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新しい生活

嫌な知らせ

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 バーネット様に会った後、私は最悪な気分で数日間を過ごしていた。

 そんなある日、王妃殿下から養子縁組の話をされる。
 

「アメリア、公爵家に養子縁組をする話なのだけど、前アンブリッジ公爵夫人に手紙を書いたら、貴女を娘として迎えると手紙の返事が届いたわ。」

「前アンブリッジ公爵夫人ですか?」

「ええ。前アンブリッジ公爵夫人は、私の従姉妹なのよ。今は領地に住んでいらっしゃるみたいだけど、養子縁組の書類を作成するのに、近々王都に来てくれることになったわ。
 アメリアは、急ぎで自分の両親に手紙を書きなさい。」


 王妃殿下は本当に話を進めてくれていたようだ。
 他の執務で多忙なのに、私のためにそこまでしてくれていたのだと知り、心が温かくなる。


「王妃殿下、本当にありがとうございます。
 両親には急ぎで手紙を出したいと思います。」

「いいのよ。本当はアンブリッジ公爵に直接お願いしようかと思ったのだけれど、公爵は特使として、今はイング国に行っているのよね。
 領地にいる前公爵夫人とのやり取りだったから、少し時間がかかってしまったわ。」


 アンブリッジ公爵様は、学園の生徒会でお世話になった尊敬する先輩だ。まさか、あの方の公爵家にお世話になる日が来るなんて。

「アメリア、今すぐに手紙を書きなさい。すぐに近衛騎士に届けてもらうわ。」

「はい!」


 しかし、急ぎで手紙を書いている私のところに、この前の近衛騎士がまたやって来る。


「シャノン伯爵令嬢。お忙しいところ大変申し訳ありません。」


 本当に申し訳なさそうな顔をしている。


「はい。何でしょうか?」


「この前の神官がまた来ております。
 シャノン伯爵令嬢に面会がしたいそうです。」


 また来たのね…。


「神官様は1人でいらしているのでしょうか?」

「いえ…。バーネット卿も一緒です。」


 嫌な予感がする。


「シャノン様。表情が浮かないわね。
 気分が悪いなら、面会は断っても構わないと思うわ。
 それとも私が付き添いましょうか?」


 忙しいヘミングウェイ伯爵夫人にそこまでしてもらうわけにはいかない。
 面会はしたくないけど、逃げるわけにもいかない。


「夫人、1人で大丈夫ですわ。
 少し席を離れますことをお許しください。」

「気をつけてね。」

「はい…。」






 案内されたのは、この前と同じ応接室だった。

 中に入ると、神官様とバーネット様がいる。
 バーネット様が何となく機嫌の良さそうな顔をしているような気がするわ。
 

「シャノン伯爵令嬢。今日も急に来てしまって申し訳ありません。
 急ぎで貴女にお知らせしたいことがありまして。」


 ああ…。この先の話は聞きたくない。


「はい。」

「貴女とバーネット卿の死後離婚は取り消させて頂くことに決まりました。
 バーネット卿は生きていらっしゃったので、教会内でも取り消しは当然だという考えに至りました。
 あなた方は以前と同様に夫婦だと認められますし、近々、教会から正式に発表されることになります。」


 神官の話を聞く私は、目の前が真っ暗になっていた。


「シャノン伯爵令嬢…?」

「神官様、妻の立場からの離縁はどうすれば叶いますか?」

「それはどういうことでしょうか?」

「リア!私は離縁はしないと言っただろう?」


 バーネット様に目を向ける余裕なんてなかった。
 この人に何を言ってもムダなのだと分かったから。


「婚約期間に不貞行為をしたり、娼館で女遊びをされたりするようなお方でしたので、私達夫婦の関係は破綻しておりました。
 このような場合でも、夫の同意がなければ離縁は難しいのでしょうか?」

「リア、それは違う!私は君と結婚してからは、そんなことはしていない。」

「婚約期間中に何度も私を裏切ったことは認めて下さるのね…。
 貴方の汚い手でこれ以上触れられたくないので、私は離縁したいと思っていますわ。」

「……っ!」


 絶句するバーネット様の隣で、神官様は冷静な反応を見せる。


「シャノン伯爵令嬢。その話は教会ではなく、裁判所にすべき話だと思われます。
 ただ…。私個人としては、貴女が気の毒だとは思います。
 世間から理想的な夫婦だと思われていた夫妻にそんな過去があっただなんて、誰も考えていないでしょうね…。」


 神官様は同情はしてくれているが、私達の離縁については教会では対応出来ないということなのね。
 これ以上、この場所で何を話しても無理ということかしら。


「神官様。忙しい中、何度もこちらにいらして頂いてありがとうございました。
 話はこれだけでしたら、私は仕事に戻らせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「ええ…。仕事に戻って構いませんよ。」

「色々お世話になりました。ありがとうございました。」

「いえ。ただ…、3年我慢してみてもいいかも知れませんね。」

「え?」

「失礼、ただの独り言です。」

「私はこれで失礼致しますわ。」



 この前のように、バーネット様と2人きりになりたくなかった私は、早々と応接室から退出した。




 
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