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40 嫌いな男
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テッドは苦痛に表情を歪めた後、マリアの手を取ると人目も憚らずに跪く。
「マリア……、本当に悪かった。お前を裏切ったことを後悔している。
やっと目が覚めたんだ。どんな時でも私に愛情を注いでくれたマリアこそが真実の愛なのだと。
今すぐ前のような関係に戻れるとは思っていない。だが、私にもう一度チャンスをくれないか?」
真実の愛? テッドはこんな場所で何を言ってるの?
偶然居合わせた人達は、マリア達を興味深そうに眺めてヒソヒソ言っている。
「ねぇ、見て! プロポーズをしているのかしら?」
「こんな所で? もっと良い場所があるじゃない」
「あれは浮気男が恋人に必死に謝っているんじゃないの?」
周りからの刺さるような視線は、更にマリアを焦らせた。
「ちょっと、こういうのは困るわ!
何かの罰ゲームでもしているの? それともドリスさんと別れたから、私に擦り寄ってきた?
どちらにしても迷惑よ。こういうことは二度としないで!」
マリアはテッドの手を振り払うと、その場から逃げ出した。
せっかくの休みなのに最悪だわ。今日はもう帰ろう。
翌日、いつものように出勤して忙しく働いていると、あっという間に昼休みになっていた。昼食は使用人用の食堂で食べる決まりがあり、メイド達は交代で昼休みを取る。今日はマリアが先に昼休みを取ることになっていて、少し早めの昼食ということもあり、食堂には誰も来ていなかった。
「あれっ? 君か!」
一人で食事をしていると、苦手なダレルが食堂に入ってきた。
無視するわけにもいかず、一言挨拶をしてそのまま無言で食事を続けていると……
「昨日、君が見目のいい男から跪かれている所を偶然見てしまった。
君って、純情そうに見えてなかなかやるんだな」
あの現場をこの男に見られていたなんて最悪だわ。
ショックを受けて黙っていると、ダレルは蔑むような目でマリアを見つめている。
「ケイヒル卿にはこのことを話しておく。平民女は自由に男を取っ替え引っ替え出来るからやめた方がいいと……」
この男はまた好き勝手に言っているわ。どうして、私にばかり当たりが強いのかしら?
こういうタイプは大嫌いよ……
いつもは言い返す前に居なくなってしまうけど、今日こそは言い返してやる!
「どうぞお話し下さい。しかし、私の事情も知らずに憶測だけで話をするのはやめて下さい。とても迷惑ですわ。失礼します!」
まだ食事は残っていたが、ダレルのいる場所で食べる気にはなれず、マリアはサッと片付けて食堂から出てきてしまった。
その日の夜、マリアはアンに今日の出来事を愚痴っていた。
「えー? あの元恋人に跪かれていたところを、ダレルに見られたの?
で、それをネチネチ言ってきたって? あの男は性格悪いね」
「でも、今日は言い返してやりました。何も知らないくせに、自分は何でもお見通しなんだというような態度で話をしてくるのが許せなくて……」
「いいんじゃない。マリアは何も悪くないんだから。
ダレルって平民でも実家が裕福らしいし、見た目は良いからモテるらしいけど、なんか……女を見下したようなところがあって私も苦手だったんだよね」
アンがダレルを苦手だと聞いて、何となく安心してしまう。
「ところで、元恋人が付き纏ってくるのはストーカーみたいだよ。
マリアが迷惑しているからやめて欲しいって、クリフから話をしてもらうかい?」
「クリフさんとテッドが気まずくなってしまうのでそれは大丈夫です。あれでも部隊長らしいですし。
それに、テッドが苦労して騎士になったのは知っているので、評判を悪くするようなことはしたくないんです。テッドの仕送りを実家のおじさん達は当てにしていると思いますし」
あんなテッドでも田舎の家族は頼りにしているのだから、波風を立てるようなことはしたくなかった。
「幼馴染で家族ぐるみの付き合いだったから、気を使うのは分かるけど、あまりに酷いような時は第三者に話をしてもらった方がいいからね」
「はい。それは分かっています」
その後、休みの日に外出するのはやめたので、テッドに会うことはなかった。
しかし、ケイヒル卿やダレルとは仕事の都合上、ほぼ毎日のように顔を合わせている。気まずさはあるが仕事だからと割り切り、表面上は普通に振る舞うようにしていたが、ケイヒル卿は何かを言いたげな目で見つめてくるし、ダレルは相変わらず感じの悪いままだった。
そんなある日、マリアはお嬢様の外出に付き添うことになる。
「マリア……、本当に悪かった。お前を裏切ったことを後悔している。
やっと目が覚めたんだ。どんな時でも私に愛情を注いでくれたマリアこそが真実の愛なのだと。
今すぐ前のような関係に戻れるとは思っていない。だが、私にもう一度チャンスをくれないか?」
真実の愛? テッドはこんな場所で何を言ってるの?
偶然居合わせた人達は、マリア達を興味深そうに眺めてヒソヒソ言っている。
「ねぇ、見て! プロポーズをしているのかしら?」
「こんな所で? もっと良い場所があるじゃない」
「あれは浮気男が恋人に必死に謝っているんじゃないの?」
周りからの刺さるような視線は、更にマリアを焦らせた。
「ちょっと、こういうのは困るわ!
何かの罰ゲームでもしているの? それともドリスさんと別れたから、私に擦り寄ってきた?
どちらにしても迷惑よ。こういうことは二度としないで!」
マリアはテッドの手を振り払うと、その場から逃げ出した。
せっかくの休みなのに最悪だわ。今日はもう帰ろう。
翌日、いつものように出勤して忙しく働いていると、あっという間に昼休みになっていた。昼食は使用人用の食堂で食べる決まりがあり、メイド達は交代で昼休みを取る。今日はマリアが先に昼休みを取ることになっていて、少し早めの昼食ということもあり、食堂には誰も来ていなかった。
「あれっ? 君か!」
一人で食事をしていると、苦手なダレルが食堂に入ってきた。
無視するわけにもいかず、一言挨拶をしてそのまま無言で食事を続けていると……
「昨日、君が見目のいい男から跪かれている所を偶然見てしまった。
君って、純情そうに見えてなかなかやるんだな」
あの現場をこの男に見られていたなんて最悪だわ。
ショックを受けて黙っていると、ダレルは蔑むような目でマリアを見つめている。
「ケイヒル卿にはこのことを話しておく。平民女は自由に男を取っ替え引っ替え出来るからやめた方がいいと……」
この男はまた好き勝手に言っているわ。どうして、私にばかり当たりが強いのかしら?
こういうタイプは大嫌いよ……
いつもは言い返す前に居なくなってしまうけど、今日こそは言い返してやる!
「どうぞお話し下さい。しかし、私の事情も知らずに憶測だけで話をするのはやめて下さい。とても迷惑ですわ。失礼します!」
まだ食事は残っていたが、ダレルのいる場所で食べる気にはなれず、マリアはサッと片付けて食堂から出てきてしまった。
その日の夜、マリアはアンに今日の出来事を愚痴っていた。
「えー? あの元恋人に跪かれていたところを、ダレルに見られたの?
で、それをネチネチ言ってきたって? あの男は性格悪いね」
「でも、今日は言い返してやりました。何も知らないくせに、自分は何でもお見通しなんだというような態度で話をしてくるのが許せなくて……」
「いいんじゃない。マリアは何も悪くないんだから。
ダレルって平民でも実家が裕福らしいし、見た目は良いからモテるらしいけど、なんか……女を見下したようなところがあって私も苦手だったんだよね」
アンがダレルを苦手だと聞いて、何となく安心してしまう。
「ところで、元恋人が付き纏ってくるのはストーカーみたいだよ。
マリアが迷惑しているからやめて欲しいって、クリフから話をしてもらうかい?」
「クリフさんとテッドが気まずくなってしまうのでそれは大丈夫です。あれでも部隊長らしいですし。
それに、テッドが苦労して騎士になったのは知っているので、評判を悪くするようなことはしたくないんです。テッドの仕送りを実家のおじさん達は当てにしていると思いますし」
あんなテッドでも田舎の家族は頼りにしているのだから、波風を立てるようなことはしたくなかった。
「幼馴染で家族ぐるみの付き合いだったから、気を使うのは分かるけど、あまりに酷いような時は第三者に話をしてもらった方がいいからね」
「はい。それは分かっています」
その後、休みの日に外出するのはやめたので、テッドに会うことはなかった。
しかし、ケイヒル卿やダレルとは仕事の都合上、ほぼ毎日のように顔を合わせている。気まずさはあるが仕事だからと割り切り、表面上は普通に振る舞うようにしていたが、ケイヒル卿は何かを言いたげな目で見つめてくるし、ダレルは相変わらず感じの悪いままだった。
そんなある日、マリアはお嬢様の外出に付き添うことになる。
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