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未亡人の私は

何度も

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 結局、殿下に抱き潰されてしまった…。
 これは閨指導になるの?殿下にはもう必要ないと思うのだけど。

 私が目覚めた時に、すでに殿下の姿はなかった。体が怠いが、早く帰らなければ。
 急いで湯浴みしてもらい、帰る準備をしていると、ヘミングウェイ伯爵夫人が来てくれる。

「夫人、今日帰られます?せっかくですから、もっと滞在されては?」

「伯爵家に迷惑をかけてしまいますので、急ぎで帰らせて頂きたく思います。」

「実は、殿下が夫人に無理をさせてしまったことを気にされていまして、今日も滞在されてはと話されていたのですが…。」

「それは遠慮させて頂きますわ。
 殿下には、もう閨指導は必要ないかと思われますし。」

「ええ。まあ、そうでしょうね…。
 あの殿下が閨指導を受けたことも驚きでしたが、2日連続で望まれるなんて、王妃殿下は大喜びでしたし、夫人に感謝すると話されていましたわ。」

「…お、お役に立てたようで、光栄でございます。」

「こちらは王妃殿下からお預かりしてきました報酬になります。額が大きいので、持ち歩きしやすいように小切手に致しましたわ。」

 小切手に記入されてあった金額は、あり得ない金額だった…。
 1人で住む家を買って、贅沢しなければ何年も生活出来そうな金額。

「…こんなに頂いていいのでしょうか?指導らしいことは何もしておりませんが。」

「ふふっ!口止め料が入っておりますのよ。
 それと…、喪が明けたばかりの夫人に無理なお願いをしてしまったことを、王妃殿下は心を痛めていらっしゃいました。
 しかし、こんなことをお願いできるのは夫人しかいなかったのです。本当に申し訳ありませんでした。」

「いえ…。私こそ、旦那様のことは忘れて、これからは自由に生きてみたいと思っていましたの。
 この報酬は、新生活のために有り難く使わせて頂きますわ。」

「夫人は、貴族生活を離れたいと考えてらっしゃるの?」

「いずれは誰かの後添いにならなければならないのでしょうが、しばらくは自分で仕事をしながら、自由に過ごしてみたいですわ。
 ふふっ。難しいことなのでしょうけど。」

「そうですか。夫人の今後の希望を王妃殿下にお伝えしておきますわ。きっと、いい仕事を紹介してくださるはずですから。」

「破壊の報酬を頂いて、更に仕事まで…、そこまでお世話になってしまっていいのでしょうか?」

「大丈夫ですわ。王妃殿下は、ああ見えて世話焼きなところがありますから。
 近々、また連絡させて頂きますわね。」

「ありがとうございます…。」


 ヘミングウェイ伯爵夫人は、王妃殿下とご学友だったと言っていた。話しやすくて、色々と配慮してくれる方で良かった。





 その日、疲れ切ってバーネット伯爵家に戻った私を出迎えたのは、アドルフ様だった。

「義姉上、顔色が悪いです。そこまで激務だったのでしょうか?
 無理に仕事なんてなさらなくていいのです。この先は私が面倒を見るのですから。
 今日は早く休んで下さいね。」

「ご心配をおかけしました。しかし、いい経験になりましたわ。
 私は大丈夫ですわ。いつもありがとうございます。」

 やはり、心配していてくれたようだ。
 うん!今月中に出て行こう。ここに長くいたら、アドルフ様の邪魔をしてしまうわ。


 その数日後に、ヘミングウェイ伯爵夫人から手紙が届けられる。

 侍女研修をまたお願いしたいことと、その時に今後のお話をしたいと書いてある。

 またするの…?もう必要ないと思ったのに。
 でも、今後の話をしたいと書いてあるってことは、仕事の話をしてくれるのかしら。
 どちらにしても王妃殿下からの依頼だし、あんなに高額な報酬を頂いているのだから断れない。殿下も普通に優しい人だから、我慢しよう。

 仕事はしなくていい、断れないのかと何度も言ってくるアドルフ様を何とか説得して、泊まり込みの侍女研修に向かう私であった。


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