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未亡人になるまで

結婚

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「リア…、とても綺麗よ。」

「ああ!私達の自慢の娘だ。」

 ウエディングドレスを着た私を、両親は目を細めて見ている。
 あれだけ嫌がった人と、私は今日結婚するのだ。

「お父様、私がこの結婚をどう思っているのかはご存知ですわよね?」

「………すまない。私が決めたのが悪かった。」

 こんなことをお父様に言うなんて、自分でも生意気なのは理解している。
 でも、私はあの日のことが目から離れないし、あの男を今でも許すことは出来ない。
 優しいお父様は、私の気持ちを理解してくれているから嬉しい。普通なら政略結婚に文句を言うことすら許されないのに、こんな私の気持ちを受け止めてくれるのだから。

「3年我慢したら、その後は自由になりたいのです。
 我儘なことを言っているのは理解しております。その時が来たらお許し下さい。」

「…分かった。リアの好きにしていい。」

「ありがとうございます!」

 お父様から許可を得たから、3年だけ我慢する。
 それだけを支えに、3年だけ…。3年だけ我慢して完璧な妻を演じきってやる。


 両親とお兄様と楽しく話をしていると、ブライアン様や伯爵様達が到着したと知らされる。

「ブライアン。娘に何かあれば、すぐに家に帰って来るようにと話はしてある。娘を頼んだよ。
 …………次はない。」

 お父様は笑顔でそんなことを言うと、控室から出て行ってしまった。
 あの日から、うちの家族がバーネット伯爵家を見る目は冷たい。あの現場をみんな見ているのだから当然だとは思う。
 それなのに、バーネット伯爵家は婚約解消どころか、普通に私に接してくる。そのことが理解出来ないまま、今日を迎えてしまった。

「リア…、君のお父上の言うことを肝に銘じておくよ。」

 力無く微笑むことしか出来なかった。



「アメリアちゃん、とっても素敵!世界一の花嫁だわ。綺麗よ!」

「ああ!こんなに美しい妻を迎えられるイアンは幸せだな。」

「父上も母上も、少し落ち着いて下さい!兄上とアメリア嬢を2人にしてあげてはどうですか?」

 1人だけ冷静な、義理の弟になるアドルフ様。もしかしたら、バーネット伯爵家でこの人が1番まともなのかもしれない。

「そうだな。2人にしてあげようか。」


 そして、控室で2人になる…。


「リア、とっても綺麗だ…。
 私はリアを愛している。君と結婚できる私は幸せだ。
 でも、リアが私を愛していないのは分かっている。私は許されないことをしたのだから当然だな…。
 だが、今後は良き夫として君に誠実であることを誓う。絶対に君を裏切ることはしない。時間をかけてでも君の信頼を取り戻せるように、最善を尽くすつもりだ。」

 ブライアン様が真剣な眼差しで私を見つめている。

 何も感じなかった……

「…はい。私も妻として、バーネット様をお支え出来る様に、努力していきたいと思いますわ。
 今日からよろしくお願い致します。」

「リア、君も今日からバーネットになるんだ。家名で呼ぶのはもうおしまいだ。」

「ふふっ。そうですわね。今日からは旦那様とお呼びしますわ。」

「…旦那様か。よろしく、私の奥さん!」


 親族や友人達、付き合いのある家門を招待して行われた結婚式は、何事もなく無難に終えた。


 

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