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未亡人になるまで

婚約者として

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 デビュタントを無事に終え、いつも通りの学園生活に戻った。
 変わったことと言えば、夜会などの招待状がよく届くようになったこと。デビュタントを済ませたので、本格的に社交もしていかないといけないのだ。

 友人は多い方だったので、茶会や夜会には友人達と一緒に参加するようにしていた。エスコートはお兄様や従兄妹がしてくれたので、何の問題もなかったと思う。


 それでも社交の場で、嫌な思いをすることはあった。

「貴女がバーネット様の婚約者ですの?
 夜会で一緒にいるところを見たことはありませんが、バーネット様は貴女を婚約者だと認めていらっしゃるのでしょうか?」

 私より少し年上の御令嬢から、こんな風に絡まれることがある。あの男が好きなら奪ってくれて構わないのに。
 嫌いなあの男に思いを寄せる令嬢なんて、どうでもいい存在だから、言われたら遠慮なく言い返すことにしている。

「まあ!私もそう思っておりますのよ。いつでも身を引く覚悟でいますので、よろしければ婚約者の座をお譲りしましょうか?
 年齢的にも、私よりも年上の貴女様の方が釣り合いが取れていると思いますわ。」

 強気に言い返すようにしていたら、あまり絡まれなくなってきた気がする。友人達はこんな私を面白そうに見ていた。
 貴族の世界では弱さを出したら負けなのだ。


 そして、デビュタントを終えた後くらいから、ブライアン様からもお誘いの手紙が届くようになる。

 無視をしたいくらいだったが、社交をする年齢になったらそうはいかない。
 いつ婚約解消するのか分からないからこそ、婚約者でいるうちは、完璧な婚約者を演じなければならない。
 婚約解消した時に、周りから私に過失があるように見られなくするために、同情を引くためにも、私は完璧でいなくてはならないのだ。




 今夜はブライアン様の騎士団のパーティーらしく、婚約者として一緒に参加して欲しいと言われている。
 あんな男のために、時間をかけて準備をするのは馬鹿らしいがしょうがない。

 私の邸に迎えに来たブライアン様は、冷ややかな目で見ている両親に当たり障りのない挨拶をしていた。

「リア、とても綺麗だ。今日は騎士団の上司や同僚達に、君を紹介できることをとても楽しみにしていたんだよ。」

 貴方の婚約者を辞めたいので、そんなことはしなくて結構ですと言いたかった。

「バーネット様、今日はよろしくお願い致しますわ。」


 騎士団のパーティーは、私にとって苦痛以外の何でもなかった。
 上司や先輩、同僚を次々と紹介されることが、こんなに苦痛だなんて…。

「ブライアンの婚約者がこんなに美しいだなんて知らなかった。今まで色々な令嬢に言い寄られても、相手にしてこなかった理由がよく分かったよ。」

 裏で何をしているのか知らないからそんなことが言えるのよ…。

「バーネットをよろしく頼むよ。コイツはいい奴だから。」

 貴方達にとってのいい人でしょ?




「リア、みんな煩いヤツばかりだから、疲れただろう?少し風にあたりに行こうか。」

「バーネット様、どちらへ?」

「庭園のガゼボがライトアップされていて綺麗なんだ。行ってみよう。」

「では少しだけ。」

 2人きりになりたくはなかったが、この場でそんな態度は出せないから我慢するしかない。

 期待せずに行ったものの、ライトアップされた庭園はとても美しかった。

「リア…、私は君が卒業したらすぐに結婚したいと思っている。
 結婚するに向けて、もっと君と仲を深めたい。休日に時間のある時で構わないから、君と2人で過ごす時間をくれないか?」

 私にとってその言葉は未来を絶望させられる言葉だった。

「………。」

「…リア?
 ……涙が流れている!」

 あまりにも悲しすぎて、無意識に涙が流れていたようだ。
 淑女教育はやり直しかしらね…。

「…失礼しました。婚約者としての務めは果たすつもりでおりますのでご安心下さい。
 しかしバーネット様。他に大切に想うお方がいらっしゃるのでしたら、私はいつでも身を引くつもりでおりますので、その時はすぐにお知らせ下さると助かりますわ。」

 つらい時ほど笑わないと…。

 

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