよ。」

「へぇ、優しい先生だといいわね。」

 この出来事も一度目の時と一緒ね。
 確か後任は若い女の先生で、ラッセル先生が可愛がっていたのよね。

「噂だと、クールそうな若い男の先生らしいわよ。
 カッコいい先生なら勉強もやる気が出るわよねー!」

「チェルシーは年上が好きよね。」

「あら、アナだって少し年上の殿方がいいでしょ?
 例えば、あのお義兄様とか…。」

「お義兄様は大好きだけど、家族としての好きよ。」

 
 そんな話をしていると、朝のホームルームの時間になり、ラッセル先生が教室に入って来る。


「皆様、おはようございます。
 今日は先日退職された、副担任のマギー先生の後任でいらした先生をご紹介いたします。
 先生、中にお入り下さいませ。」


 ラッセル先生が声を掛けると、以前に見たことのある人物が入って来た。


「ベネディクト・ミルズ先生です。
 先生はこの学園を首席で卒業された大変優秀な方で、私の自慢の教え子であり、皆様の先輩にもなる方ですわ。
 ミルズ先生、自己紹介お願い致します。」

「ベネディクト・ミルズです。
 今日からどうぞよろしく。」


 間違いない…。


 私が10歳くらいの時に、家庭教師を頼んだけど、お義兄様がキレて追い出したミルズ先生だわ。
 
 一度目の時に来た、若い女の先生はどこに行ってしまったのよ?

 ミルズ先生はあの時はまだ18歳くらいだったから、多分今は24~25歳くらいね。

 あの時より大人っぽくなって、雰囲気も少し柔らかくなったように見えるけど…。


 非常に気まずいわー!

 

 
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