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アフターストーリー
第4話ー④ 夢、叶うまで
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――事務所のレッスンルームにて。
「まだか……仕事が押しているのかな……うーん」
そう呟きながら、レッスンルーム内をぐるぐると歩き回るしおん。
「もう落ち着きなよ。直に来ると思うし。久々に会えて嬉しい気持ちはわかるけどさ――」
「だ、だから違うって!!」
「はいはい」
別にそう言うんじゃないんだって。凛子は俺にとって大切なライバルなだけなだよ。それ以外の感情なんてない――
「――あ、下で音がするよ。来たんじゃない?」
「ほ、ほんとか!!」
嬉しそうな顔でそう言うしおん。
「まったく。そんなに目を輝かせちゃってさ」
やれやれと言った顔でそう言う真一。
「そうじゃないって! ライブの打ち合わせが進む、嬉しい~って感じだ!」
「そうですか」
真一はそう言ってニヤニヤ笑った。
「そう言う真一も、やけに楽しそうじゃないか?」
「まあね。しおんがやる気になってくれるんだろうなって言うのと――」
そしてレッスンルームの扉が開かれる。
「すみません、遅くなりました!」
そう言ってレッスンルームに入って来る凛子。
「久しぶり、凛子」
「ひ、久しぶりだな」
「ええ。お2人とも、元気にしていましたかあ☆」
そう言って凛子は微笑んだ。
「凛子は相変わらずみたいだね」
「お互いにですね☆」
「相変わらず騒がしいというか、何というか……」
やれやれと言った顔でそう言うしおん。
「む……しおん君には騒がしいなんて言われたくはないですぅ☆ 精神的な成長は、なしですか?」
凛子は満面の笑みでそう言った。
「精神的なって……それ、まだ子供だって言いたいのか!!?」
「あらぁ、ごめんなさい。そう捉えられたのならそうかもしれないですねえ☆」
「くっそ、お前! 外に出たらもっとまともになるかと思っていたのに……変わらねえな!」
「しおん君も、相変わらずこの程度のことで声を荒げるなんてえ☆」
そう言ってクスクスと笑う凛子。
「こほん。じゃあ、夫婦漫才も一通り終わったことだし、打ち合わせをしよう。凛子も時間があるわけじゃないでしょ」
真一はニコッと笑いながら凛子にそう言った。
その笑顔に何かを感じたのか、凛子は怯えた表情をして、
「は、はい……」
と言ってその場にちょこんと座った。
「へっ、いいざまだなあ!」
「しおんも黙って。話が進まないだろ」
「はい、すみません……」
そう言って凛子の隣に正座をするしおん。
それから真一主導の元、ライブの話し合いは円滑に進んだのだった。
――数時間後。ある程度の話がまとまり、ひとまず休憩をすることになった。
真一はトイレに行って来ると言ってレッスンルームを離れたため、その場にはしおんと凛子の2人きりしかおらず、しおんと凛子はL字の向きでレッスンルームの壁際に座り休憩していた。
前にも同じようなシチュエーションがあったぞ――
そう思いながら、緊張して沈黙をするしおん。
「――今回は、お誘いありがとね」
凛子はぽつりとそう言った。
「え? あ、ああ。こちらこそ、引き受けてくれてありがとな」
「うん」
なんだか今日はやけに素直だな――
そう思いながら、しおんは目の前に座る凛子を見つめた。
その凛子は少し眠たそうな顔をして、ぼーっとしていた。
なんか疲れた顔をしているように見える。学業と芸能活動の両立ってきっと大変なんだろうな――
ふとそんなことを思うしおん。
「実はさ。人気沸騰中の人気ミュージシャンのライブって聞いて、少しだけ怖気づいちゃったんだよね、私」
唐突にそう言われたしおんは、その言葉に驚き、思わず笑っていた。
「そんな俺だって、朝ドラヒロインに決まった人気アイドル様をお呼びするなんて恐れ多いって思っていたよ」
「何それ」
そう言いながらクスクス笑う凛子。
「だって事実だろ?」
「まあ――そうだね!」
凛子はしおんの顔を見て、笑顔でそう言った。
「いや、そこはもっと謙遜しろよ!」
「それはそれで私らしくないじゃないですかあ☆」
「まあ、確かにな」
しおんはそう言って、「ふふっ」と笑う。
「でも、良かった。しおん君たちとステージに立てるチャンスをもらえて……」
少しだけ寂しげにそう言う凛子。
「何言ってんだよ! これから、いくらでも――」
「私ね、もうすぐアイドルを卒業するんだ」
「は!? え!!?」
凛子の言葉に、しおんは目を丸くした。
アイドルを卒業――!?
「そんなに驚くことでもないでしょ」
凛子はそう言ってジト目でしおんを見た。
「ま、まあ、いつかはとは思っていたけど……」
そうか、もう凛子は次のステージに進もうとしているんだな――
「だからその前にしおん君たちとステージに立てることが嬉しいんだ。いつも活動は見てきたけど、同じステージで歌ったことはなかったじゃない?」
「そういえば、そうだな」
「だからさ……思いっきり楽しもうね!!」
そう言って満面の笑み浮かべる凛子。
「ああ、もちろんだ!!」
しおんもそう言って、笑顔で返したのだった。
「そうだ! ついでにお願い、聞いてくれる?」
「はあ? なんで!?」
「いいじゃん! 私には少なからず、恩があるでしょ?」
凛子はウインクをしながらそう言った。
「わ、わかったよ……」
一体、俺に何をさせる気だ……? まさか、ライブで何かいたずらを――!?
そう思いながら、息を飲むしおん。
「私の卒業ソングを作ってよ!」
「――――はい?」
「聞こえなかったの? 私の卒業ソングを作ってくださいって言ったんだって!!」
「はああああ!?」
しおんは身をそらしながら、驚くしぐさをした。
「何よ、それくらいできないの?」
目を細めて、しおんにそう言う凛子。
「で、できないことはないと思うけど……でも俺でいいのか? 卒業ソングって、一生残るものだろ?」
そんな大事なものを俺にって――
そう思いながら、しおんは困惑の表情を浮かべる。
「だからだよ」
「え?」
「一生残るものだから、しおん君がいいの!」
凛子はしおんの顔をまっすぐに見て、そう言った。
「なんで」
「私がアイドルを頑張ろうって思うきっかけをくれたのが、しおん君だから。今の私はしおん君のおかげだから!!」
「お、俺、そんなことしたっけ!?」
それから考えを巡らせるしおん。
俺が助けてもらったことはたくさんあるけど、凛子に何かしたなんて記憶は――
「もうっ! その脳みそは何が詰まってんのよ!! 何で覚えていないわけ? あんな激しい戦いをしたってのに!」
凛子は頬を膨らませて、怒りながらそう言った。
「え? 激しい戦い……うーん」
そしてしおんは記憶を辿った――
* * *
それはしおんたちがまだ『白雪姫症候群』のS級施設に来たばかりだったころに、些細なことがきっかけで能力を使った喧嘩をした時のことだった。
『……やり、たい。私はまた、お芝居をしたい。役者でありたい……でも、私はこのままじゃ、あの世界にいられない……私は消えちゃうの! それは嫌! もう二度と芝居が出来なくなるのは嫌なの!!』
そう言って、涙を流す凛子。
* * *
思い出したしおんは、「うんうん」と思い出に浸りながら頷いた。
「そんなこともあったな……凛子がアイドルのくせに鼻水を垂らし――」
「してないわ! 記憶の捏造でしょ、それ!!」
「ははは! でもその後に俺も凛子に救ってもらえたっつうかさ……お互い様、だろ?」
しおんはそう言ってニッと笑った。
そんなしおんを見て、凛子は首を横に振り、
「私があやめ君のことで悩んでいたしおん君に助言ができたのは、最初にしおん君が私を解放してくれたから。だからお互い様なんかじゃないよ」
ぽつりとそう言った。
「そう、か?」
「そうなの! そう言うわけだし、卒業ソングの件はよろしくね! もちろんちゃんと打ち合わせもするからさ――」
そう言ってスマホの画面を見せる凛子。
「え、何?」
「連絡先を交換してあげるって言っているんだけど?」
ニヤリ笑いながら、凛子はそう言った。
「え!? そ、そんなの、いらねぇよ!!」
しおんは狼狽えながらそう言った。
「はあ? 断る理由がわからないんですけどぉ」
「そうだけど……」
でも、なんだかなあ。ってか、なんで俺も渋ってんだろう――
「それに毎回事務所を通すと、レスポンスが遅くなるので非効率だと思わないの? 夢を叶えるのに時間はいくらあっても足りないんだから、いらない手間は省くに越したことはないでしょ! さあ、さっさとスマホを出しなさい!!」
凛子はそう言ってしおんに右手を突き出した。
「くっそ……何も言い返せねえ……」
それから渋々連絡先を交換するしおんだった。
「――よし!」
嬉しそうにそう言う凛子。
なんでそんなに嬉しそうなんだ? もしかして、凛子も俺みたいに友達いないのかな。可哀そうに――
そう思いながら、しおんは悲しそうに凛子を見つめた。
「ってかさ、真一遅くねえか? いつまでトイレにいんだよ!!」
「まあ、お腹の調子は人それぞれですから」
それからしばらくして真一はレッスンルームに戻って来た。
遅かった理由をしおんが尋ねると、
「星司さんとそこで会ってね」
と答える真一。
どうやらトイレを出たところで『ASTER』のギタリストである星司と鉢合わせて、少し話し込んでいた――ということだった。
「そっか」
苦い顔でそう言うしおん。
そういえば、あの人。俺のことを露骨に嫌っているんだよな。なんでだろう――
「うん。じゃあ打ち合わせの続きをしよう」
そしてしおんたちは打ち合わせを再開したのだった。
「まだか……仕事が押しているのかな……うーん」
そう呟きながら、レッスンルーム内をぐるぐると歩き回るしおん。
「もう落ち着きなよ。直に来ると思うし。久々に会えて嬉しい気持ちはわかるけどさ――」
「だ、だから違うって!!」
「はいはい」
別にそう言うんじゃないんだって。凛子は俺にとって大切なライバルなだけなだよ。それ以外の感情なんてない――
「――あ、下で音がするよ。来たんじゃない?」
「ほ、ほんとか!!」
嬉しそうな顔でそう言うしおん。
「まったく。そんなに目を輝かせちゃってさ」
やれやれと言った顔でそう言う真一。
「そうじゃないって! ライブの打ち合わせが進む、嬉しい~って感じだ!」
「そうですか」
真一はそう言ってニヤニヤ笑った。
「そう言う真一も、やけに楽しそうじゃないか?」
「まあね。しおんがやる気になってくれるんだろうなって言うのと――」
そしてレッスンルームの扉が開かれる。
「すみません、遅くなりました!」
そう言ってレッスンルームに入って来る凛子。
「久しぶり、凛子」
「ひ、久しぶりだな」
「ええ。お2人とも、元気にしていましたかあ☆」
そう言って凛子は微笑んだ。
「凛子は相変わらずみたいだね」
「お互いにですね☆」
「相変わらず騒がしいというか、何というか……」
やれやれと言った顔でそう言うしおん。
「む……しおん君には騒がしいなんて言われたくはないですぅ☆ 精神的な成長は、なしですか?」
凛子は満面の笑みでそう言った。
「精神的なって……それ、まだ子供だって言いたいのか!!?」
「あらぁ、ごめんなさい。そう捉えられたのならそうかもしれないですねえ☆」
「くっそ、お前! 外に出たらもっとまともになるかと思っていたのに……変わらねえな!」
「しおん君も、相変わらずこの程度のことで声を荒げるなんてえ☆」
そう言ってクスクスと笑う凛子。
「こほん。じゃあ、夫婦漫才も一通り終わったことだし、打ち合わせをしよう。凛子も時間があるわけじゃないでしょ」
真一はニコッと笑いながら凛子にそう言った。
その笑顔に何かを感じたのか、凛子は怯えた表情をして、
「は、はい……」
と言ってその場にちょこんと座った。
「へっ、いいざまだなあ!」
「しおんも黙って。話が進まないだろ」
「はい、すみません……」
そう言って凛子の隣に正座をするしおん。
それから真一主導の元、ライブの話し合いは円滑に進んだのだった。
――数時間後。ある程度の話がまとまり、ひとまず休憩をすることになった。
真一はトイレに行って来ると言ってレッスンルームを離れたため、その場にはしおんと凛子の2人きりしかおらず、しおんと凛子はL字の向きでレッスンルームの壁際に座り休憩していた。
前にも同じようなシチュエーションがあったぞ――
そう思いながら、緊張して沈黙をするしおん。
「――今回は、お誘いありがとね」
凛子はぽつりとそう言った。
「え? あ、ああ。こちらこそ、引き受けてくれてありがとな」
「うん」
なんだか今日はやけに素直だな――
そう思いながら、しおんは目の前に座る凛子を見つめた。
その凛子は少し眠たそうな顔をして、ぼーっとしていた。
なんか疲れた顔をしているように見える。学業と芸能活動の両立ってきっと大変なんだろうな――
ふとそんなことを思うしおん。
「実はさ。人気沸騰中の人気ミュージシャンのライブって聞いて、少しだけ怖気づいちゃったんだよね、私」
唐突にそう言われたしおんは、その言葉に驚き、思わず笑っていた。
「そんな俺だって、朝ドラヒロインに決まった人気アイドル様をお呼びするなんて恐れ多いって思っていたよ」
「何それ」
そう言いながらクスクス笑う凛子。
「だって事実だろ?」
「まあ――そうだね!」
凛子はしおんの顔を見て、笑顔でそう言った。
「いや、そこはもっと謙遜しろよ!」
「それはそれで私らしくないじゃないですかあ☆」
「まあ、確かにな」
しおんはそう言って、「ふふっ」と笑う。
「でも、良かった。しおん君たちとステージに立てるチャンスをもらえて……」
少しだけ寂しげにそう言う凛子。
「何言ってんだよ! これから、いくらでも――」
「私ね、もうすぐアイドルを卒業するんだ」
「は!? え!!?」
凛子の言葉に、しおんは目を丸くした。
アイドルを卒業――!?
「そんなに驚くことでもないでしょ」
凛子はそう言ってジト目でしおんを見た。
「ま、まあ、いつかはとは思っていたけど……」
そうか、もう凛子は次のステージに進もうとしているんだな――
「だからその前にしおん君たちとステージに立てることが嬉しいんだ。いつも活動は見てきたけど、同じステージで歌ったことはなかったじゃない?」
「そういえば、そうだな」
「だからさ……思いっきり楽しもうね!!」
そう言って満面の笑み浮かべる凛子。
「ああ、もちろんだ!!」
しおんもそう言って、笑顔で返したのだった。
「そうだ! ついでにお願い、聞いてくれる?」
「はあ? なんで!?」
「いいじゃん! 私には少なからず、恩があるでしょ?」
凛子はウインクをしながらそう言った。
「わ、わかったよ……」
一体、俺に何をさせる気だ……? まさか、ライブで何かいたずらを――!?
そう思いながら、息を飲むしおん。
「私の卒業ソングを作ってよ!」
「――――はい?」
「聞こえなかったの? 私の卒業ソングを作ってくださいって言ったんだって!!」
「はああああ!?」
しおんは身をそらしながら、驚くしぐさをした。
「何よ、それくらいできないの?」
目を細めて、しおんにそう言う凛子。
「で、できないことはないと思うけど……でも俺でいいのか? 卒業ソングって、一生残るものだろ?」
そんな大事なものを俺にって――
そう思いながら、しおんは困惑の表情を浮かべる。
「だからだよ」
「え?」
「一生残るものだから、しおん君がいいの!」
凛子はしおんの顔をまっすぐに見て、そう言った。
「なんで」
「私がアイドルを頑張ろうって思うきっかけをくれたのが、しおん君だから。今の私はしおん君のおかげだから!!」
「お、俺、そんなことしたっけ!?」
それから考えを巡らせるしおん。
俺が助けてもらったことはたくさんあるけど、凛子に何かしたなんて記憶は――
「もうっ! その脳みそは何が詰まってんのよ!! 何で覚えていないわけ? あんな激しい戦いをしたってのに!」
凛子は頬を膨らませて、怒りながらそう言った。
「え? 激しい戦い……うーん」
そしてしおんは記憶を辿った――
* * *
それはしおんたちがまだ『白雪姫症候群』のS級施設に来たばかりだったころに、些細なことがきっかけで能力を使った喧嘩をした時のことだった。
『……やり、たい。私はまた、お芝居をしたい。役者でありたい……でも、私はこのままじゃ、あの世界にいられない……私は消えちゃうの! それは嫌! もう二度と芝居が出来なくなるのは嫌なの!!』
そう言って、涙を流す凛子。
* * *
思い出したしおんは、「うんうん」と思い出に浸りながら頷いた。
「そんなこともあったな……凛子がアイドルのくせに鼻水を垂らし――」
「してないわ! 記憶の捏造でしょ、それ!!」
「ははは! でもその後に俺も凛子に救ってもらえたっつうかさ……お互い様、だろ?」
しおんはそう言ってニッと笑った。
そんなしおんを見て、凛子は首を横に振り、
「私があやめ君のことで悩んでいたしおん君に助言ができたのは、最初にしおん君が私を解放してくれたから。だからお互い様なんかじゃないよ」
ぽつりとそう言った。
「そう、か?」
「そうなの! そう言うわけだし、卒業ソングの件はよろしくね! もちろんちゃんと打ち合わせもするからさ――」
そう言ってスマホの画面を見せる凛子。
「え、何?」
「連絡先を交換してあげるって言っているんだけど?」
ニヤリ笑いながら、凛子はそう言った。
「え!? そ、そんなの、いらねぇよ!!」
しおんは狼狽えながらそう言った。
「はあ? 断る理由がわからないんですけどぉ」
「そうだけど……」
でも、なんだかなあ。ってか、なんで俺も渋ってんだろう――
「それに毎回事務所を通すと、レスポンスが遅くなるので非効率だと思わないの? 夢を叶えるのに時間はいくらあっても足りないんだから、いらない手間は省くに越したことはないでしょ! さあ、さっさとスマホを出しなさい!!」
凛子はそう言ってしおんに右手を突き出した。
「くっそ……何も言い返せねえ……」
それから渋々連絡先を交換するしおんだった。
「――よし!」
嬉しそうにそう言う凛子。
なんでそんなに嬉しそうなんだ? もしかして、凛子も俺みたいに友達いないのかな。可哀そうに――
そう思いながら、しおんは悲しそうに凛子を見つめた。
「ってかさ、真一遅くねえか? いつまでトイレにいんだよ!!」
「まあ、お腹の調子は人それぞれですから」
それからしばらくして真一はレッスンルームに戻って来た。
遅かった理由をしおんが尋ねると、
「星司さんとそこで会ってね」
と答える真一。
どうやらトイレを出たところで『ASTER』のギタリストである星司と鉢合わせて、少し話し込んでいた――ということだった。
「そっか」
苦い顔でそう言うしおん。
そういえば、あの人。俺のことを露骨に嫌っているんだよな。なんでだろう――
「うん。じゃあ打ち合わせの続きをしよう」
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