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24 閑話 リリアン
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出戻りの母の娘として、貧乏な男爵家で平民と変わらない生活を送っていた私は、十三歳の時に母の再婚相手の伯爵家に引っ越すことになる。
今まで貧乏で苦労したけど、お金持ちの伯爵家の娘になるのだから、これからは楽して贅沢な生活が出来ると期待していたのに、伯爵家での生活は思っていたものとは違っていた。
大きな邸で素敵なドレスを着て、美味しいものを食べさせてもらい、贅沢はさせてもらえたけど、今までのように自由に遊んで生活することは許されず、伯爵家の人間として学ばなくてはいけないことが沢山あるとか言われて、窮屈な毎日を送らなくてはならなくなった。
平民の友人達は、私は可愛いから笑っていれば何でも許してもらえるとか言ってチヤホヤしてくれたのに、この伯爵家には笑ってお願いしてもチヤホヤしてくれる人は誰もいなかった。
お義父様になる伯爵様は素敵なおじ様だった。可愛い私を見て溺愛してくれると思っていたのに、興味すら持ってくれず、目も合わせてくれないし声も掛けてくれない。
カッコいいお義兄様とは仲良くなりたくて、私の知るやり方でお義兄様に近付こうとしたけど、やり方が悪かったのか露骨に避けられて、気がついたら騎士団の寮に住むとか言って、邸を出て行ってしまった。
そして、お義姉様のことは初対面の時から大嫌いだった。理由は可愛いから。ただそれだけ。
スラっとした長身に、バランスの取れた綺麗な顔立ち、品の良い話し方、生まれながらの令嬢って感じで、私とは違う雰囲気の美少女だった。
この家で可愛い娘は私だけでいいのに、この義姉は邪魔だと思った。
平民の友達は、私なら貴族の中で生活しても可愛いから上手くやっていけるって言ってくれたのに、貴族の中にはお義姉様以外にも綺麗な人が沢山いて、私は特別扱いしてもらえなかった。
勉強もマナーも面倒だし、こんな私を見下す人が沢山いて全然面白くない。
でもお義姉様だけは見下すようなことはしてこなかった。私が何を言っても、怒ったり言い返してきたりすることはなかった。育ちが良い、おっとりした性格のお義姉様を見て、私は尚更イライラした。
だから、お義姉様にはどんなことをしても許されるのだろうと思い込み、酷い態度を取り続けた。
そんな私は、お義姉様の友人達からは最悪の義妹として認識されていたようだった。
ある時、大嫌いなお義姉様に婚約者ができた。真面目で澄ましたお義姉様なんて、一緒にいて面白くないから、相手の男も大したことはないだろうと思っていた。
しかし、相手は名門の侯爵家の令息で、令息がお義姉様を好きになり、婚約を申し込んできたらしい。そして何よりもカッコ良かった。
悔しい! 私だってこんなに可愛いのだから、素敵な婚約者が欲しいと思った。
しかし、遊んでくれる人はいても、真剣に交際してくれる人や婚約を申し込んでくれる人は現れなかった。
どうして? 私の何が駄目なの?
そんな時、友人の男爵令嬢から仮面舞踏会に誘われる。楽しいと言われてついて行くと、若くて可愛いってみんなが言ってくれて、色々な男性からダンスに誘われて、私は大人気だった。
仮面舞踏会は既婚者のオバさんばかりだから、私みたいな若くて可愛い子と一夜を共にしたいとか熱く誘われて、気分の良くなった私は、その日の夜に色々と経験してしまった。
後で友人に聞いた話によると、爵位が低くて裕福でない令嬢の中には、仮面舞踏会に行って自分を援助してくれる殿方を探したりするらしい。
私は援助してもらうためではなく、男性がチヤホヤしてくれることが嬉しくて、何度も参加するようになっていた。
ある夜、いつものように友人と仮面舞踏会に来ていると、見たことのある令息が数人がいる。
顔は仮面で隠していたが、まだ若く、場慣れしていない令息達は目を引いていた。
あの赤みのある茶色の髪の長身の令息は、もしかしてお義姉様の婚約者のアストン様では?
もしそうだったらかなり面白いわ。今日は誰とも過ごさずに、彼を観察していよう。
私はその男性をジッと観察していたのだが、間違いなくアストン様だと思った。あの体つきや身のこなし、絶対にアストン様だわ。
彼は、一人の女性とダンスを踊った後に休憩室の方に行ってしまった。
うわー! あんなにお義姉様に愛を囁いていたくせに、やることはやるのね。
私はこっそり二人を追いかけて、部屋の近くの窓のカーテンに隠れて様子を伺うことにした。
しばらく待った後、女性が部屋から出てきた姿を確認した私は、素早くその部屋の中に入った。
部屋の中は、情事の後だということが分かる状態だった。
ふふ……、なんて面白いの!
相思相愛ぶって、お義姉様を溺愛するフリをしておきながら、裏で不貞をしているなんて。
お義姉様、裏切られてるわよーって、今から呼びに行きたいくらいだわ。
やっぱり真面目なお義姉様では物足りなかったのね。
私は、急に部屋に乱入した私を見て驚くアストン様に、お義姉様にこのことをバラされたくないなら、私の秘密の恋人になって欲しいと脅していた。
アストン様は、余程お義姉様にバラされたくなかったようで、私のいいなりになってくれた。
お義姉様が私達の関係に気付いた時の顔は見ものだった。みんなから素晴らしい淑女だと言われていたお義姉様の顔は、悲しみを滲ませて、今にも取り乱しそうになっていたからだ。
不幸なお義姉様を見るのが楽しくて、アストン様を使って色々と困らせていたら、優しいお義姉様は変わってしまった。私に厳しいことを言ってきたり、やり返してきたり、馬鹿にしたような目で見てきたり……
そんなお義姉様を見て、伯爵家の使用人達まで私に対しての態度が悪くなっていた。
後で気付いたことだが、お義姉様が私を見限ったから、使用人達も私に対して我慢することをやめたようだった。
アストン様は、お義姉様に嫌われた怒りを私にぶつけてきてとても怖かった。
私は怒らせてはいけない人達を沢山怒らせてしまったようだ。
そのことに気付いたのは、お義姉様が結婚式の当日にいなくなってから。
あの真面目なお義姉様が、アストン様や伯爵家を捨てるとは思っていなかった……
今まで貧乏で苦労したけど、お金持ちの伯爵家の娘になるのだから、これからは楽して贅沢な生活が出来ると期待していたのに、伯爵家での生活は思っていたものとは違っていた。
大きな邸で素敵なドレスを着て、美味しいものを食べさせてもらい、贅沢はさせてもらえたけど、今までのように自由に遊んで生活することは許されず、伯爵家の人間として学ばなくてはいけないことが沢山あるとか言われて、窮屈な毎日を送らなくてはならなくなった。
平民の友人達は、私は可愛いから笑っていれば何でも許してもらえるとか言ってチヤホヤしてくれたのに、この伯爵家には笑ってお願いしてもチヤホヤしてくれる人は誰もいなかった。
お義父様になる伯爵様は素敵なおじ様だった。可愛い私を見て溺愛してくれると思っていたのに、興味すら持ってくれず、目も合わせてくれないし声も掛けてくれない。
カッコいいお義兄様とは仲良くなりたくて、私の知るやり方でお義兄様に近付こうとしたけど、やり方が悪かったのか露骨に避けられて、気がついたら騎士団の寮に住むとか言って、邸を出て行ってしまった。
そして、お義姉様のことは初対面の時から大嫌いだった。理由は可愛いから。ただそれだけ。
スラっとした長身に、バランスの取れた綺麗な顔立ち、品の良い話し方、生まれながらの令嬢って感じで、私とは違う雰囲気の美少女だった。
この家で可愛い娘は私だけでいいのに、この義姉は邪魔だと思った。
平民の友達は、私なら貴族の中で生活しても可愛いから上手くやっていけるって言ってくれたのに、貴族の中にはお義姉様以外にも綺麗な人が沢山いて、私は特別扱いしてもらえなかった。
勉強もマナーも面倒だし、こんな私を見下す人が沢山いて全然面白くない。
でもお義姉様だけは見下すようなことはしてこなかった。私が何を言っても、怒ったり言い返してきたりすることはなかった。育ちが良い、おっとりした性格のお義姉様を見て、私は尚更イライラした。
だから、お義姉様にはどんなことをしても許されるのだろうと思い込み、酷い態度を取り続けた。
そんな私は、お義姉様の友人達からは最悪の義妹として認識されていたようだった。
ある時、大嫌いなお義姉様に婚約者ができた。真面目で澄ましたお義姉様なんて、一緒にいて面白くないから、相手の男も大したことはないだろうと思っていた。
しかし、相手は名門の侯爵家の令息で、令息がお義姉様を好きになり、婚約を申し込んできたらしい。そして何よりもカッコ良かった。
悔しい! 私だってこんなに可愛いのだから、素敵な婚約者が欲しいと思った。
しかし、遊んでくれる人はいても、真剣に交際してくれる人や婚約を申し込んでくれる人は現れなかった。
どうして? 私の何が駄目なの?
そんな時、友人の男爵令嬢から仮面舞踏会に誘われる。楽しいと言われてついて行くと、若くて可愛いってみんなが言ってくれて、色々な男性からダンスに誘われて、私は大人気だった。
仮面舞踏会は既婚者のオバさんばかりだから、私みたいな若くて可愛い子と一夜を共にしたいとか熱く誘われて、気分の良くなった私は、その日の夜に色々と経験してしまった。
後で友人に聞いた話によると、爵位が低くて裕福でない令嬢の中には、仮面舞踏会に行って自分を援助してくれる殿方を探したりするらしい。
私は援助してもらうためではなく、男性がチヤホヤしてくれることが嬉しくて、何度も参加するようになっていた。
ある夜、いつものように友人と仮面舞踏会に来ていると、見たことのある令息が数人がいる。
顔は仮面で隠していたが、まだ若く、場慣れしていない令息達は目を引いていた。
あの赤みのある茶色の髪の長身の令息は、もしかしてお義姉様の婚約者のアストン様では?
もしそうだったらかなり面白いわ。今日は誰とも過ごさずに、彼を観察していよう。
私はその男性をジッと観察していたのだが、間違いなくアストン様だと思った。あの体つきや身のこなし、絶対にアストン様だわ。
彼は、一人の女性とダンスを踊った後に休憩室の方に行ってしまった。
うわー! あんなにお義姉様に愛を囁いていたくせに、やることはやるのね。
私はこっそり二人を追いかけて、部屋の近くの窓のカーテンに隠れて様子を伺うことにした。
しばらく待った後、女性が部屋から出てきた姿を確認した私は、素早くその部屋の中に入った。
部屋の中は、情事の後だということが分かる状態だった。
ふふ……、なんて面白いの!
相思相愛ぶって、お義姉様を溺愛するフリをしておきながら、裏で不貞をしているなんて。
お義姉様、裏切られてるわよーって、今から呼びに行きたいくらいだわ。
やっぱり真面目なお義姉様では物足りなかったのね。
私は、急に部屋に乱入した私を見て驚くアストン様に、お義姉様にこのことをバラされたくないなら、私の秘密の恋人になって欲しいと脅していた。
アストン様は、余程お義姉様にバラされたくなかったようで、私のいいなりになってくれた。
お義姉様が私達の関係に気付いた時の顔は見ものだった。みんなから素晴らしい淑女だと言われていたお義姉様の顔は、悲しみを滲ませて、今にも取り乱しそうになっていたからだ。
不幸なお義姉様を見るのが楽しくて、アストン様を使って色々と困らせていたら、優しいお義姉様は変わってしまった。私に厳しいことを言ってきたり、やり返してきたり、馬鹿にしたような目で見てきたり……
そんなお義姉様を見て、伯爵家の使用人達まで私に対しての態度が悪くなっていた。
後で気付いたことだが、お義姉様が私を見限ったから、使用人達も私に対して我慢することをやめたようだった。
アストン様は、お義姉様に嫌われた怒りを私にぶつけてきてとても怖かった。
私は怒らせてはいけない人達を沢山怒らせてしまったようだ。
そのことに気付いたのは、お義姉様が結婚式の当日にいなくなってから。
あの真面目なお義姉様が、アストン様や伯爵家を捨てるとは思っていなかった……
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