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アフターストーリー
第2話ー⑤ 約束のブレスレット
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――マリアの部屋にて。
「白銀さんはきっとお仕事が終わってから来るよね。それまでに私はやれることを全部やっておこう」
それからマリアは帰宅するための荷造りを始める。
もともと荷物は少なかったし、これでいいかな――
そう思いながら、自分の荷物の詰まったキャリーケースを見つめるマリア。
「まだ17時、か……お腹もすいたし、カフェでご飯を食べながらゆっくりしよう」
それからマリアは夕食を摂るためにカフェへと向かった。
――夕食後。
部屋に戻って来たマリアがくつろいでいると、入り口の扉を叩く音が響く。
きっと白銀さんだ――!
そう思ったマリアは、急いでその扉を開ける。
「遅くなってすまなかったね」
「いいえ。私もやることがありましたから。……今夜はよろしくお願いします!」
マリアはそう言って笑った。
「こちらこそ」
そしてマリアはゆめかの部屋へと向かった。
「ここだよ」
「ここ、が……」
マリアはそう言いながら部屋に入り、その部屋の全体を見渡した。
しっかりしていそうだなっと思っていたけれど、やっぱり見た目通りの方なんだ――
そう思いながら、よく整頓された部屋をまじまじと見るマリア。
「ちょっと恥ずかしい、かな」
「あ、すみません。感動して」
「あはは! じゃあ、適当に座ってくれればいいから」
「ありがとうございます」
そして部屋の中央にある座椅子に座るマリア。
お泊り会はいいけど、何を話そう……キリヤの事? それともカウンセラーのお仕事のこと――?
そんなことを思いながら、頭をフル回転させるマリア。
「もしかして、話す内容に困っているのかい?」
ニヤニヤしながらそう言うゆめか。
「え……わかりますか?」
「まあね。でも、そんなに硬く考えなくてもいいさ。マリア君らしく、いてくれればそれでいい」
ゆめかはそう言って微笑んだ。
「ありがとうございます」
「うん」
どうして白銀さんはこんなに優しいんだろう。部外者の私にでも優しくしてくれるのだろう。私もカウンセラーになれば、その理由がわかるのかな――
「あの」
「なんだい?」
「白銀さんは、どうしていつもそんなに優しいんですか」
「優しい、かな?」
顎に指を添えながら、ゆめかはそう言って首を傾げる。
「はい。私は研究所の一員ではないですし、カウンセリングに来た子供でもない。それでも優しくしてくれるのは、白銀さんが誰に対しても変わらずに優しい心を持っているからだって思うんです」
「ほう」
「どうしたら、そんな人間になれますか? そして、どうして白銀さんはそんな優しい心を持てたんですか??」
マリアはそう言ってゆめかの顔をまっすぐに見つめた。
「そっか。うん。そろそろいいかもしれないね」
ぼそっとそう呟くゆめか。そしてその言葉にマリアは首を傾げた。
「あの、そろそろって言うのは……?」
「実は、私も昔……『白雪姫症候群』の能力者だったんだ――」
それからゆめかは自分の能力が覚醒した時の事、そしてその後に起こったことをマリアに語った。
「じゃあ、そのお友達は……」
「ああ、紡ちゃんたちはもう二度と目を覚まさなかった。今でも眠り続けている」
「そうなんですね……」
そんな悲しいことがあったから、白銀さんは優しく――
そう思いながら、悲しい顔でゆめかを見つめるマリア。
「でも、この話には続きがあってね」
「続き?」
「そう。私が今もここで当たり前に生きていけるのは、その時に起こった奇跡のような出来事のおかげなんだよ」
ゆめかは嬉しそうに笑ってそう言った。
「聞いても、いいんですか?」
「ああ。むしろここからの話を君に聞いてほしかった」
私に――?
首を傾げながらそう思うマリア。
そしてゆめかは話を続けた。
「逃げ続けた私は、とうとうその大人たちに捕まってね。もうダメだって思った時、もう一つの能力が覚醒したんだよ」
「それは……」
「『時間渡り』と言って、別の時間軸に飛ぶことができる能力だった」
「そうなんですね」
そのことをどうして私に――?
マリアはそう思いながら、ゆめかの話に耳を傾ける。
「ああ。それで私が飛んだ場所。それは20年後の未来」
「未来に……?」
「そう、未来にね。そして私はその時間で、多くの人に助けられた。本当の姉のように慕う人もいたんだ」
ゆめかはそう言いながら、腕についているブレスレットを見つめる。
「それ、いつも着けていますよね。私も同じものを持っていて――」
あれ……これは特注で作ってもらったものだったよね。だから、これは私とシロしか持っていないはずなのに――
そしてマリアはゆめかの顔をゆっくりと見つめる。
すると、ゆめかは優しい笑顔をマリアに向けた。
前から懐かしい感じがあると思っていたけど、それって――
「白銀さんは、そのブレスレットについている石の意味を知っていますか」
「再会、だったかな」
「――大切な人とは再会できましたか?」
「ああ、もちろん」
「そうですか。私も、できましたよ。やっと」
そう言って微笑むマリア。
「そうなんだね」
「白銀さん。私、もっと白銀さんのことを知りたいです。元の時間に戻って来たときからのことを!」
「もちろん!!」
それからマリアとゆめかは遅い時間まで語り続けたのだった。
――翌朝。研究所、入り口前にて。
「白銀さん、長い間お世話になりました」
マリアはそう言いながら頭を下げる。
「こちらこそ、すごく楽しかった。ありがとう」
「いえ、お礼を言うのは私の方です! ありがとうございます」
「そうだ! マリア君は大学を卒業したら、どうするつもりなんだい? 私としては、研究所にスカウトしたいところだけど」
ゆめかはそう言ってニヤニヤと笑いながらマリアを見つめる。
「実はもう決めているんです!」
マリアのその言葉に、目を丸くするゆめか。
「え? いつの間に内定を??」
「内定をもらっているってことじゃなくて、その……気持ち的なことと言いますか」
「そういうことね、あははは!」
ほっとした顔をしながら、ゆめかは笑った。
「だから私、頑張ります。その場所に行けるように。憧れの人の隣に立てるように……」
「……そうか。うん、マリア君なら、きっとどこに行っても大丈夫さ。私が保証する」
ゆめかは満面の笑みでそう言った。
そしてゆめかのその笑みを見て、ほっとするマリア。
「――それでは、そろそろ」
「ああ、頑張って」
「ありがとうございます!」
それからマリアは駅に向かって歩いていった。
また会えたことだけが嬉しかったのではなくて、無意識のうちにひかれあっていたことが嬉しかった。
離ればなれになって、もう二度と会えないと思っていたんだよ。
でも私たちはこのブレスレットで繋がっていたんだね――
「また一緒に居られるように……私、頑張る。だから待っていて、シロ」
そしてマリアは自身の望む未来を掴むために歩みを止めることなく、信じる道を進み続けていったのだった。
「白銀さんはきっとお仕事が終わってから来るよね。それまでに私はやれることを全部やっておこう」
それからマリアは帰宅するための荷造りを始める。
もともと荷物は少なかったし、これでいいかな――
そう思いながら、自分の荷物の詰まったキャリーケースを見つめるマリア。
「まだ17時、か……お腹もすいたし、カフェでご飯を食べながらゆっくりしよう」
それからマリアは夕食を摂るためにカフェへと向かった。
――夕食後。
部屋に戻って来たマリアがくつろいでいると、入り口の扉を叩く音が響く。
きっと白銀さんだ――!
そう思ったマリアは、急いでその扉を開ける。
「遅くなってすまなかったね」
「いいえ。私もやることがありましたから。……今夜はよろしくお願いします!」
マリアはそう言って笑った。
「こちらこそ」
そしてマリアはゆめかの部屋へと向かった。
「ここだよ」
「ここ、が……」
マリアはそう言いながら部屋に入り、その部屋の全体を見渡した。
しっかりしていそうだなっと思っていたけれど、やっぱり見た目通りの方なんだ――
そう思いながら、よく整頓された部屋をまじまじと見るマリア。
「ちょっと恥ずかしい、かな」
「あ、すみません。感動して」
「あはは! じゃあ、適当に座ってくれればいいから」
「ありがとうございます」
そして部屋の中央にある座椅子に座るマリア。
お泊り会はいいけど、何を話そう……キリヤの事? それともカウンセラーのお仕事のこと――?
そんなことを思いながら、頭をフル回転させるマリア。
「もしかして、話す内容に困っているのかい?」
ニヤニヤしながらそう言うゆめか。
「え……わかりますか?」
「まあね。でも、そんなに硬く考えなくてもいいさ。マリア君らしく、いてくれればそれでいい」
ゆめかはそう言って微笑んだ。
「ありがとうございます」
「うん」
どうして白銀さんはこんなに優しいんだろう。部外者の私にでも優しくしてくれるのだろう。私もカウンセラーになれば、その理由がわかるのかな――
「あの」
「なんだい?」
「白銀さんは、どうしていつもそんなに優しいんですか」
「優しい、かな?」
顎に指を添えながら、ゆめかはそう言って首を傾げる。
「はい。私は研究所の一員ではないですし、カウンセリングに来た子供でもない。それでも優しくしてくれるのは、白銀さんが誰に対しても変わらずに優しい心を持っているからだって思うんです」
「ほう」
「どうしたら、そんな人間になれますか? そして、どうして白銀さんはそんな優しい心を持てたんですか??」
マリアはそう言ってゆめかの顔をまっすぐに見つめた。
「そっか。うん。そろそろいいかもしれないね」
ぼそっとそう呟くゆめか。そしてその言葉にマリアは首を傾げた。
「あの、そろそろって言うのは……?」
「実は、私も昔……『白雪姫症候群』の能力者だったんだ――」
それからゆめかは自分の能力が覚醒した時の事、そしてその後に起こったことをマリアに語った。
「じゃあ、そのお友達は……」
「ああ、紡ちゃんたちはもう二度と目を覚まさなかった。今でも眠り続けている」
「そうなんですね……」
そんな悲しいことがあったから、白銀さんは優しく――
そう思いながら、悲しい顔でゆめかを見つめるマリア。
「でも、この話には続きがあってね」
「続き?」
「そう。私が今もここで当たり前に生きていけるのは、その時に起こった奇跡のような出来事のおかげなんだよ」
ゆめかは嬉しそうに笑ってそう言った。
「聞いても、いいんですか?」
「ああ。むしろここからの話を君に聞いてほしかった」
私に――?
首を傾げながらそう思うマリア。
そしてゆめかは話を続けた。
「逃げ続けた私は、とうとうその大人たちに捕まってね。もうダメだって思った時、もう一つの能力が覚醒したんだよ」
「それは……」
「『時間渡り』と言って、別の時間軸に飛ぶことができる能力だった」
「そうなんですね」
そのことをどうして私に――?
マリアはそう思いながら、ゆめかの話に耳を傾ける。
「ああ。それで私が飛んだ場所。それは20年後の未来」
「未来に……?」
「そう、未来にね。そして私はその時間で、多くの人に助けられた。本当の姉のように慕う人もいたんだ」
ゆめかはそう言いながら、腕についているブレスレットを見つめる。
「それ、いつも着けていますよね。私も同じものを持っていて――」
あれ……これは特注で作ってもらったものだったよね。だから、これは私とシロしか持っていないはずなのに――
そしてマリアはゆめかの顔をゆっくりと見つめる。
すると、ゆめかは優しい笑顔をマリアに向けた。
前から懐かしい感じがあると思っていたけど、それって――
「白銀さんは、そのブレスレットについている石の意味を知っていますか」
「再会、だったかな」
「――大切な人とは再会できましたか?」
「ああ、もちろん」
「そうですか。私も、できましたよ。やっと」
そう言って微笑むマリア。
「そうなんだね」
「白銀さん。私、もっと白銀さんのことを知りたいです。元の時間に戻って来たときからのことを!」
「もちろん!!」
それからマリアとゆめかは遅い時間まで語り続けたのだった。
――翌朝。研究所、入り口前にて。
「白銀さん、長い間お世話になりました」
マリアはそう言いながら頭を下げる。
「こちらこそ、すごく楽しかった。ありがとう」
「いえ、お礼を言うのは私の方です! ありがとうございます」
「そうだ! マリア君は大学を卒業したら、どうするつもりなんだい? 私としては、研究所にスカウトしたいところだけど」
ゆめかはそう言ってニヤニヤと笑いながらマリアを見つめる。
「実はもう決めているんです!」
マリアのその言葉に、目を丸くするゆめか。
「え? いつの間に内定を??」
「内定をもらっているってことじゃなくて、その……気持ち的なことと言いますか」
「そういうことね、あははは!」
ほっとした顔をしながら、ゆめかは笑った。
「だから私、頑張ります。その場所に行けるように。憧れの人の隣に立てるように……」
「……そうか。うん、マリア君なら、きっとどこに行っても大丈夫さ。私が保証する」
ゆめかは満面の笑みでそう言った。
そしてゆめかのその笑みを見て、ほっとするマリア。
「――それでは、そろそろ」
「ああ、頑張って」
「ありがとうございます!」
それからマリアは駅に向かって歩いていった。
また会えたことだけが嬉しかったのではなくて、無意識のうちにひかれあっていたことが嬉しかった。
離ればなれになって、もう二度と会えないと思っていたんだよ。
でも私たちはこのブレスレットで繋がっていたんだね――
「また一緒に居られるように……私、頑張る。だから待っていて、シロ」
そしてマリアは自身の望む未来を掴むために歩みを止めることなく、信じる道を進み続けていったのだった。
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