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アフターストーリー

第5話ー⑤ 実来の夢

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 ――食堂にて。

 発表会の片づけと関係各社への挨拶を終えた実来は、机に突っ伏していた。

「疲れた~」
「実来のおかげで大成功のプロジェクト発表会となりましたね」

 その声の方に顔を向ける実来。そして、

「織姫。ありがとう」

 ニコッと笑ってそう言った。


「いえいえ。でも、まだこれが始まりですよ」

「うん!」

「来場者や配信を見ていた人たちからもかなり好評みたいですね。あ、真一さんたちも感想書いてくれてますよ」


 実来は狂司の言葉を聞くと、ガッと顔を上げ、そのスマホを覗く。

『ファッションショーを見るのは初めてだったけど、モデルっていう職業も僕たちと同じように、ステージで戦っているんだなと思った。一人でその戦いに挑む、実来の姿はとてもかっこよくて、素敵だった』

 真一君が、そんなことを思ってくれたなんて――

 そう思いながら、目を輝かせる実来。

「凛子さんや結衣さんも感想くださっていますね」

 織姫も自身のスマホで確認しながら、嬉しそうにそう言った。

「みんな、実来さんのショーが良かった、素敵だったと書いてありますね」
「そっか。よかった……私のやってきたこと、全部無駄じゃなかったんだね」

 そう言ってほっと胸を撫でおろす実来。

 それから織姫は実来の顔をまっすぐに見ると、

「――実来、ありがとうございます」

 感じ入った様子でそう告げたのだった。

「ど、どうしたの、急に改まって?」

 きょとんとする実来。

「実来のおかげで大成功でした。最初の一人が実来でよかった。だから、ありがとうございます」

 違うよ。織姫が私に一人目になってってそう言ってくれたから、今の私があるんだよ――

「織姫……ううん、私もありがとう。きっかけをくれて、また頑張ろうって思わせてくれて!!」

 そう言って実来は微笑んだ。

 それからパンッと狂司は手を鳴らすと、

「――じゃあ、お疲れ様会はこの辺にして、織姫さん。次の計画のために、今回の反省会を含めたミーティングをしましょう」

 笑顔でそう言った。

「そうですね。実来はゆっくりと身体を休めてください。今日まで本当にお疲れ様でした」

 そう言って食堂の出口に身体を向ける織姫。

「織姫たちはまだこれから何かするの?」
「ええ。言ったでしょう、これが始まりだと。だから私は止まってはいられないんです」

 織姫は真剣な顔で、実来にそう告げた。

「そっか、うん。……じゃあ私も頑張る!」
「はい! それでは、お疲れ様です」

 そう言って織姫は狂司と食堂を出て行った。

 さっきの顔。織姫はもっと先を見据えてる。私も負けてはいられないな――

「私もこれから今日の反省会をしなくっちゃ。だって、ここがスタートなんだもんね!」

 そして実来は自室に戻ったのだった。



 ――数日後。

 実来の元に一通の手紙が届いた。

「誰、から……?」

 その差出人を見た実来は、目を丸くした。

「え、鷺沢さぎさわ芸能プロダクションって……」

 あの時、名刺をくれた人の会社? まさか、私の事なんて――

 そう思いながら、実来はその手紙を開けて、中身を確認した。

 そしてその内容には、

『やはりあなたの才能は本物だ。僕のところで育てたい。すごいモデルにします。だから、僕のところに来てくれませんか』

 と記されていた。

「私のこと、覚えてくれていたってこと……?」

 そしてそこには、電話番号とメールアドレスが記載されていた。

 今度はもう、逃げない。今の私は、あの時の私とは違うんだから――

「あの、お手紙見ました――」



 ――数年後。都内、撮影スタジオにて。

「じゃあ、実来ちゃん。今度は連続で撮影するから、どんどんポーズ取っていって!」
「はい!!」

 元気よく返事をした実来は、カメラの前に立ち、次々とポーズを決めていく。
 
 そしてそれに合わせて、カメラのシャッターが切られていった。

「――よしっ、いいね。次行ってみよう!」

 カメラマンの男性がそう言うと、

「宜しくお願いします!!」

 実来は満面の笑みでそう答えたのだった。



 自分が夢を持つなんて考えられなかった。でも、友達や先生たちのおかげで、今の私がある。

 これは一人じゃ、到底なしえなかった夢。みんなの力で叶えた夢。

 今度は私が誰かの夢を応援していこう。織姫が、みんながそうしてくれたように――


 * * *


 ――渋谷、大型書店にて。

 雑誌コーナーには、2人の女子高生がいた。


「あ、見てこのモデル!」

「知ってる! あの『アルフェラッツ プロジェクト』出身の、如月実来ちゃんでしょ! 憧れるよね~」

「そういえば。今度、うちの学内でもアルプロのオーディションあるって!!」

「うそ~! あたし、参加しようかな。実来ちゃんみたいに、夢を叶えたいからさ」


 それは、実来の夢から誰かの夢へ――そんなバトンが繋がった瞬間だった。
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