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二度目の話
転校
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「皆様に新しいお仲間を紹介いたしますわ。
こちらはコールマン侯爵令嬢とクラーク伯爵令嬢です。お二人はマニー国の貴族学園から転校して来られました。
では、お二人から一言ずつ挨拶をお願い致します。」
「アナスタシア・コールマンと申します。
今日からどうぞよろしくお願い致します。」
「チェルシー・クラークと申します。
どうぞよろしくお願い致します。」
私とチェルシーは、母国の貴族学園の転校生として、クラスメイトに紹介されている。
すごいジロジロ見られるのね…。
でもチェルシーが一緒だから心強いわ。
「お二人が早く学園生活に馴染めるように、皆様が協力して差し上げて下さいね。」
担任の先生は一度目と同様に、ラッセル先生なのね。
ベテランの女の先生で、普段は穏やかで優しいが、キレると学園一怖いと言われる先生だ。
男社会である我が国で、女教師としてここまでやってきているのだから、強いに決まっているわね。
チェルシーとは、席が少し離れてしまって残念だわ。
でも、クラスメイトのメンバーは一度目の時と全く同じだから、癖のある人や面倒臭い人は知っているし、何とかなるわ。
一時間目の授業が終わり、休憩時期になる。
「あの…、コールマン様。
もしよろしければ、私が学園内を案内致しましょうか?」
……やはり来たわね。
「まあ!貴女様のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「私は、フーリン子爵家・次女のシャロンと申します。
コールマン侯爵令嬢にお会い出来たことを嬉しく思います。どうぞよろしくお願い致します。」
一度目の人生ぶりね。フーリン子爵令嬢…。
実はこのフーリン子爵令嬢とは、一度目の人生の時、そこそこ仲良くしていた時期があった。
真面目で礼儀正しくて、普通に綺麗な感じの子爵令嬢だと思っていたが、この女は王太子殿下が好きだったらしく、当時婚約者だった私に近づき、私と仲良くなることで、殿下の目に留まろうと考えたようだった。
『私、アナスタシア様の侍女になれるように、一生懸命頑張りますわ!』
その言葉が彼女の口癖だったように思う。
正妃に子が出来なければ側妃を迎えることが出来るのだが、そうなった場合に正妃の息のかかった侍女から側妃が選ばれたことが過去にあったらしく、フーリン子爵令嬢はそれを狙っていたのではないかと思われる。
子爵令嬢では、王妃殿下主催のお茶会に招待はされないし、よほどのことがない限り側妃にはなれない。殿下に近付くことすらも難しいと思う。
殿下から愛されれば愛妾にはなれるかもしれないが、最近の王族は世継ぎ争いを避けるためか、ほとんどが一夫一婦制に近い状態で愛妾を持つ人もいないのだ。
だから、隙のある私に近づいてきたのよね。
一度目の人生で、公爵家のメイド長にあっさり毒殺された私からすると、こんな風に見た目が普通で真面目で、良い子そうな女ほど怖いと思う。
もし王太子殿下と結婚したとして、この令嬢みたいな女を侍女として側に置いていたら、隠れて避妊薬を盛られて、子の産めない女として仕立て上げられてしまうかもしれない…
恐ろしすぎー!
私には洞察力が今一つ足りないからダメなのよ…
だから殿下からは抜けていると言われ、お義兄様からはおっちょこちょいと呼ばれるのだと思う。
あの時、ブレア公爵の愛人のフリをしたバーカー子爵令嬢にも騙されたし。あんな風にあっさり毒殺されるような小物には、やはり国母は無理だったわね。
一度目の人生で、そんな私に近づいてきて、友人の一人として一緒に学園生活を送っていたフーリン子爵令嬢だったが、鋭い殿下はすぐにフーリン子爵令嬢が、何のために私の側にいるのかを見破っていた。
『私は、大切なアナの友人を悪く言うつもりはないが、あのフーリン子爵令嬢は気をつけた方がいいと思う。あれは危険だな。
あの女が私を見る目は、赤ドレスを着て私に付き纏ってくる女狐達と同じ目をしている。いや…、それ以上かもしれないな。とても不快な目だ。』
軽く落ち込む私に殿下は、ある提案をしてきた。
それは私達が不仲になったフリをして、学園内にある噂話を流すこと。
あの二人には婚約解消の話が出ていて、殿下は別に好きな人がいるらしいという噂話だ。
そして私と同じクラスにいた、殿下の友人の妹君であるオルグレン伯爵令嬢に協力してもらい、一時的に殿下と仲良くしてもらう。
殿下が別の令嬢と仲良くしていて、そんな噂話が出たら、きっとあの女はあっさり私から離れていくだろうし、自分にとっての本当の味方が誰なのかが分かるだろうから、現実を冷静になって受け止めるようにということらしい。
その時の殿下は、私が殿下の婚約者としての自覚がまだ足りていないことを伝えたかったのだと思う。
次期王妃として、敵になりうる者を見極めろと。
陛下や王妃殿下、私の両親にも事情を話して、その計画は実行されることになるのであった。
こちらはコールマン侯爵令嬢とクラーク伯爵令嬢です。お二人はマニー国の貴族学園から転校して来られました。
では、お二人から一言ずつ挨拶をお願い致します。」
「アナスタシア・コールマンと申します。
今日からどうぞよろしくお願い致します。」
「チェルシー・クラークと申します。
どうぞよろしくお願い致します。」
私とチェルシーは、母国の貴族学園の転校生として、クラスメイトに紹介されている。
すごいジロジロ見られるのね…。
でもチェルシーが一緒だから心強いわ。
「お二人が早く学園生活に馴染めるように、皆様が協力して差し上げて下さいね。」
担任の先生は一度目と同様に、ラッセル先生なのね。
ベテランの女の先生で、普段は穏やかで優しいが、キレると学園一怖いと言われる先生だ。
男社会である我が国で、女教師としてここまでやってきているのだから、強いに決まっているわね。
チェルシーとは、席が少し離れてしまって残念だわ。
でも、クラスメイトのメンバーは一度目の時と全く同じだから、癖のある人や面倒臭い人は知っているし、何とかなるわ。
一時間目の授業が終わり、休憩時期になる。
「あの…、コールマン様。
もしよろしければ、私が学園内を案内致しましょうか?」
……やはり来たわね。
「まあ!貴女様のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「私は、フーリン子爵家・次女のシャロンと申します。
コールマン侯爵令嬢にお会い出来たことを嬉しく思います。どうぞよろしくお願い致します。」
一度目の人生ぶりね。フーリン子爵令嬢…。
実はこのフーリン子爵令嬢とは、一度目の人生の時、そこそこ仲良くしていた時期があった。
真面目で礼儀正しくて、普通に綺麗な感じの子爵令嬢だと思っていたが、この女は王太子殿下が好きだったらしく、当時婚約者だった私に近づき、私と仲良くなることで、殿下の目に留まろうと考えたようだった。
『私、アナスタシア様の侍女になれるように、一生懸命頑張りますわ!』
その言葉が彼女の口癖だったように思う。
正妃に子が出来なければ側妃を迎えることが出来るのだが、そうなった場合に正妃の息のかかった侍女から側妃が選ばれたことが過去にあったらしく、フーリン子爵令嬢はそれを狙っていたのではないかと思われる。
子爵令嬢では、王妃殿下主催のお茶会に招待はされないし、よほどのことがない限り側妃にはなれない。殿下に近付くことすらも難しいと思う。
殿下から愛されれば愛妾にはなれるかもしれないが、最近の王族は世継ぎ争いを避けるためか、ほとんどが一夫一婦制に近い状態で愛妾を持つ人もいないのだ。
だから、隙のある私に近づいてきたのよね。
一度目の人生で、公爵家のメイド長にあっさり毒殺された私からすると、こんな風に見た目が普通で真面目で、良い子そうな女ほど怖いと思う。
もし王太子殿下と結婚したとして、この令嬢みたいな女を侍女として側に置いていたら、隠れて避妊薬を盛られて、子の産めない女として仕立て上げられてしまうかもしれない…
恐ろしすぎー!
私には洞察力が今一つ足りないからダメなのよ…
だから殿下からは抜けていると言われ、お義兄様からはおっちょこちょいと呼ばれるのだと思う。
あの時、ブレア公爵の愛人のフリをしたバーカー子爵令嬢にも騙されたし。あんな風にあっさり毒殺されるような小物には、やはり国母は無理だったわね。
一度目の人生で、そんな私に近づいてきて、友人の一人として一緒に学園生活を送っていたフーリン子爵令嬢だったが、鋭い殿下はすぐにフーリン子爵令嬢が、何のために私の側にいるのかを見破っていた。
『私は、大切なアナの友人を悪く言うつもりはないが、あのフーリン子爵令嬢は気をつけた方がいいと思う。あれは危険だな。
あの女が私を見る目は、赤ドレスを着て私に付き纏ってくる女狐達と同じ目をしている。いや…、それ以上かもしれないな。とても不快な目だ。』
軽く落ち込む私に殿下は、ある提案をしてきた。
それは私達が不仲になったフリをして、学園内にある噂話を流すこと。
あの二人には婚約解消の話が出ていて、殿下は別に好きな人がいるらしいという噂話だ。
そして私と同じクラスにいた、殿下の友人の妹君であるオルグレン伯爵令嬢に協力してもらい、一時的に殿下と仲良くしてもらう。
殿下が別の令嬢と仲良くしていて、そんな噂話が出たら、きっとあの女はあっさり私から離れていくだろうし、自分にとっての本当の味方が誰なのかが分かるだろうから、現実を冷静になって受け止めるようにということらしい。
その時の殿下は、私が殿下の婚約者としての自覚がまだ足りていないことを伝えたかったのだと思う。
次期王妃として、敵になりうる者を見極めろと。
陛下や王妃殿下、私の両親にも事情を話して、その計画は実行されることになるのであった。
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