まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ

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未亡人の私は

私の知らなかったこと

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「今だから話せることなのですが…。
 2人が結婚する前に、両親が話しているのを立ち聞きしてしまったことがありまして。」

 真面目なアドルフ様でも立ち聞きするのね…。

「立ち聞きですか…?」

「ええ。両親が話していたのです。アメリア嬢は、マリアにそっくりだと。仕草や声まで一緒で、マリアの生まれ変わりに違いないと。」

「マリアにそっくり?」

「はい。マリアと言っていました。父上と母上の親しい友人のような言い方でした。」

 その名前は、お祖父様やお祖母様から聞いたことがある。

「恐らく…、マリアとは亡くなった父の姉かと。父にもよく似ていると言われてきましたから。
 もしかしたら、亡くなった伯母とお義父様達は、学園で交流があったのかもしれませんね。伯母は確か父より四つくらい年上だったらしいですから、伯母の学園での交友関係を、父は知らないのかもしれませんし。」

「義姉上の伯母上でしたか…。そう言えば、これも今だから言える話なのですが…。
 いや、言わない方がいいのかもしれない…。申し訳ない!何でもありません。」

「いえ、そこまで言われたら、気になりますので話してください。」

「………兄上の不貞がバレた時なんですが、両親の怒りは凄まじいものでした。
 相手のメイドには、すぐに避妊薬を飲ませて、事情聴取をしたあとに、クビにして邸を追い出していました。今後兄上に近づいたら、命はないとまで脅したらしいです。」

「そこまで…。もしかしたら、旦那様から手を出したのかもしれませんよね?使用人の立場では断れなかったとかでは?」

「いえ。あのメイドは私もよく覚えているのですが、兄上を見る目が違いましたし、やたら兄上の側に行きたがるようなところがありました。あの女は望んであんな関係になったのだと思います。」

「そうでしたか…。全く知りませんでした。」

「両親は兄上を許しませんでした。不貞行為をした兄上と義姉上の婚約解消をして、私と新たに婚約を結び直そうかと言い出したのです。」

「え?」

「驚きますよね。両親は私を跡継ぎにした上で、貴女と私を婚約させようと考えたらしいです。」

「は?」

「アメリア嬢は絶対に幸せにならなければいけないのにと言ってました。アメリア嬢の幸せを近くで見ていたかったのに、お前ではダメだ、任せられないと、あの両親が激怒していたのです。
 まるで自分達の実の娘を傷つけられたかのような…、大切な人を傷つけられて許さないみたいな言い方でした。」

「……驚きますわね。知りませんでした。」

「でも兄上は、絶対に婚約解消はしないと言って引きませんでした。」

「それも理解出来ませんでしたわ。」

「そうですよね…。貴女からすれば、あんな現場を見せられて、兄上とは関わりたくなかったでしょう。
 私も、なぜ婚約解消してあげないのかと理解に苦しみました。」

 今更だけど、旦那様の弟はまともなお方だったのね。

「そんな兄上は、騎士団で結果を出してアメリア嬢に相応しい人になれるように精進すると、両親と約束したらしいのです。アメリア嬢が学園を卒業するまでに結果を出せなかったら婚約は解消していいと。
 兄上は約束を果たして、貴女と結婚出来て、今に至ります。」

「私と婚約解消してしまえば、爵位が引き継げないから必死だったのですね…。本当に勝手な方だわ。」

「爵位ではなく、兄上は純粋に義姉上を失いたくなかったのかと思いましたが。」

「ふふっ。アドルフ様はお優しいですわね。教えて下さってありがとうございました。
 アドルフ様は、どうか自分の望むお方と結婚して下さいませ。」

「私は義姉上に幸せになってもらいたいと考えています。」

「喪が明けたら、自分の幸せを考えていきたいと思っておりますわ。そのためにも、この邸は出て行くつもりでいます。」

「そうですか……。でしたら、やはり両親にはそのことは言わない方がよいと思います。事後報告がいいかと。」

「分かりました。」




 旦那様は許せない。でも、あの優しいと思っていた義両親もこの不幸な結婚の原因だったなんて…。



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