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アフターストーリー
第4話ー⑦ 夢、叶うまで
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しおんと凛子が2人で練習をしてから数日が経った時の事。
――シェアハウスにて。
「おいっ! しおん、真一!! これ知ってるか?」
そう言って哲郎はしおんたちにスマホを見せる。
「え……これって――」
しおんは哲郎から向けられたスマホ見て、目を見張りながらそう呟く。
そこには、凛子のスキャンダル記事が掲載されていたのだった。
『人気アイドル、お泊り愛!? 白昼堂々、若手イケメンモデルと六本木デートかっ!!』
「は……なんだよ、これ! 嘘に決まってるだろっ!!」
あの凛子がこんなこと、するはずないだろうが――!
「でもこの写真……凛子ちゃんじゃないとも言えないんじゃない?」
「哲郎さん!」
「確かに、凛子にも見える……」
「はっ? 真一までそんなことを言うのかよ!!」
なんで2人はわからないんだ。凛子はこんなこと絶対にしないのに。この間だって、スキャンダルにならないようにってそう言って――
しおんはそう思いながら、苦い顔をして両手の拳をぎゅっと握る。
「――真実は凛子にしかわからない。だから、話を聞いてみよう」
「あ、ああ」
そう言って真一から顔を背けるしおん。
「何が真実でも、しおんは凛子の味方でいてあげて」
「わかってる……」
凛子が、あの凛子がこんなことをするわけない。俺は信じてるから――
それからしおんは部屋に戻り、凛子にメッセージを送った。
『メディアの記事、読んだ。あれって嘘だろ? 早く否定しないと、状況が悪くなるんじゃないのか? 何かあれば、相談に乗るよ。だから連絡待ってる』
「これでいいか……」
ちょっときつい言い方かもしれないな。でも変に優しくするのも、おかしいよな――
「悶々としてても仕方がないよな。ギターでも触るか……」
そしてしおんはいつも通りの一日を始めたのだった。きっと、凛子ならこの状況を何とかできると信じて。
しかし何日待っても、しおんの元へ凛子からの返信はなかった。
そして、凛子からマスコミに何かを語ることもなく、状況はさらに悪化していたのだった。
「なんで凛子は何も言わないんだ? 黙秘したままじゃ、変な噂がたつだけなのに……」
しおんはスマホの画面を見て、そう呟きながら眉間に皺を寄せていた。
「僕のスキャンダルの時も黙っていようって言う凛子だし、きっと何か考えがあってのことじゃない?」
「で、でも――」
「しおん。凛子が心配なのはわかるけど、しおんにはやるべきことがあるでしょ?」
「え……?」
俺のやるべきこと……そうだ。俺は凛子に曲を作るって約束を――
「そうだったよな。ごめん……俺は俺のやるべきことをするよ」
「うん」
そしてしおんはまた、いつもの日々を過ごしたのだった。
その日の夜――
夕食を終えたしおんは、無意識に凛子のスキャンダル記事を読み返していた。
「なんでこんな昼間に六本木へ……って、あれ。この日――」
記事に記載されていた日付を見て、しおんははっとすると、凛子へ再びメッセージを送った。
そして凛子が自分からのメッセージに気が付くまで、しおんは何度も何度もメッセージを送り続けたのだった。
「くっそ、なんで既読にならないんだよ! 仕事中か?」
すると、
「ついたっ!!」
メッセージに既読マークがついたことを確認したしおんは、そのタイミングで凛子に電話を掛けた。
出てくれ、凛子――
しおんがそう願った時、
『はい……』
いつもより元気がなさそうな声で凛子は電話に応じた。
「はいって……お前、俺が何日前にメッセージを送ったと思ってんだよ!」
しおんが語気を強めてそう言うと、凛子はため息を吐き、
『――しおん君へメッセージを返さなくちゃいけない義務なんて私にはないよね?』
淡々とそう答えた。
「確かにないけど、でもそうじゃないだろ! お前、なんで言わないんだよ!!」
『何のこと』
「しらばっくれんな! スキャンダルがあった日、俺たちは昼からずっと一緒にレッスンルームにいただろ! そうならそうって言えば済むことじゃないか!」
しおんは声を荒げて凛子にそう言った。
『――ばっかじゃないの!!』
「は、はあ?」
俺、馬鹿って言われるようなことを言ったか――?
そう思いながら、目を丸くするしおん。
『馬鹿だよ、大馬鹿だよ! なんでわかんないの? もし私がそれを言えば、今度はしおん君とのスキャンダルだって書かれるじゃない! そうなったら、せっかく決まった全国ツアーも……それにこれからの活動だって、どうなるかわからないじゃない!! そうならないために、私は……私は――』
凛子は苦しそうな声でそう言った。
そんな凛子の言葉を聞いて、しおんは凛子を追い込んだマスコミ連中と元凶のモデル、そして凛子を一人で悩ませていた自分自身に怒りの感情を覚えた。
どうしてそのために、凛子が苦しまなくちゃならない。そんなことのために――!
しおんはそう思い、右手の拳をぎゅっと強く握る。
「……馬鹿だよ。ああ、馬鹿だ! でもそれは俺じゃねえ、お前だろ!!」
『は、はあ?』
「真実を隠すために、偽りを受け入れんのかよ!」
『そうだよ!!』
「なんでだよ……お前はそれでいいのかよ! お前の夢は、ハリウッド女優になるって目標はどうするんだよ!!」
あのスキャンダルを受け入れれば、その目標が遠ざかるってことになるってわからねえのか――?
『ちょっと遠回りするくらい平気だよ! また前みたいに時間がかかるかもしれないけど……でも、私はこれでいいんだって!!!』
それ、本気で言ってんのか――? しおんはそう思い、眉間に皺を寄せる。
「意味わかんねえから! お前が良くても、俺が嫌なんだって!! お前の犠牲の上で、俺の夢が叶うなんて嫌だ!!」
『だから、それが……馬鹿だって言ってんでしょ……』
そう言いながら、声を震わせる凛子。
『なんでわからないの……私は一度、どん底を見た。だから平気なの。でも、しおん君たちは違うでしょ。もしかしたら、どん底まで落ちたら……しおん君たちの夢は終わってしまうかもしれない。嫌なの……私のせいで、しおん君の夢が終わってしまうことが……。私は嫌なんだよ』
凛子は俺たちのことをそんなに考えてくれていたのか――
凛子が自分と真一のことを思っての行動だったと知ったしおんは、もうこれ以上は何も言い返すことができなくなったのだった。
『だから、このままでいいの。しおん君は何も言わなくていい。しおん君はしおん君の夢だけ見て。前だけ見て。私は少し遅れちゃうかもしれないけど、でもすぐに追いつくからさ』
凛子は明るい声でそう言った。
そして、その明るさはきっと無理をしているのだろう、としおんは察していた。
「――わかった。でも凛子。ライブには出てくれるよな? いいや、出ろ。そうじゃなきゃ、俺は真実を言うからな」
しおんがそう告げると、凛子は少しだけ笑って、
『何よ、その脅迫……わかった。出られるように何とかする』
とそう言った。
「約束だからな」
『うん。じゃあ、またね』
「また」
そして通話を終えるしおん。
「何だよ……凛子は俺のせいで悩んでいたんじゃないか――くっそ」
それからしおんはアコースティックギターを取り出し、感情をぶつけるようにギターをかき鳴らすのだった――。
――シェアハウスにて。
「おいっ! しおん、真一!! これ知ってるか?」
そう言って哲郎はしおんたちにスマホを見せる。
「え……これって――」
しおんは哲郎から向けられたスマホ見て、目を見張りながらそう呟く。
そこには、凛子のスキャンダル記事が掲載されていたのだった。
『人気アイドル、お泊り愛!? 白昼堂々、若手イケメンモデルと六本木デートかっ!!』
「は……なんだよ、これ! 嘘に決まってるだろっ!!」
あの凛子がこんなこと、するはずないだろうが――!
「でもこの写真……凛子ちゃんじゃないとも言えないんじゃない?」
「哲郎さん!」
「確かに、凛子にも見える……」
「はっ? 真一までそんなことを言うのかよ!!」
なんで2人はわからないんだ。凛子はこんなこと絶対にしないのに。この間だって、スキャンダルにならないようにってそう言って――
しおんはそう思いながら、苦い顔をして両手の拳をぎゅっと握る。
「――真実は凛子にしかわからない。だから、話を聞いてみよう」
「あ、ああ」
そう言って真一から顔を背けるしおん。
「何が真実でも、しおんは凛子の味方でいてあげて」
「わかってる……」
凛子が、あの凛子がこんなことをするわけない。俺は信じてるから――
それからしおんは部屋に戻り、凛子にメッセージを送った。
『メディアの記事、読んだ。あれって嘘だろ? 早く否定しないと、状況が悪くなるんじゃないのか? 何かあれば、相談に乗るよ。だから連絡待ってる』
「これでいいか……」
ちょっときつい言い方かもしれないな。でも変に優しくするのも、おかしいよな――
「悶々としてても仕方がないよな。ギターでも触るか……」
そしてしおんはいつも通りの一日を始めたのだった。きっと、凛子ならこの状況を何とかできると信じて。
しかし何日待っても、しおんの元へ凛子からの返信はなかった。
そして、凛子からマスコミに何かを語ることもなく、状況はさらに悪化していたのだった。
「なんで凛子は何も言わないんだ? 黙秘したままじゃ、変な噂がたつだけなのに……」
しおんはスマホの画面を見て、そう呟きながら眉間に皺を寄せていた。
「僕のスキャンダルの時も黙っていようって言う凛子だし、きっと何か考えがあってのことじゃない?」
「で、でも――」
「しおん。凛子が心配なのはわかるけど、しおんにはやるべきことがあるでしょ?」
「え……?」
俺のやるべきこと……そうだ。俺は凛子に曲を作るって約束を――
「そうだったよな。ごめん……俺は俺のやるべきことをするよ」
「うん」
そしてしおんはまた、いつもの日々を過ごしたのだった。
その日の夜――
夕食を終えたしおんは、無意識に凛子のスキャンダル記事を読み返していた。
「なんでこんな昼間に六本木へ……って、あれ。この日――」
記事に記載されていた日付を見て、しおんははっとすると、凛子へ再びメッセージを送った。
そして凛子が自分からのメッセージに気が付くまで、しおんは何度も何度もメッセージを送り続けたのだった。
「くっそ、なんで既読にならないんだよ! 仕事中か?」
すると、
「ついたっ!!」
メッセージに既読マークがついたことを確認したしおんは、そのタイミングで凛子に電話を掛けた。
出てくれ、凛子――
しおんがそう願った時、
『はい……』
いつもより元気がなさそうな声で凛子は電話に応じた。
「はいって……お前、俺が何日前にメッセージを送ったと思ってんだよ!」
しおんが語気を強めてそう言うと、凛子はため息を吐き、
『――しおん君へメッセージを返さなくちゃいけない義務なんて私にはないよね?』
淡々とそう答えた。
「確かにないけど、でもそうじゃないだろ! お前、なんで言わないんだよ!!」
『何のこと』
「しらばっくれんな! スキャンダルがあった日、俺たちは昼からずっと一緒にレッスンルームにいただろ! そうならそうって言えば済むことじゃないか!」
しおんは声を荒げて凛子にそう言った。
『――ばっかじゃないの!!』
「は、はあ?」
俺、馬鹿って言われるようなことを言ったか――?
そう思いながら、目を丸くするしおん。
『馬鹿だよ、大馬鹿だよ! なんでわかんないの? もし私がそれを言えば、今度はしおん君とのスキャンダルだって書かれるじゃない! そうなったら、せっかく決まった全国ツアーも……それにこれからの活動だって、どうなるかわからないじゃない!! そうならないために、私は……私は――』
凛子は苦しそうな声でそう言った。
そんな凛子の言葉を聞いて、しおんは凛子を追い込んだマスコミ連中と元凶のモデル、そして凛子を一人で悩ませていた自分自身に怒りの感情を覚えた。
どうしてそのために、凛子が苦しまなくちゃならない。そんなことのために――!
しおんはそう思い、右手の拳をぎゅっと強く握る。
「……馬鹿だよ。ああ、馬鹿だ! でもそれは俺じゃねえ、お前だろ!!」
『は、はあ?』
「真実を隠すために、偽りを受け入れんのかよ!」
『そうだよ!!』
「なんでだよ……お前はそれでいいのかよ! お前の夢は、ハリウッド女優になるって目標はどうするんだよ!!」
あのスキャンダルを受け入れれば、その目標が遠ざかるってことになるってわからねえのか――?
『ちょっと遠回りするくらい平気だよ! また前みたいに時間がかかるかもしれないけど……でも、私はこれでいいんだって!!!』
それ、本気で言ってんのか――? しおんはそう思い、眉間に皺を寄せる。
「意味わかんねえから! お前が良くても、俺が嫌なんだって!! お前の犠牲の上で、俺の夢が叶うなんて嫌だ!!」
『だから、それが……馬鹿だって言ってんでしょ……』
そう言いながら、声を震わせる凛子。
『なんでわからないの……私は一度、どん底を見た。だから平気なの。でも、しおん君たちは違うでしょ。もしかしたら、どん底まで落ちたら……しおん君たちの夢は終わってしまうかもしれない。嫌なの……私のせいで、しおん君の夢が終わってしまうことが……。私は嫌なんだよ』
凛子は俺たちのことをそんなに考えてくれていたのか――
凛子が自分と真一のことを思っての行動だったと知ったしおんは、もうこれ以上は何も言い返すことができなくなったのだった。
『だから、このままでいいの。しおん君は何も言わなくていい。しおん君はしおん君の夢だけ見て。前だけ見て。私は少し遅れちゃうかもしれないけど、でもすぐに追いつくからさ』
凛子は明るい声でそう言った。
そして、その明るさはきっと無理をしているのだろう、としおんは察していた。
「――わかった。でも凛子。ライブには出てくれるよな? いいや、出ろ。そうじゃなきゃ、俺は真実を言うからな」
しおんがそう告げると、凛子は少しだけ笑って、
『何よ、その脅迫……わかった。出られるように何とかする』
とそう言った。
「約束だからな」
『うん。じゃあ、またね』
「また」
そして通話を終えるしおん。
「何だよ……凛子は俺のせいで悩んでいたんじゃないか――くっそ」
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