上 下
61 / 102
二度目の話

お似合いの二人

しおりを挟む
 マニー国の第三王子殿下とのダンスを終えた後、私とお義兄様はすぐに邸に帰って来た。


 ハァー。今日も疲れたわね。


 私が王子殿下とダンスをしている間、お義兄様はアンゲラー公爵令嬢とダンスを踊っていたけど、二人はとてもお似合いだったなぁ。
 長身で美形のお義兄様と、スタイル抜群で女神様のような美貌のアンゲラー公爵令嬢は、楽しそうに会話をしながら踊っていて、完璧な恋人同士のように見えた。

 もしかして、お義兄様の新しい恋人だったりして…。
 それとも、お義兄様の片想いだったりする?
 アンゲラー公爵令嬢と会話をするお義兄様は、他の令嬢方に対する態度とは違って見えたし、とにかく楽しそうに踊っていたわ。

 あんなお義兄様の表情は初めて見たかも知れない。
 お義兄様のことが気になり過ぎて、王子殿下とのダンスはあまり覚えていないのよね…。
 
 ハァー。ブラコンを早く卒業したい!
 どうしたら、ブラコンを卒業出来るのかしらね。
 



「アナ、デビュタントを終えてから元気がないな。
 第三王子殿下がアナにプレッシャーをかけるから、疲れてしまったか?
 王子殿下は、アナが王太子殿下の大勢いる婚約者の中の一人だということを知らないようだから厄介だな。
 王子殿下としては、マニー国の貴族達から、私達がぞんざいな扱いを受けないようにと、気を遣ってくれているのだろうが…。」

「お義兄様、私は大丈夫ですわ。
 最近忙しかったので、少し疲れが溜まっているだけだと思います。
 どちらにしても、この国にいられるのはあと数ヶ月だけですから、今まで通りにしっかりやろうと思っておりますわ。」

「そうだな。あと数ヶ月後には帰国するのだから、今まで通りに頑張れば何の問題もないし、残りの期間も楽しく過ごそうな。」

 楽しく…?

「お義兄様、アンゲラー公爵令嬢はとても素敵なお方ですわね。
 私、アンゲラー公爵令嬢の凛とした美しいお姿に、とても憧れてしまいましたわ。」

 アンゲラー公爵令嬢のことがずっと気になっていた私は、お義兄様に彼女の話題を振っていた。


「彼女はとても優秀な御令嬢だ。
 デビュタントの日、私達に絡んできたバルツァー伯爵令嬢のような、男ばかりのアカデミーに結婚相手を探しに来ただけの令嬢とは全然違う。」


 お義兄様が御令嬢を褒めている姿を初めて見た…


 勉学に対して、非常に厳しいスタンスのお義兄様が認めるくらい、凄い方ってことなのね。


「そこまで優秀で、お美しくて、公爵令嬢という身分のお方ですから、きっとアカデミーでは殿方に人気なのでしょうね。」

「いや…。あれは…、どうだろうな。」

 お義兄様が珍しく言葉を詰まらせている!
 どういうこと?

「彼女はアカデミーを卒業したら、農業大国のラース国の王子に嫁ぐらしい。
 ラース国で役に立ちたいからと、アカデミーでは農業を選択して勉強しているんだ。」

「え!ラース国に嫁がれるのですか?
 お義兄様はそれでいいのですか?」

「アナ、彼女は国のための政略結婚で嫁ぐのだ。
 マニー国は、経済大国で医療も進んでいるが、野菜や果物・小麦などはラース国からの輸入に頼っている。
 だから、彼女がラース国に嫁ぐということは、大きな意味を持つものなんだよ。
 私は彼女の友人の一人として、彼女のこれからの幸せを祈りたいと思っている。」

「そうですか…。」

 
 アンゲラー公爵令嬢は、本当にすごい方なのね。
 嫁ぎ先で役に立ちたいからと、アカデミーでしっかり勉強して、お義兄様に認められるくらい優秀で。

 死神に関わりたくないという理由で、お義兄様や使用人達を道連れにして、留学に来ている私とは大違いだわ。

 いつもお義兄様におっちょこちょいだとバカにされている、ちんちくりんの私とは大違い…。


 あっ!私…、また卑屈になっている。


 これでは一度目の時の私と一緒だわ。
 駄目よ。今世はあの時とは別の生き方をすると決めているのだから。

 今の私に出来ることは、留学生として学業で結果を出すことよ。

 しっかりやらないと!
 




 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈完結〉ここは私のお家です。出て行くのはそちらでしょう。

江戸川ばた散歩
恋愛
「私」マニュレット・マゴベイド男爵令嬢は、男爵家の婿である父から追い出される。 そもそも男爵の娘であった母の婿であった父は結婚後ほとんど寄りつかず、愛人のもとに行っており、マニュレットと同じ歳のアリシアという娘を儲けていた。 母の死後、屋根裏部屋に住まわされ、使用人の暮らしを余儀なくされていたマニュレット。 アリシアの社交界デビューのためのドレスの仕上げで起こった事故をきっかけに、責任を押しつけられ、ついに父親から家を追い出される。 だがそれが、この「館」を母親から受け継いだマニュレットの反逆のはじまりだった。

公爵家令嬢と婚約者の憂鬱なる往復書簡

西藤島 みや
恋愛
「パルマローザ!私との婚約は破棄してくれ」 「却下です。正式な手順を踏んでくださいませ」 から始まる、二人のやりとりと、淡々と流れる季節。 ちょっと箸休め的に書いたものです。 3月29日、名称の揺れを訂正しました。王→皇帝などです。

結婚三年、私たちは既に離婚していますよ?

杉本凪咲
恋愛
離婚しろとパーティー会場で叫ぶ彼。 しかし私は、既に離婚をしていると言葉を返して……

記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。

ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。 毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。

【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。 10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。 婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。 その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。 それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー? 【作者よりみなさまへ】 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!

ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。 自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。 しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。 「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」 「は?」 母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。 「もう縁を切ろう」 「マリー」 家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。 義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。 対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。 「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」 都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。 「お兄様にお任せします」 実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

可愛がってあげたい、強がりなきみを。 ~国民的イケメン俳優に出会った直後から全身全霊で溺愛されてます~

泉南佳那
恋愛
※『甘やかしてあげたい、傷ついたきみを』 のヒーロー、島内亮介の兄の話です! (亮介も登場します(*^^*)) ただ、内容は独立していますので この作品のみでもお楽しみいただけます。 ****** 橋本郁美 コンサルタント 29歳 ✖️ 榊原宗介 国民的イケメン俳優 29歳 芸能界に興味のなかった郁美の前に 突然現れた、ブレイク俳優の榊原宗介。 宗介は郁美に一目惚れをし、猛アタックを開始。 「絶対、からかわれている」 そう思っていたが郁美だったが、宗介の変わらない態度や飾らない人柄に惹かれていく。 でも、相手は人気絶頂の芸能人。 そう思って、二の足を踏む郁美だったけれど…… ****** 大人な、 でもピュアなふたりの恋の行方、 どうぞお楽しみください(*^o^*)

処理中です...